残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2020.06.13

    未払い賃金に対する付加金とは何か

    会社に命じられ労働者が時間外の仕事をした際には、使用者は労働者に対して残業代を支払わなければなりません。しかし、残業代を払いたくないという会社もなかにはあるようです。

    労働者が未払いの残業代などの賃金を使用者に請求した場合、遅延損害金のほかに「付加金」というものを請求することが出来ます。

    「付加金」とはどういったもので、どうすれば支払われることが出来るのでしょうか。

    実はこの「付加金」というのは付されることが非常に困難なものなのです。

    1.未払い賃金に対する付加金とは

    「付加金」は労働基準法で決められている金銭の支払いを行わなかった使用者に対するペナルティーであり、労働者の請求によって支払われる未払い金と同額の金銭のことです。

    例えば労働者が未払い賃金100万円を請求し、さらに「付加金」を求めた場合、使用者は未払い賃金100万円と「付加金」100万円の合計200万円を支払わなければならないことがあるということです。

    付加金が追加となる未払い賃金は主に3つあります。

    1. 休業手当
    2. 割増賃金
    3. 年次有給休暇の賃金

    しかしながら「付加金」とは労働者が請求したから自動的に支払われるというものではありません。

    「付加金」の支払いを使用者に命じることが出来るのは裁判所なのです。つまり、労働裁判等ではなく、裁判所において訴訟で使用者と戦い、勝訴しなければいけないのです。

    また、勝訴したとしても必ず裁判所が「付加金」の支払いを命じるとも限りません。

    2.付加金が支払われる場合

    「付加金」が支払われる場合、使用者にどれだけ悪質性があるのかを裁判所が判断し、それに基づいて「付加金」を付するかどうかを決めます。

    悪質性について明確な基準があるわけでありません。

    • これまでどれほど労働者に対して賃金を正当に支払ってきたのか
    • 労働基準法をどの程度守って来たのか
    • 労働時間等の証拠開示に応じるか

    などの使用者の態度を総合的に検討する必要があります。

    3.実際に裁判まで行くケースは僅か

    未払い賃金などの労働問題は主に「労働審判手続き」という方法で解決されます。

    労働審判手続きとは労働問題を専門に取り扱い、労働審判官(裁判官)と労働関係の専門家である労働審判員2名で組織された労働審判委員会が原則3回以内の期日で審理し、調停、もしくは労働審判を行う紛争解決制度です。

    未払い賃金の支払いなどを求める労働者は地方裁判所に申し立てをすることで労働審判を起こすことが出来ます。

    審理では労働者と使用者の間で事実関係の確認を行い、法律論の双方の意見を取りまとめ、争いの焦点を整理し、必要に応じて証拠取り調べを行います。その後、調停(話し合いによる解決)が可能ならば調停に入ります。

    この「労働審判手続き」とは「労働審判委員会」が管轄しており、「裁判所」が管轄する「裁判」とは別物です。

    労働基準法では「裁判所」が付加金を付する権限を持つとされており、「労働審判委員会」にその権限はないということが一般的な認識としてあります(出来ないとも明言されていませんが、「労働審判委員会」から付加金の支払いを命じたことがあるという事実もありません)。

    4.裁判を行っても付加金は得られない可能性が高い

    裁判所において裁判を行ったとしても、基本的に和解で解決する確率が高いです。

    例えば、司法統計の「平成30年度第一審通常訴訟既済事件数 事件の種類及び終局区分別 全地方裁判所」によると訴訟件数に対して判決に至ったのは21%ほどです。(参照:平成30年度第一審通常訴訟既済事件数 事件の種類及び終局区分別 全地方裁判所

    和解とは当事者同士のものであり、裁判所の「判決」ではありませんから、結果的に裁判所が付加金の支払いを命じることもありません。

    また、裁判の第一審で使用者に対して未払い賃金と付加金の支払いが命じられたとしても、使用者が控訴し、第二審(控訴審)に移行した場合、第二審の間に使用者が労働者に対して未払い賃金を支払った場合、付加金の支払い義務は消失します。

    これは、第一審の判決と第二審の判決はひと続きであり、第二審まで行った場合は第二審が終局するまで判決が確定してはいないという扱いになるからです。

    仮に付加金を付される判決を得たとしても、未払い賃金と同額を付されるのかあるいは未払い賃金の何割かを付されることになるのかは裁判官の裁量次第になります。

    5.付加金を得るのは非常に困難…それでも請求はするべき

    付加金は請求し、裁判を行わなければ100%手に入りません。しかし請求し、訴訟をしていれば手に入る可能性が少しでも残るのです。

    また、付加金を払いたくない使用者に対してはプレッシャーを与えることが出来、未払い賃金の回収を早める効果が期待できます。

    注意しなければならないのは付加金を請求できるのは労働基準法違反があった時から2年以内ということです。

    これは「除斥期間」と呼ばれるものであり、「消滅時効」のように請求・勧告行ったからといって2年という期間が中断(停止)したりはしません。

    もしこの2年の間に労働審判手続き等を行っていて、除斥期間が過ぎてしまった場合、裁判を行っても付加金の請求をすることは出来ません。

    そういった問題を避けるために労働審判手続きの際に付加金の請求を行っておきましょう。労働審判手続きで請求されていた内容は訴訟に移行しても請求されていたという扱いになるので、付加金を請求する権利が失われずに済みます。

    まとめ

    付加金を付されることはなかなかに困難です。請求しても付されない可能性が非常に高いです。

    これは自分の努力でどうにかなる問題ではありません。相手がどう動くかによって結果が左右されてしまいます。

    ですが、請求するという行為だけでも使用者にプレッシャーを掛けられますし、もしかしたら裁判で付加金を付される可能性もあります。

    「付加金の請求は無駄」と決めつけずに、請求するようにしましょう。

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