残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2020.09.26

    在宅勤務でも残業代はちゃんと支払われるの?

    近頃は個人事業だけではなく、企業も積極的に在宅勤務などのいわゆる「テレワーク」を求めるようになってきました。

    社員としては会社に通勤する手間がなく、時間をより有効に活用しながら仕事が出来ますし、会社もオフィスコストの節約が出来るなど、お互いにメリットがあります。

    しかし、いまだに日本社会に在宅勤務の組織体制に適応できておらず、給料の支払いなどの仕組みに問題を残している企業が少なくありません。

    そこで今回は、在宅勤務時の給料と残業代がどうなるのかご説明します。

    1.原則的に給料・残業代は出ます!

    まず押さえておくべきポイントとして、例え在宅勤務であっても労働基準関係法令に従わなければならないので、在宅勤務に移行しただけで、オフィス勤務時から給料が少なくなることはありません。

    また法定労働時間を超えて働いた場合には残業代も当然支払われます。

    しかし注意しなくてはならないのは在宅勤務をする場合、オフィスで働く場合とは違い、会社側が社員が実際にどれくらい働いているのかといことが不明瞭になり、管理しにくくなるといった問題を解決するために少々特殊な労働制度を適応する場合があるということです。これらは残業代などの計算に少なからず影響を及ぼしますから、どのような仕組みになっているのかということを理解しておかなければなりません。

    2.雇用形態により残業代が出ない場合がある

    在宅勤務には主に「雇用型」と「業務委託型」の2つの雇用形態があります。

    雇用型は労働者は使用者と雇用契約を結んでおり、労働基準関係法令の適用がされ、残業代の請求を行うことが出来ます。

    しかし業務委託型の場合、労働者は個人事業主として扱われます。そのため、法定労働時間などの適用がなされません。つまり、業務委託の場合は会社側が残業代を支払う理由はないのです。

    しかし、業務委託であっても実質的に雇用形態と差がない場合(仕事の依頼に諾否の自由がない、時間的・場所的拘束がある、業務遂行上の指揮監督がある、報酬の決めたか・支払い条件が雇用形態と同等であるなど)、残業代の支払いを受けられる可能性があります。雇用形態との差異がないにも関わらずに、契約条件が業務委託であるという理由だけで残業代の支払いが受けられないというのは不公平であり、問題があるからです。

    3.在宅勤務時に適応されやすい3つの労働時間制度

    会社側が在宅勤務時に適応する可能性のある労働時間制度は、

    1. 裁量労働制
    2. 事業場外みなし労働時間制
    3. フレックスタイム制

    の3つです。

    (1)裁量労働制

    裁量労働制とは、簡単に言ってしまえば実労働時間に関わらず、あらかじめ定められた一定時間を働いたとみなす制度です。

    裁量労働制では労働者は労働時間がある程度自由になります。どんなに少なく働いても、反対にどんなに長く働いても、一定時間の労働として扱われます。

    しかし裁量労働制を適応できる業務には厳しい制限があり、会社側がどんなに「裁量労働制だから残業代が出ない」と説明をしても、法律上は裁量労働制として認められないケースがあります。

    裁量労働制を適応できるのは、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」のいずれかに当てはまる業務だけです。「専門業務型裁量労働制」の労働時間を定めるのは労使協定、「企画業務型裁量労働制」の労働時間を定めるのは労使委員会となります。

    労使協定、労使委員会を通さなかった場合、裁量労働制は無効となります。

    • 専門業務型裁量労働制の対象例

    新商品や新技術の研究開発、情報処理システムの設計、人文科学や自然科学の研究、コピーライターや新聞記者など

    • 企画業務型裁量労働制の対象例

    企業の企画部門で経営環境を調査分析し、経営企画を策定する労働者など

    (2)事業場外みなし労働時間制

    事業場外みなし労働時間制は「使用者が労働者の労働時間の管理が困難」な場合に適応されます。「使用者が労働時間の労働時間の管理が困難」であるとするためには以下の要件を満たす必要があります。

    ①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態にしておく必要がない(使用者の指示に即応する義務がない状態であること)

    例えば、回線を接続しているだけで、労働者が自由に情報通信機器から離れることや回線を切断することが認められている場合などです。

    ②使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

    しかし、当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することや、基本的事項について所要の変更の指示をすることなどは具体的な指示には含まれません。

    この2つを満たしていない場合、「使用者が労働者の労働時間の管理が困難」とは判断されず。事業場外みなし労働時間制を適応することはできません。

    (3)フレックスタイム制

    フレックスタイム制は裁量労働制や事業場外みなし労働時間制のように労働時間を一定時間とするようなものではありません。

    フレックスタイム制は清算期間やその期間における総労働時間を労使協定で定め、清算期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、労働者が始業と終業時刻を決定することのできるものです。

    労働者に労働時間の決定をゆだねているため、使用者は各労働者の労働時間を適切に把握しておかなくてはなりません。そのため、労働者と使用者との間で円滑な情報のやり取りやコミュニケーションをとる必要があります。

    4.残業代が出ない!?残業代をもらうには常に報告することが大切

    すでにお話しした通り、在宅勤務であっても、実労働時間や法定労働時間を超える場合や法定休日に労働を行わせる場合、深夜に労働させた場合には割増賃金が支払われることになります。

    しかし、就業規則などに時間外等に業務を行う場合には事前に使用者の許可を得なければならず、かつ、時間外等に業務を行った実績について事後に使用者に報告しなければならないなどと記載されている場合に、以下の3つのすべての事項に当てはまる場合は労働基準法上の労働時間には該当しません。そのため、残業代を請求することが困難になります。

    1. 時間外労働について、使用者から義務付けられたりした事実がない
    2. 労働者の当日の業務量が過大であったり、期限の設定が不適切であるなど、時間外労働をせざるを得ないような使用者の黙示の指揮命令があったという事実・事情がない
    3. 時間外に労働者からメールが送信されていたり、時間外に労働しなければ成しえない成果物の提出がない

    そのため、在宅勤務で時間外労働をする際はこまめに使用者と連絡を取り合うことが大切です。また、時間外労働をした際は必ず記録を残し、万が一トラブルに見舞われた際はきちんと証拠を提出できるようにしておきましょう。

    5.在宅勤務の残業代が支払われない場合は専門家に相談を

    残業代が支払われないなど、会社に疑問を感じた際は労働基準監督署や労働局に相談することをおすすめします。

    また、具体的に会社に残業代の請求をしようと考えるのなら弁護士を頼るのも一つの手です。

    まとめ

    在宅勤務の場合、雇用契約を結んでいるのであれば原則的に残業代の支払いは行われます。業務委託の場合であっても実質的に雇用形態と差異がない場合は残業代の請求が可能です。

    残業代を請求する際にはそれぞれの自分の勤務体制がどのような労働時間制度に則っているのかを確認するようにしましょう。また、残業代を請求する際はあらかじめ使用者に時間外労働をする旨を申し出ている必要などがあります。

    在宅勤務の場合、自己判断で時間外労働を行っても正規の労働時間として扱われないので注意しましょう。

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