パワハラ、セクハラでうつ病を労災申請する時の基礎知識

労働災害
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パワハラとは、職場のいじめ・嫌がらせのことで、セクハラとは、「相手の意思に反して、不快感を与えたり不安な状態に追いこむ性的な言動や行為」のことです。

パワハラやセクハラがひどくうつ病やパニック障害などの精神障害を発症してしまったような場合には、労災申請を行い医療費や生活費などを労災に負担してもらうことができます。

また、会社や加害者に対して、慰謝料を請求できる可能性もあります。

 

ここでは、パワハラ、セクハラで労災申請する時の基礎知識と申請手順についてご紹介します。

1. パワハラ・セクハラの精神障害は労災認定できる

パワハラやセクハラの被害に遭っている場合には、加害者や会社に対してパワハラやセクハラをやめるよう求めたり、職場の環境を改善するよう求めることができます。

また、ひどいパワハラやセクハラに苦しみ、うつ病やパニック障害などの精神障害を発症してしまった場合には、労災申請をすることもできます。

パワハラ・セクハラは、職場の地位を利用した許されない行為です。被害を受けた場合には労災を申請できることもできますし、加害者や会社に損害賠償を請求することもできます。労働基準監督署や労働問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。

2.パワハラによる精神障害

労働者災害補償保険法は、仕事中の事故が業務災害に該当する場合には、労働者に対して保険金を給付することを定めています。

パワハラは長期間にわたって行為が続くケースが想定されるので、パワハラの被害に遭ったため、負傷したり精神疾患を発症したりすれば、労災を申請して給付をうけることができる可能性があります。

パワハラの精神障害は、従来はなかなか認められにくい傾向にありましたが、厚生労働省が発表している「心理的負荷による精神障害の認定基準」という指針で類型化され、労災申請が認定されるケースが増えています。

(1)対象となる疾病

パワハラで労災申請する際の対象となる精神障害は、以下のとおり特定されています。

対象疾病のうち、業務に関連して発症する可能性のある精神障害は、F2またはF4が主となります(※心身症は対象疾病ではありません)。

 

F0 症状性を含む器質性精神障害

F1 精神作用物質使用による精神および行動の障害

F2 統合失調症統合失調症型障害および妄想性障害

F3 気分[感情]障害

F4 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害

F5 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群

F6 成人のパーソナリティおよび行動の障害

F7 精神遅滞〔知的障害〕

F8 心理的発達の障害

F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、特定不能の精神障害

(2) 評価の基準

パワハラは、対人関係の一つとして想定されていて、精神疾患と業務との間の因果関係を証明することは難しいとされていましたが、労災申請されるケースは確実に増えてきています。パワハラが問題となった場合には、嫌がらせ、いじめ、暴行の内容、程度、その継続する状況などを総合的に評価していきます。

心理的負荷の総合評価の視点としては、トラブルの内容・程度などやその後の業務への支障等から判断されることになります。

また、パワハラの問題のみで取り上げれば、その心理的負荷の度合いが「強」と判断されない場合であっても、恒常的長時間労働の場合や、他の複数の出来事を全体として評価した場合に、心理的負荷が「強」と修正される場合は、強い心理的負荷と判断されます。

※厚生労働省の「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」からの引用です。

3.セクハラによる精神障害

身体接触を行うなどのセクハラが長期にわたって繰り返された場合や、強姦罪などの刑法犯に該当するようなセクハラ行為がなされたりした場合、複数回にわたってセクハラ行為が続いたような場合には、うつ病などの精神障害を発症するケースは珍しくありません。そしてそのような場合にはそれが労災として認定されることがあります。

(1) 対象となる疾病

対象となる疾病は、パワハラと同様で以下のとおりです。

対象疾病のうち、業務に関連して発症する可能性のある精神障害は、F2またはF4が主となります(※心身症は対象疾病ではありません)。

 

F0 症状性を含む器質性精神障害

F1 精神作用物質使用による精神および行動の障害

F2 統合失調症統合失調症型障害および妄想性障害

F3 気分[感情]障害

F4 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害

F5 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群

F6 成人のパーソナリティおよび行動の障害

F7 精神遅滞〔知的障害〕

F8 心理的発達の障害

F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、特定不能の精神障害

(2) 評価の基準

セクハラの場合にも、パワハラと同様業務による心理的負荷評価表という指針で類型化されています。

セクハラはパワハラと異なり、具体的な項目として列挙されていて、平均的な心理的負荷の強度はⅡと規定されています。

※厚生労働省の「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」からの引用です。

 

ただしセクハラの場合には、上記指針の内容以外に、特別な出来事に該当する場合には、心理的負荷が強いと判断されます。

 

特別な出来事とは:

「強姦や本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクハラを受け入れたという出来事」

 

この「本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為」とは、被害者が抵抗したにもかかわらず強制的にわいせつ行為がなされた安倍はもとより、被害者が抵抗しなかった場合でも、加害者が自分の優越的立場を利用するなどして、物理的・精神手に被害者の意思を抑圧してわいせつ行為がなされた場合も含まれます。

 

また、セクハラの場合には、評価期間の特例があり、6カ月前より遡って評価することができることになっています。

 

セクハラ評価期間の特例:

いじめやセクハラのように、出来事が繰り返されるものについては、発病の6カ月よりも前にそれが開始されている場合でも、発病前の6カ月以内の期間にも継続しているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とすること。

 

また、セクハラの心理的負荷の強度を評価する際には、以下の4点について特に留意すべきとされています。

 

【1】セクハラをうけた被害者は勤務を継続したいとか、セクハラを行った加害者からのセクハラの被害を出来るだけ軽くしたいとの心理などから、やむを得ず加害者に迎合するようなメール等を送ることや、加害者の誘いを受けることがあるが、これらの事実がセクハラを受けたことを単純に否定する理由にはならない。

 

【2】被害者は、被害を受けてからすぐに相談行動をとらないことがあるが、だからと言って心理的負荷が弱いと単純に判断する理由にはならない。

 

【3】被害者は、医療機関でもセクハラを受けたということをすぐに話せないこともあるが、初診時にセクハラの事実を申立てていないということは、心理的負荷が弱いと単純に判断する理由にはならない。

 

【4】セクハラの加害者が上司で被害者が部下である場合や、加害者が正規職員であり被害者が非正規労働者である場合など、加害者が雇用関係上被害者に対して優越的な立場にあるという事実は、心理的負荷を強める要素になり得る。

 

 

 

以上、パワハラ・セクハラの精神障害について、労災認定されるための基礎知識についてご紹介しました。

パワハラ・セクハラ被害に遭った場合には、労災の申請だけではなく、パワハラやセクハラをやめさせ職場環境を整えるよう求めることもできますし、会社や加害者に対して損害賠償を請求することもできます。

労災問題に詳しい弁護士に相談すれば、裁判や交渉を有利に進めるための対策や証拠についてアドバイスを受けることができますので、まずは相談することをおすすめします。

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