内定取り消しをされた時にするべきこと

内定取り消しをされた時にするべきこと 不当解雇
不当解雇

希望する企業から内定が出たと喜んでいたら突然の内定取り消し。就活も辞めてしまっていて他の企業に就職するあてもない。そんなときの対処法をご紹介します。

1.内定とは

そもそも内定とはどういうものなのでしょうか。

多くの人が内定はまだ口約束と同程度のもので、雇用契約は締結されていないと思いがちです。しかし、企業が内定を出した時点で雇用契約は成立したものとみなされます。

法的には求職者が企業に採用の応募をすることが雇用契約の「申し込み」にあたり、企業が内定を出すことでその「申し込み」を「承諾」したことになり、雇用契約が成立したことになります。つまり内定とは雇用契約の締結と考えることが出来ます。

内定の説明イラスト

*ただし内々定については雇用契約と認められることは難しくなります

2.内定取り消しの問題点

雇用契約の締結と言える内定を一方的に取り消すことは法的に「雇用契約の解約」つまり「解雇」に等しいと言えます。「解雇」が不当である場合解雇された側は不当解雇の補償を求めることが出来ます。そこで内定取り消しが違法とされた場合と適法とされた場合の判例を見て理由を説明します。

3.内定取り消しのモデル裁判例

まずは内定取り消しが違法となったものを紹介します

(1)新卒採用の内定取り消しの例:大手総合印刷会社のケース

【事件のあらまし】

在籍大学の推薦を経て総合印刷業の会社の筆記試験、適性検査を受けて文書で採用内定の通知を受け取った原告は、その推薦が求める「二社制限、先決優先主義」に則って他社への応募を辞退した。しかし入社予定の2ヶ月前に理由も知らされず採用取り消しの通知が送られてきた。取消の時期も遅かったため原告は他の企業への就職も出来なかった。このことを受け原告が内定取り消しが合理的理由を欠いているため無効だとして訴えた。

事例判決 内定取り消し無効

このケースでは、解約権を保留した就労始期付労働契約の成立を認めた上で、内定取り消しは解約権の濫用に当たるという判決がでました。

(2)中途採用の内定取り消しの例:大手コンピューター会社のケース

【事件のあらまし】

ヘッドハンティングによりマネージャー職にスカウトされた労働者に対して経営悪化を理由に内定取り消しをされたことに対して不当だと訴えた。

事例判決 内定取り消し無効2

このケースでは、ヘッドハンティングによってスカウトされた原告が内定取り消しを伝えられた時期が入社予定の2週間前であり、すでに前職を退職しており、戻ることが難しいという

厳しい状況でした。そのため、内定取り消しは客観的に見ても合理的とは言えず、社会通念上、認めることは出来ないという判断より採用内定取り消しは無効となりました。

(3)内定取り消しが適法になった事例:某大手通信会社のケース

【事件のあらまし】

内定が決まっていたAが、公安条例違反によって現行犯逮捕、起訴処分を受けた。これを受けて、会社は採用内定取り消しを行い、内定取り消しの効力について裁判が行われた。

 事例判決 内定取り消し

このケースでは、Aが逮捕・起訴された事件はそれほど重大な事件ではありませんでしたが、大手通信会社は社会的に公共性高い事業であり、Aの内定取り消しは社員としての適正という部分で判断されたという部分が納得できる内容であったと言えます。

4.内定取り消しが可能な要件

上記判例から、どのような場合に内定の取消が可能になってしまうのかを考えていきましょう。

客観的かつ合理的と認められる正当な事由

内定取消が可能となる要件

以上のような理由がない限り基本的には内定の取消は不当であると考えられます。

5.内定を取り消されたときにとれる3つの手段

突然の内定取り消しに途方にくれてしまうかもしれません。そんなときに取るべき行動を紹介します。

(1)内定取り消しを受けた企業に入りたい場合

入社直前の内定取り消しで、他の企業への就職のあてがない場合、「従業員の地位」を求めて、訴えることが出来ます。この訴訟で訴えが認められればその企業で働ける可能性が出てきます。

(2)再就職までの補償が欲しい場合

一度内定を取り消された会社で訴訟を起こしてまで働くのは肩身が狭いという方が多いと思われます。その場合損害賠償の請求を視野に入れてみましょう。

① 内定取り消しの場合

企業から「内定」を受けていてそれが取り消しになった場合、基本的に損害賠償の請求は認められます。

内定取り消しも場合は基本的に損害賠償請求が認められる

② 内々定取り消しの場合

企業から「内々定」の取り消しを受けた場合でも入社できるという期待の侵害を受けたという理由や他の会社に就職する機会を失ったという理由で損害賠償の請求が認められる場合があります。

内定取り消しの場合は場合によっては損害賠償請求が認められることもある

(3)未払い賃金を求めたい場合

採用内定の取り消しが解雇権の濫用として無効になると、民法536条2項により採用内定者は入社日づけで被雇用者としての地位を有するので、雇用者に対して入社日以降の未払い賃金の請求が可能となります。

6.厚生労働省による内定への取り組み

厚生労働省では、「新卒者」に対して様々な保護政策を実施しています。

内定を取り消された新卒者に対して

新卒者に対してハローワークが行っているサポート内容

採用者側に対して

採用者側に対しても厚生労働省は以下のことを求めています。

明確な募集・適切な採用計画

内定取り消しについて

募集人数の表示に「若干名」や「〇〇人以内」等、応募者に人数がはっきりと伝わらないような表現を使った表示や、予定している採用人数を超えた募集をかけるなどの行為は

避けるようにしましょう。

また、内定取り消しに関しては、原則として「採用内定を取り消さないものとする」とされています。

「新規学校卒業者の採用内定取り消しへの対応について」では以下のように記載されています。

事業主は、採用内定を取り消さないものとする

事業主は、採用内定取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講ずるものとする。なお、採用内定の時点で労働契約が成立したと見られる場合には、採用内定取消しは労働契約の解除に相当し、解雇の場合と同様、合理的理由がない場合には取消しが無効とされることについて、事業主は十分に留意するものとする。

事業主は、やむを得ない事情により、どうしても採用内定取消し又は入職時期繰下げを検討しなければならない場合には、あらかじめ公共職業安定所に通知するとともに、公共職業安定所の指導を尊重するものとする。この場合、解雇予告について定めた労働基準法第20条及び休業手当について定めた同法第26条等関係法令に抵触することの無いよう十分留意するものとする。なお、事業主は、採用内定取消しの対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努

力を行うとともに、採用内定取消し又は入職時期繰下げを受けた学生・生徒からの補償等の要求には誠意を持って対応するものとする。(引用:厚生労働省 新規学校卒業者の採用内定取り消しへの対応について)

上記の内容では、「採用内定の時点で労働契約が成立したと見られる場合には、採用内定の取り消しは無効となる」とあり、どうしても採用内定を取り消さざるを得ない状況である場合には、

「公共職業安定所(ハローワーク)への通知を行ない、公共職業安定所(ハローワーク)の指導を尊重する」必要があります。

企業側は募集を行う際に、上記のことをしっかりと留意する必要があります。

まとめ

突然の内定取り消しに途方に暮れている新卒者の方もいると思いますが、一人で悩んでもなかなか解決策が浮かばないと思います。諦める事なく厚生労働省からの支援でハローワークでアドバイスを受けたり、弁護士などの専門家に相談することによって内定取り消し後の賢い行動を探っていきましょう。

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