残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2020.10.10

    未払い賃金の請求期間の時効が2020年4月から5年に延長

    未払い賃金の支払いを企業に求める請求期間はこれまで2年と労働基準法によって定められていました。

    しかし2020年4月から労働基準法が改正され、請求期間の時効が2年から5年に延長されたことはご存じでしょうか?

    新型コロナウイルスの影響がまさに拡大してきた時期ということもあり、あまり目立たない形となってしまっていましたが、今回は未払い賃金の請求期間の時効が2年から5年になることで労働者や企業が気をつけておきたいことについてご説明します。

    1.2020年4月から未払い賃金の時効は5年に

    未払い賃金の請求権は民法と労働基準法の2つがあり、これまでは「民法」が1年、「労基法」が2年とされていました。

    「民法」と「労基法」の時効に違いがあるのには次の理由があります。

    未払い賃金の請求を行うには証拠集めなどの準備も必要ですし、会社との交渉が長びくケースがあるにもかかわらず請求期間が1年しかない「民法」は交渉を終えることが出来る前に請求期間が終わってしまう可能性が高く、厚生労働省は「労働者の生活の糧となる賃金債権の消滅時効が1年だと保護に欠ける。ただ10年では賃金記録の保存などの企業の負担が重すぎる」として、「労基法」において未払い賃金の請求期間を2年間とすることで労働者がきちんと準備をして請求することが出来るように労働者を保護することとしていたのです。

    ですが、今回民法改正をすることが決まり、それに伴って改正民法では原則的に「未払い賃金を含めたすべての債権の時効が5年」に統一されることとなりました。

    ここで問題となったのが労働者を保護する目的で設けられた「労基法」の未払い賃金の請求時間2年間が「民法」よりも低くなってしまったということです。

    これでは民法改正により労基法が労働者の足かせになってしまう可能性があり、それを防ぐために民法改正に伴い労基法も改正し、未払い賃金の請求期間を民法と同じ5年とすることになりました

    2.実際に施行された未払い賃金の消滅時効期間

    (1)2020年4月に施行された内容

    実際に施行された賃金請求権に関わる消滅時効期間が延長された項目は以下の通りです。

    ①賃金請求権の消滅時効期間の延長

    賃金請求権の消滅時効期間を5年に延長しつつ、当分の間はその期間が3年

    なお、退職金請求権はなどは元から5年であったため消滅時効期間などに変更はありません。

    ②賃金台帳などの記録の保存期間の延長

    賃金台帳などの記録の保存期間を5年に延長しつつ、当分の間はその期間が3年

    ③付加金の請求期間の延長

    付加金を請求できる期間を5年に延長しつつ、当分の間はその期間が3年

    -付加金の対象となるもの-

    解雇予告手当(労基法20条1項) 休業手当(労基法26条)割増賃金(労基法37条)年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)

    (2)不払い賃金の請求期間の時効は当面の間は3年

    ここで多くの方が疑問に感じるであろうことが「当面の間は3年間」という文言だと思います。

    この「当面の間は3年間」という処置は、いきなり5年にしてしまうと企業にとって負担が大きくなってしまうことが考えられるため、経過措置として3年だけ延長し、その後5年にするというクッション的な役割を担っています。

    ただ、「当面の間」と部分について、現状で「いつまで」と断言することは出来ません。ですが改正法施行後5年経過時点で施行の状況を見極め柄経過措置が見直される旨が明記されているので、そのころに再び何らかの動きがると考えられています。

    (3)3年の時効を適用できる時期に注意

    今回改正された未払い賃金の請求期間の時効において注意したいのは、3年の時効の適用対象は「2020年4月1日以降に発生する賃金債権」に限られるということです。

    つまり改正労働基準法が施行された2020年4月1日以降であっても、「それ以前に発生した賃金債権」には3年の時効期間は適用されず、従来通り「2年」の時効が適用されます。

    具体的な例を挙げて整理してみましょう。

    例1)2020年3月25日、それまでに発生した5万円分の残業代が未払いになった場合、この未払い分を請求できるのは「2022年3月25日まで」

    例2)2020年5月25日、4月分の5万円の残業代が未払いになったとします。この未払い分を請求できるのは「2023年4月25日まで」

    「法改正により、時効が3年に延びた」と思って2020年4月以前の残業代請求を後回しにしていると、時効によって残業代を払ってもらえなくなるおそれがあるので、早めに手続きを済ませるようにした方が安全です。

    3.未払い賃金の時効が5年になるメリット

    未払い賃金の請求期間が改正されることによる最大のメリットは過去5年間に遡って残業代を請求できるようになるということでしょう。

    労働者側は単純計算で2.5倍程度の多額の残業代を請求できるようになります。

    また、これまでだと退職してから2年間があっという間に過ぎてしまい、未払い賃金を請求することが出来なかった人も、5年になれば弁護士のところへ相談に行き、過去に遡って残業代請求に及ぶことも充分可能となるので、未払い賃金を取り返す目途が立ちやすくなると考えられます。

    4.未払い賃金の時効が5年に変更されることにより想定される企業の反応

    法改正後、現状で不払いにしている残業代があれば、すべて清算しようとする企業が現れることが予想されます。

    法改正後に多くの労働者から過去に遡って残業代請求を受けてしまうと企業経営が圧迫されるリスクが高まるため、企業としては可能な限り避けたい事態です。これはつまり法改正前に企業側からこれまでの残業代の精算を提示される可能性があるということです。

    また、そもそも未払い賃金を発生させないように企業がより努力をすることでしょう。

    労働者にとっては、これまでずさんな管理をされていた残業代がきちんと管理されるようになって支払いを受けられるようになる可能性があるので要チェックポイントです。

    まとめ

    2020年4月から労働基準法が改正され、未払い賃金の請求期間が5年に変更されましたが、当面の間は3年間として法施行後の様子を注視する構えです。

    さらに請求期間3年が適用されるのは法が施行された2020年から3年がたった2023年以降のため、しばらくの間は以前の時効期間である2年に従って行動するようにしてください。

    未払い賃金の請求に関わる手続きが複雑で自分で対応が難しい場合には1人で悩まず、弁護士に相談してみてください。

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