これがパワハラ|裁判となったパワハラ事例

パワハラ
パワハラ

 

 

パワハラに関する労働者からの相談は年々増加傾向にあり、都道府県労働局帳による助言・指導の数も「いじめ・嫌がらせ」の案件を占める割合が大変多いのが実情です。

平成24年に厚生労働省が20歳から64歳までの男女を対象に行った調査では、「これまでの3年間にパワハラを受けた経験がある」と回答した人は、全体の25.3%となっていて、実に4人に1人がパワハラの被害を受けたことが分かります。

しかしパワハラは個人の尊厳や人格を傷つける行為であり、決して許されない行為です。

パワハラをした加害者は不法行為責任を負いますが、それだけでなく会社も損害賠償責任を負うことがあります。

ここでは、裁判となったパワハラ事例に沿って、パワハラの類型について、ご紹介します。

1.パワハラ(パワー・ハラスメント)とは

ハラスメントとは、職場のいじめ・嫌がらせのことです。

平成24年厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」では、職場のパワハラについて、以下のように定義しています。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(※)を背景に、正しい業務の範囲を超え、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

※上記の「職場内の優位性」とは上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

そして、パワハラを以下の6つの類型に区別しています。

※ただし、以下の類型に当てはまらないパワハラ行為も、もちろんあります。実際にパワハラかどうかの判断は、ケース・バイ・ケースで判断されます。

 

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害をふるう)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・暴言等などを行う)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離したり、仲間はずれをしたり無視すること)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制したり仕事の妨害をする行為)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じるたり、仕事を与えなかったりする行為)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入った質問などをする)

 

2. 裁判になったパワハラ

パワハラの相談件数は年々増加傾向にあり、平成26年には相談件数のうち、実に6割が「いじめ・嫌がらせに関する相談」でした。

そしてパワハラを原因とする精神障害の労災補償も年々増えていますし、なかには行政訴訟まで発展するケースもあります。

 

ここでは過去の裁判例から、パワハラ行為の事例についてご紹介します。

(1) 暴行行為

JR西日本吹田向上事件(大阪高判平成15年3月27日)では、加害者から腕をつかまれ擦過傷を負わされたという比較的軽微な損害に対しても、慰謝料5万円および治療費2465円が認められています。

 

そもそも暴行行為は不法行為であり、民事上も「このような暴行であれば、パワハラに当たらない」などの例外は、安易に認められることはありません。なお、直接の暴力ではなくても、懲罰として長時間廊下に立たせるなどの行為は、パワハラに該当する場合があります。

(2) 脅迫、名誉棄損など

名古屋南労基署(中部電力事件・名古屋高裁 平成19年10月31日)では、加害者が「主任失格」「お前なんていてもいなくても、同じだ」などの暴言を伴い感情的に叱責し、被害者がうつ病を発症し自殺した事例について、労災認定がされなかった事案について、加害者の言動とうつ病発症との間には相当因果関係があると認め、遺族補償年金と葬祭料の支給を認めました。

(3) 新入社員に対する業務指導

暁産業ほか事件(福井地裁 平成26年11月28日、名古屋高裁金沢支部 平成27年9月16日)は、加害者の暴言を受けて被害者が自殺してしまった事例です。

 

加害者は「いつまで新入り気分」「わがまま」「毎日同じことを言う身にもなれ」「耳が遠いんじゃないか」「嘘をつくような奴に点検を任せられるわけがない」「人の話も聞かずに行動する。動くのがのろい」「相手するだけ時間の無駄」「何で自分が起こられているか分かっていない」「嘘をついたのに悪気がない」「会社を辞めたほうがみんなのためになるんじゃないのか」「死んでしまえばいい」などの発言をしましたが、これらの発言は叱責の粋を超えて、被害者の人格を否定し、威迫するものだと厳しく指摘しました。

(4) 退職勧奨

エール・フランス事件(東京高裁 平成8年3月27日)では、上司から「会社を辞めろ」などの暴言や暴力行為を受けたり、不要な業務しか与えられなかった事案で仕事の差別を受けたとして損害賠償を請求した事例です。この事例では前提として、被害者が退職勧奨の対象となったのに応じなかったという事情がありました。

判決では、被害者に命じた業務内容が不当な差別であるとして違法性を指摘されました。

 

3. パワハラ加害者の責任

パワハラ行為をした当事者は不法行為責任に問われ、損害賠償請求される可能性があります。また加害者だけでなく、会社も損害賠償請求をされることがあります。

 

なおこの際の損害については逸失利益(例えば、会社を辞めなければもらえたであろう賃料」なども含む場合がありますので、損害賠償額が高額になる可能性があります。

 

なお暴力行為があった場合には、暴行罪・傷害罪などの刑事責任を負う可能性もあります。

4. パワハラ被害に遭ったら

パワハラ被害に遭ったら、弁護士に相談するのが一番です。

会社の相談窓口が設置されている場合もありますが、パワハラ行為を行うような会社はブラック企業であることが多く、相談したことで逆に相談者が不利益を受けてしまうこともあります。

 

弁護士に相談すれば、被害者のいちばんの味方となって会社と交渉してくれますし、労働審判、調停、裁判手続きなどを利用して、損害賠償請求をすることもできます。

 

「パワハラに当たるのか」「証拠はどのように集めればいいのか」「どのような手段で何を請求したらいいのか分からない」という場合でも、弁護士に相談すれば、今後も見通しも含めた総合的なアドバイスを受けることができます。

タイトルとURLをコピーしました