残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2020.10.24

    未払い賃金の起算日は法改正によってどう変わったのか

    未払い賃金の請求期間が2020年4月から法改正され請求権の消滅時間が2年から5年に改訂され、民法と労働基準法によって請求権の消滅時間が異なっていたのが5年に統一される形となりました。

    しかしここで気になるのが未払い賃金の請求期間が定まる起算日の設定の仕方です。

    今回は2020年4月以降の「起算日」について解説していきます。

    1.起算日とは

    起算日の同義語は、期間計算の「初日」です。これに対して、期間計算の最後の日を「満了日」と言います。

    例えば2020年7月1日を初日として7日間の期間を計算する場合、上の図の通り、同年7月1日が起算日となり、同年7月7日が満了日となるということです。

    ただ、ここで用法の問題となりますが、1つだけ注意して頂きたいポイントがあります。

    起算日を求める際は一般に「給料日から」と明記される場合と「給料日から起算して」と明記される場合によって違いがあります。

    「給料日から」という場合は給料日は含めず翌日から起算し、「給料日から起算して」という場合は給料日を含めて起算することになるので起算日を調べる際は給料日を含めるのか、含めないのか確認してみてください。

    2.法改定された未払い賃金請求期間

    2020年4月から未払い賃金の請求期間が民法改正に伴い、労働基準法の賃金請求権が改正され、民法と労基法ともに時効が5年と改定されました。これにより、労働者はこれまで未払い賃金の請求を2年以内にしなければいけませんでしたが、5年以内にすれば賃金を請求できることになり、賃金の回収がしやすく、また、回収率も単純に大きくなることとなりました。

    さて、ここで注目するべきなのは起算日も法改正に伴い見直された際に民法と労基法では違いが生じているということです。

    それでは具体的にどのような違いがあるのか詳しく見ていきましょう。

    (1)民法

    まずは民法です。

    民法では従来の客観的起算点に加えて今回の法改正で主観的起算点が設けられました。

    ①客観的起算点とは

    賃金請求権の客観的起算点は基本的には各賃金支払日となります。

    この賃金支払日は、労基法第15条及び労働基準法施行規則第5条により、使用者が労働者に対して明示しなければならない事項として定められており、労働条件通知書、労働契約や就業規則等に記載されているのが一般的であり、労働者としても各賃金支払日を知っていると考えられています。そのため書類上で賃金の支払い日などが明記されていて、不払いが客観的に見て明らかな場合に適用されるケースが多いものです。

    ②主観的起算点とは

    一方で主観的起算点は賃金の未払いを労働者が認識した時点が起算点となるものです。

    客観的起算点に基づけば不払いが行われている日から、「賃金請求権の所有者」がその事実を認識していなくても起算日となるため、賃金請求権が発生していると知った時点ではすでに相当の期間が過ぎてしまっているケースが多々生じています。

    つまり事実を把握できていない時点でも時効の計算が始まってしまうような不平等が生じないようにするため主観的起算点が設けられています。

    主観的起算点が適用される一例としては「過払い金など、書類上では判断できず、発覚までに相当程度の期間が必要な場合」などであると考えられています。

    (2)労働基準法

    労働基準法では民法と違い、主観的起算点が導入されていません。

    民法と労働基準法で起算日に違いが生じている理由は法の適用範囲の違いが挙げられます。民法では一般の人々にすべからく適用できる法として主観的起算点を導入していますが、労基法では労働者の労働基準に照準を絞っているため、原則的に書類上の契約ありきという視点に立っているのです。

    そのため、労基法では主観的起算点を用いることはなく、客観的起算点を維持するのみとなっているのです。

    3.当面の間、賃金請求期間は3年間

    ここまで起算日の話をしてまいりましたが、起算日が定まったとしても、いきなり過去5年分の賃金請求を行うことは出来ません。

    法改正をし、いきなり賃金請求期間を5年にしてしまうと企業の負担も増えてしまい望ましくないということで、改正法の施行状況を見極めるために当面の間は3年間となったためです。

    また、賃金請求期間3年として請求できるのは2020年4月以降に発生した不払いに限られます。

    そのため、2020年4月以前に発生している不払い賃金を請求する際はこれまでと同様に2年間として行動する必要があるので、4月以降に不払い賃金の請求を行っている方はご注意ください。

    まとめ

    新たに法改正された民法と労働基準法では起算日の基準が一部異なります。

    労働基準法では主観的起算点を導入することはなく、以前と同じ客観的起算点のみを使用していますが、これは企業と労働者の間には原則的に給料支払い日等の契約がなされているためです。そのため企業等に不払い賃金の請求を行う場合は労働基準法に従った方が安全でしょう。

    また賃金を請求期間が5年になりましたが、当面の間は3年間で推移することになるので、いきなり過去5年分の未払い賃金の請求をすることは出来ません。

    加えて2020年4月以前の不払い賃金は法改正前の制度に従って処理をするため、しばらくの間は法改正前の制度に従って行動することをおすすめします。

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