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横領罪とは、人から預かっている物などを自分の物として使用したり、売却したりといった行為を犯す犯罪です。
また、構成要件とは、刑罰法規によって定められている犯罪類型を言います。今回は、横領罪の構成要件と、横領罪で逮捕された場合にどのようになるのかについてご説明します。
1.横領罪の構成要件
横領罪は「単純横領罪」「業務上横領罪」「遺失物等横領罪」の3つに分類され、定義や刑罰が異なります。
(1)単純横領罪
単純横領罪は他人の財物を預かっている人が、その財物を勝手に処分したり、売却したりする行為を言います。
単純横領罪の刑罰は5年以下の懲役です。
(2)業務上横領罪
業務上横領罪は、業務として管理している財物を立場を利用して自分のものにしてしまう行為を言います。
例えば、会社の経理担当者が経理という立場を利用して、会社のお金を自分の口座に移してしまうなどが挙げられます。業務上横領罪の刑罰10年以下の懲役です。
(3)遺失物等横領罪(占有物離脱横領罪)
遺失物等横領罪は占有離脱物横領罪とも言い、持ち主から離れてしまった財物を自分のものにする、いわゆるネコババが該当します。
遺失物等横領罪は1年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金が刑罰となります。
2.窃盗罪や背任罪との違いとは?
人のものを自分のものにしてしまうという行為が横領罪となりますが、窃盗罪や背任罪と何がちがうのでしょうか?
(1)窃盗罪との違い
窃盗罪は刑法第235条では以下のように定義されています。
引用
刑法第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する
窃盗罪と横領罪の大きな違いは、対象となる財物を誰が保管していたかという点になります。
人が管理している財物を盗んだ場合「窃盗罪」となり、自分が管理している人の財物を盗んだ場合は「横領罪」に該当することになるという事です。
(2)背任罪との違い
背任罪は刑法第247条では以下のように定義されています。
引用
刑法第247条(背任)
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害加える目的で、その任務に背く行為をし、本人の財産上の損害を与えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する
背任罪は刑法に定義されているように「任務に背く行為」によって相手に財産上の損害を与えた場合が該当します。
例えば、会社の重要な情報を競合の会社に漏らすことで、会社が大きな損害を受けることになった場合には背任罪が該当することになります。背任罪では、金品類などの実際の財物以外にも得られる可能性があった利益なども財産に含まれることになります。
3.横領罪によって逮捕された場合
横領罪によって逮捕された場合、以下のような流れで判決が確定されます。
上記のように、横領罪で逮捕された場合、23日以内に起訴もしくは釈放の判断を行う必要があります。
そのため、逮捕前に任意の取り調べが行われるケースが多く、事件発生から逮捕までに1ヵ月程度かかることも珍しくありません。また、ご家族が取り調べを受けることもあります。
ちなみに、横領罪の起訴率では業務上横領罪は約40%、単純横領罪は約30%、遺失物等横領罪は約10%となります。
―業務上横領の場合、再逮捕なども考えられる―
横領罪のなかでも特に、業務上横領罪は何度も行っていることが多い犯罪となり、余罪部分については、再逮捕や追起訴となることが多いです。
再逮捕等がある場合、保釈請求が認められないこともあります。
4.横領罪の公訴時効
公訴時効とは、犯罪に対する時効を指し、公訴時効が過ぎた場合には起訴することが出来なくなります。
横領罪の公訴時効は単純横領罪・業務上横領罪・遺失物等横領罪のそれぞれで異なります。
―公訴時効の起算日―
時効の起算日については、刑事訴訟法第253条で以下のように定められています。
引用
刑事訴訟法253条
1.時効は、犯罪行為が終わった時から進行する
2.共犯の場合には、最終の行為が終わった時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する
この条文が定めている犯罪行為とは、構成要件として規定されている事実を言います。
業務上横領罪の場合は、構成要件は「業務として管理している財物を立場を利用して自分のものにしてしまう行為」となるため、自分のものとしてしまった時が起算日となります。
―公訴時効が設定された背景―
悪いことをしたにもかかわらず、一定の期間が経過したら罪を償う必要がなくなるというのは納得いかいないとお考えの方もいらっしゃると思います。
公訴時効が設定されている背景には、長期間に渡る捜査継続の難しさや被害者の気持ちがだんだんと弱まっていくことが挙げられます。ただし、すべての犯罪に公訴時効が設定されているわけではありません。誰かを死亡させてしまい死刑にあたるような犯罪は公訴時効が設定されていません。
まとめ
横領罪は、他人の所有物を保管している人が、自分の財物のように保管している物を売却したり、処分したりする行為を言い、会社内で財物の管理を行う担当者が、その財物を着服するなどした場合には業務上横領罪となります。
横領罪は財物を管理する立場の人と管理してもらう立場の人との信頼関係をも壊してしまう犯罪であり、単純横領罪・業務上横領罪は被害者の心理的負荷からも罰金刑が設けられず、懲役刑のみという重い刑罰となります。
ほんの出来心が相手もご自身も、ご家族をも傷つける結果になりかねません。