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パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場内で優位に立つ者が、職場での力関係を利用して、相手の人格や尊厳を傷つける言動を繰り返し行い、精神的な苦痛を与えることをいいます。
パワハラの被害に遭った人は、労災保険を請求したり、加害者と会社に損害賠償を請求できる場合があります。
1.パワハラ(パワー・ハラスメント)とは
パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場内で優位に立つ者が、職場での力関係を利用して相手の人格や尊厳を傷つける言動を繰り返し行い、精神的な苦痛を与えて、労働環境を悪化させたり雇用不安を与えたりすること」とされています。
(1)パワハラの6つの行為類型
パワハラについては、法律上定義されたものはありませんが、平成24年に厚労省が主催している「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」では、パワハラの行為類型を6つに分類しています。しかし以下の事例に当てはまらないような場合でも、パワハラと判断される可能性はあります。
- 暴行・傷害
- 脅迫・名誉棄損・侮辱・暴言
- 隔離・仲間外し、無視
- 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
- 業務上の合理性がないのに、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えないこと
- 私的なことに過度に立ち入ること
(2)パワハラの判断基準
どのような行為や言動がパワハラに当たるかについては、行政が明確に示した基準があるわけではなく、ケースバイケースで判断されることになりますが、何度も繰り返されたり、被害者のダメージが大きいと、パワハラと判断される可能性が高くなります。
2.パワハラ被害に遭ったら
ブラック企業などでは、労働者を会社から追い出すための手段として、わざとパワハラ行為を行うケースもあります。
パワハラに我慢していても、職場環境が悪化するだけで何の解決にもなりません。泣き寝入りすることなく、法的手段を通じて、状況の改善を求めたり、損害賠償の請求を検討しましょう。
(1)労災保険の請求
パワハラの被害に遭った場合には、PTSDやうつ病、外傷性神経症などを発症してしまった場合には、労災申請を行って、医療費や生活費を労災に負担してもらうこともできます。
(2)損害賠償の請求
パワハラの被害に遭った場合には、加害者や会社に対して損害賠償請求をすることができます。賠償額は50万円~300万円の範囲内であるケースがほとんどですが、PTSDに苦しみ長期にわたって就労できなくなってしまった場合には、高額の賠償額が認められることもあります。
①慰謝料150万円が認められた事例
ある事業部に勤務している女性について、以下の行為がモラハラであるとして、解雇を無効とするとともに、150万円の賠償を認めました。
【1】上司と男女の関係にあるという噂を流されて、事態を改善するよう求めたにも関わらず、会社側が特段の措置をとらなかった。
【2】過度の勤務状況に対する改善を申し出たのに、改善措置をとらなかった。
【3】2か月具体的な仕事を与えず、不合理な座席の移動を命じた。
【4】再就職のあっせんの希望を効かずに、他の社員より先に解雇した。
②慰謝料400万円、弁護士費用50万円が認められた事例
医科大学の助教授に対して、「お荷物的存在がいる」などの発言をした主任教授と医科大学に対して、連帯して慰謝料400万円、弁護士費用50万円の支払いを命じました。
【1】医科大学主任教授が助教授に対して、職員会議の席で、助教授のことだと分かる文書で「定年までいる必要はないから、自覚のある者は、身の振り方を考えるべき」と発言した。
【2】主任教授は、「スタッフのなかにお荷物的存在の者がいるので、死に身体で教室に残り生き恥をさらすな」という書面を配布し、同様のスピーチを行った。
(3)弁護士に相談するメリット
パワハラの被害を主張するときにもっとも重要なのが証拠です。
録画や録音があれば有力な証拠になりますが、パワハラはいつ行われるのか予想できないことも多いので、録画や録音の準備をすることができない場合もあるでしょう。
その場合には同僚の証言や、メモ書き、日記などが証拠として認められる場合もありますし、PTSDやうつ病、外傷性神経症などを発症してしまった場合には、そのクリニックの診断書が証拠になる場合もあります。
早めに弁護士に相談すれば、状況に応じて「何が有力な証拠になるのか」「どのような証拠なら、無理なく集めることができるか」などについてアドバイスをもらえることができますし、加害者と会社に交渉して審判や訴訟といった手続きをとらずに、早期に状況を改善できる可能性もあります。
パワハラ行為は、決して許されるべきではありません。泣き寝入りをすることなく勇気を出して声をあげ、パワハラの加害者を撃退しましょう。そして一刻も早くパワハラの悩みを解決しましょう。