目次
近年、労働問題の中でしばしばあげられる「ハラスメント問題」、精神的にも身体的にも苦痛を受ける「パワハラ」を受けた際、どのような対応をするべきか、また弁護士に相談することでどのようなメリットがあるのでしょうか?
1.弁護士に相談するメリット
(1) パワハラについて会社との交渉を代理でしてもらえる
自分でパワハラの被害を上司や会社に訴えても真剣に取り合ってもらえないというケースは実際に多く見受けられます。
弁護士を通して交渉を行うことで会社も事態を深刻に受け止め、協議が進められるということが期待できます。
またハラスメント差し止め請求書を作成しパワハラの中止を求めることも可能になります。
(2)裁判所に訴えることが出来る
パワハラを受けたことにより精神的苦痛や身体的苦痛を被った場合には、裁判所に訴えることが出来ます。
① 民事訴訟を行う場合
パワハラにより多大な精神的苦痛を被った場合には、パワハラを行ったものに対して損害賠償(民法709条)や慰謝料(民法710条)を請求することが出来ます。
また会社に対しても「使用者責任」を問い損害賠償を請求することが出来ます(民法715条)。
被害を訴えても会社がパワハラの状態を改善する努力を怠っていた場合には、安全配慮義務違反による債務不履行責任を追及することも可能です(民法415条)
② 刑事訴訟を行う場合
身体的接触を伴うパワハラ(殴られる、蹴られるなど)の場合には、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)として刑事事件として訴えることが出来ます。
身体接触を伴わないパワハラの場合でもPTSD(心的外傷後ストレス障害)になった場合などには刑事事件で訴えを認められるケースも存在します。
2.裁判を行う時に必要な証拠集め
裁判の際に相手方がパワハラの事実を認めなかった場合、客観的な証拠が存在しないと裁判で勝てない可能性が高くなってしまいます。ここでは裁判で認められる客観的な証拠の例を紹介します。
(1)メモの作成・録音
詳細な日時や内容を書いたメモや被害状況の録音データは大変有力な証拠となります。
(2)パワハラに該当すると思われる威圧的な内容を保存
相手側から発信されたパワハラまがいのメールも証拠として残しておきましょう
(3)病院の診断書
直接的な暴力によるケガなどの診断書はもちろん、精神的苦痛により罹患した精神疾患の診断書も裁判で提出できます
3.弁護士に相談し訴える時の費用の目安
パワハラでの訴訟の賠償金の支払い相場は50万円~100万円とあまり高くないため、弁護士に払わなければならない費用を勘案して訴訟を考えましょう。
ここでは弁護士に支払う費用の目安を紹介します。
(1)相談料
相談料は依頼内容を弁護士に相談することで発生する費用です。相談料は30分あたり1万円前後が相場となっています。
(2)着手金
着手金は弁護士に問題解決を依頼する時に発生する費用です。
これは定額で行う事務所や無料の事務所など様々なので、正式に依頼する前にいくらになるか確認することをオススメします。
(3)成功報酬
成功報酬は勝訴した場合や、問題が解決した場合に弁護士に支払う費用です。
この費用は「獲得した慰謝料に対し何%」と決められている事が多いです。
(4)その他費用
弁護士の日当や裁判所への交通費などさまざまな雑費です。
4.訴えるデメリット
(1)赤字覚悟の裁判
前述のとおりパワハラで訴えても受け取れる賠償金は少額であり、弁護士費用の方が高くなり、その差額を自分で支払わなければならない可能性があります。
(2)会社への居づらさ
パワハラを訴える場合、その会社のイメージダウンなど会社にもダメージを与えてしまいます。会社に残れたとしてもあまり居心地の良いものとならない可能性があります。転職先の候補なども裁判と同時並行で探ししておくことをオススメします。
5.まとめ
パワハラは許せない事ではありますが、訴訟を起こしても赤字のケースが多くあります。訴訟を起こす際には信念をもって臨むべきだと思われます。
訴訟を起こさずに弁護士を介してパワハラの中止を求めることも可能ですので、自分一人で抱え込まずに弁護士にまずは相談し、その後の方針を決めることを検討してみてください。