不当解雇の慰謝料請求できた裁判上の判例をご紹介

不当解雇
不当解雇

不当解雇をめぐる会社との争いで、交渉しても和解に至ることがなく、訴訟に持ち込まざるを得ないことがあります。そして訴訟に対する判決として、裁判所によって慰謝料請求が認められたケースはこれまでにいくつもあります。それらの概要を知れば、ご自身が行動を起こす際の参考材料にすることができます。

ではどのような理由によって解雇された場合に、解雇が不当であると裁判所は判断したのか。慰謝料についてはどのようなケースのときに認められたのか。これまでにあった判例の中からピックアップしてご紹介します。

1.精神的な苦痛を認めた判例

(1)事案の概要は?

はじめに、整理解雇が無効、違法とされ、賃金・賞与支払請求に加え慰謝料請求も認められた事例です(東京地方裁判所判決 平成18年11月29日 労働判例935-35)。

平成10年12月21日、公法人Yに期間の定めなしの約束で入社したXさんは、同日以降、総務課勤務を命じられました。しかしYは、平成17年4月28日、Xさんに対し「事業の運営上のやむを得ない事情により、健康相談室の廃止を行う必要が生じ、他の職務に転換させることが困難なため」という理由で解雇予告をし、解雇しました。

精神的な苦痛を認めた判例。

(2)裁判所はどう判断した?

裁判所は、「一般に、解雇された従業員が被る精神的苦痛は、解雇期間中の賃金が支払われることにより慰謝されるのが通常であり、これによってもなお償えない特段の精神的苦痛を生じた事実が認められるときにはじめて慰謝料請求が認められると解する」という前提の上で、この事案について次のように捉え、判断しました。

Yは退職金規定の改定や健康相談室の廃止などをしようとしたとき、Xさんが反対し、外部機関に相談するなどしました。それを不愉快に思い、整理解雇する理由がないにもかかわらず、解雇を強行しました。また、Xさんは整理解雇のとき妊娠しており、被告はその事実を知っていたこと。Xさんは解雇を撤回し復帰させるよう要求しましたが、Yは拒否したこと。

解雇期間中の賃金が支払われることでは償えない精神的苦痛が生じたと認めるのが相当であるとして、その慰謝料額は100万円が相当であるとし、Xさんの慰謝料請求を認めました。

2.失った利益と慰謝料を認めた判例

(1)事案の概要は?

次は、不当解雇による不法行為に基づく派遣元会社への損害賠償請求につき、失った利益125万余円(年収1年分相当)と慰謝料15万円が認められた例です(東京地方裁判所判決 平成17年1月25日 労働判例890-42)。

Yは、主に旅行ツアーの添乗員の派遣を業とする株式会社です。平成9年3月24日、XさんはYとの間で、雇用契約である派遣基本契約を締結しました。このほか、個々の派遣業務ごとに雇用契約を締結して海外旅行の添乗業務などに従事していました。平成13年頃からは、Xさんの希望により、主に株式会社A社が企画するパッケージツアーの添乗員として派遣されるようになりました。

しかしYは、添乗員としての適格性が著しく欠けていることを理由に、平成14年10月31日、基本契約を解除してXさんを解雇しました。

XさんはYに対し、均等法21条2項の指針を実施していない、(A社の従業員からのセクハラ行為に関する)セクハラ委員会への申立手続への協力を拒否した、委員会への申立てを理由に添乗業務のアサインにおいて不利益に扱ったことが職場環境配慮義務違反として不法行為を構成する、ならびに不当解雇が不法行為を構成すると主張しました。XさんはYに対し、職場環境配慮義務違反のうち派遣業務の減少による賃金減額分31万6316円、解雇による減収として年収1年分125万1800円、慰謝料100万円の合計256万8116円、および遅延損害金の支払いを求めました。

失った利益と慰謝料を認めた判例。

(2)裁判所はどう判断した?

裁判所はYが指摘するXさんの勤務態度のうち問題があると認められるものは、平成14年8月11日出発のツアーの前日の頃にYに対して行きたくない旨の文書をファクシミリで送信したことと、同年9月11日出発のツアーに関するA社前橋支店の担当社員からのクレームに関する件のみであるとしました。

これらやYに与えた業務上の支障の有無・程度などを考慮すると、解雇は客観的に合理的な理由を欠いていると判断。権利の濫用として解雇は無効かつ違法であると言わざるを得ないとしました。

その上で、損害額などについて、解雇がなかったならば相当期間にわたってYに勤続していた可能性が高いと考えられるとし、平成12年1月から平成14年10月までの原告の平均月収などをもとに、失われた利益はXさんの主張する125万1800円以上であることが認められること。

慰謝料に関しては、Yが解雇の理由として主張してきた内容や、その大半が事実に基づくものとは認められないということ。Xさんが従事した添乗業務の回数・内容、勤続年数などの事情を考慮すると、解雇によってXさんが被った精神的損害の慰謝料としては15万円が相当であるとしました。

損害賠償請求の額は、失った利益と慰謝料を合わせた合計として、140万1800円としました。

まとめ

不当解雇について争った結果どうしても裁判上でしか解決できない場合もあります。

今回は2つの判例を紹介させていただきましたが、他にも多くの方が不当解雇に関する裁判内外問わず慰謝料請求に成功しています。

会社との交渉がうまくいかない場合でも弁護士に相談することで解決できることも多くあるので、もし不当解雇と感じたら弁護士に相談することをオススメします。

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