労働災害
労働災害とは業務中・通勤中など業務に従事することによって起こった傷病を言います。業務中に(または業務と因果関係があり)起こったケガ、病気、死亡等は業務災害、通勤中に起こった場合には通勤災害、第三者による不法行為によって起こった場合には第三者行為災害と呼ばれます。近年では、過労死も労働災害と認められるケースがあります。
2017.10.06

労災隠しが発覚した場合の罰則とメリット制の取り扱い

労災の証明に会社が協力してくれない場合や「とりあえず健康保険を使って治療しておいてくれ」などと言ったり、虚偽の内容を記載したりして労災を隠そうとする会社があります。

しかし労災隠しは違法ですし、労災隠しが発覚すると、50万円以下の罰金が課せられる場合がありますし、保険料の増額等の手続きが取られることになります。

1.労災とは

労災保険が対象とする災害には、仕事中の病気、ケガ、障害、死亡(業務災害)と通勤途中の病気、ケガ、障害、死亡(通勤災害)があります。

労災について安全衛生法では「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、または作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、または死亡することをいう」と規定しています。

現場で事故などが発生したことでケガをしたり、土砂災害などで死亡するのも労災(自然労働災害)です。また、石綿などを吸い込んで中皮腫になるのも労災です。

なお、脳血管疾患や虚血性心疾患(過労死)も、一定の要件を満たせば労災になります。また、うつ病やパニック障害などの精神疾患やそれに伴う自殺なども、仕事が主な原因と認められる場合には、労災に該当する場合があります。

2. 労災隠しとは

労災隠しとは、労働事故が発生した場合に労働者死傷病報告を遅滞なく所轄労働基準監督署に提出しなかった場合や、虚偽の内容を記載して提出した場合のことを指します。

労災事故については労災保険による治療を受けるべきですが、労災隠しをするケースでは、会社が現金、健康保険、国民健康保険などによる治療を受けて労災隠しをするケースが多いようです。

労働基準法75条第1項では「労働者が業務上負傷し、または疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、または必要な療養の費用を負担しなければならない」と規定しています。

ですから、現金、健康保険、国民健康保険で治療を受けたと言っても、「治療を受けた」のあれば、特に問題はないだろうと考える人がいます。

しかし、労災事故の治療には、1日100万円以上の治療費が必要になる場合もあります。

身体障害が伴う場合、その程度によっては相当額の年金となることもありますから、一企業が負担する額としては高額になるケースもあります。

そしてそのため、結果として労働者が十分な治療を受けられないことにもなりかねません。

 

このような事態になるのを防ぐために、労働者が労災保険によって必要最低限度の治療をを受けることが出来るよう、国が費用を支払う制度としているのです。

 

会社から「とりあえず健康保険で治療しておいて」などと言われ、安易に従ってしまうと、思わぬトラブルに発展することがありますので、注意しましょう。

(1) メリット制とは

メリット制とは、労働災害の発生状況によって、保険料を割り増したり割り引く制度です。保険料の増減は、プラスマイナス40%の範囲で行われ、保険給付等に関する収支率を計算し、その結果としての収支率が85%を超えると保険料を増額し、75%以下だと保険料が減額されることになります。

この際の収支率は増減のない保険料に対して、労災保険給付した額がどの程度かを表す率を指します。この収支率の判断は、労働基準監督署で行います。

(2) 労災隠しの罰則

労災隠しが発覚した場合には、罰則を課せられます。

安全衛生法120条第5号では、労働者死傷病報告をせず、もしくは虚偽の報告をしたり出頭しなかった者に対しては、50万円以下の罰金に処する旨規定されています。

労働基準監督署では、労災隠しが発覚すると、安全衛生法違反容疑で送検し、ほとんどの場合に罰金刑となります。

(3) 労災隠しのメリット制

労災隠しが発覚した場合には、メリット制に関する計算をさかのぼって再計算し、保険料の増額等の手続きが取られることになります。

労災保険による治療を受けていないと、メリット制の元となる労災保険給付額が異なることになりますので、その際には、収支率を再計算し、保険料が修正されることになります。

(4) 労災隠しのデメリット

会社から労災隠しに協力してくれと要請されても、絶対に安易に応じてはいけません。

労災保険による治療を受けられないと、医療機関が十分な治療をしてくれないケースもあります。

健康保険法や国民健康保険では、労災保険による給付が受けられない場合には、給付しない旨が規定されています。

ですから、もしその場で健康保険法や国民健康保険による治療を受けても、病院側からすれば、療養費を請求しても支払ってもらえない可能性があるわけです。

そして病院側が「これは仕事上のケガだ」と判断した場合には、治療費を回収出来ない危険性を回避しようとして、おざなりの治療しかしてもらえない場合があるのです。

これに対して労災保険で治療を受けることが出来れば、治療費を払うのは国となるわけですから、医療機関は安心して治療を続けることが出来ることになります。

結果として、労働者は十分な治療を受けることが出来ることになるのです。

以上のような理由から、もし会社から労災隠しに協力するよう要請されても安易に応じるべきではありませんし、もし会社から執拗に要請された場合には、早めに労災問題に詳しい弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。

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