目次
人間にとって働くことのタイムリミットは平均65歳までと長めです。しかし、子供を授かる女性のタイムリミットは平均43歳ぐらいまでともっと短いのです。
現在、夫婦の半数以上は共働き家庭という働く女性の多い時代に突入しています。仕事を手放さず、さらに職場で不待遇を受けることなく無事出産→復帰をするには、いくつかのテクニックが必要です。
1.大手IT企業の研修中に妊娠がわかったSさんの場合
SさんはIT系コールセンターに勤めていました。結婚しており、夫婦共々こどもを希望していましたが中々すぐには妊娠せず1年以上が経過しました。
「このままでは子供ができないから、もう少しキャリアをつけてみよう」一発奮起したSさんは、同じIT系のコールセンターですが外資系でお給料もアップする企業に応募してみました。結果は見事合格。
しかし、その外資系企業で務めた矢先の研修期間中に妊娠がわかりました。待望のことでしたが、職場では研修期間中の身でした。Sさんは迷いましたが、グループのリーダーを通して仕事をぎりぎりままで続けたいこと、出産の時期などを伝えました。
しかし、現実的には妊娠を伝えて2か月後に解雇となりました。本来であれば、あと4か月は働けた計算です。Sさんの場合は研修中であったということが大きな要因ではありますが、もしこれをお読みのあなたが同じように妊娠を理由として解雇となった場合はどうすればいいのでしょうか?
2.労働基準法上の産前休業は自然分娩予定日の6週間前から
働く本人の体調がよく、順調に経過しているのであれば法律上では出産予定日の6週間前までは勤務が可能です。Sさんは研修期間中でしたが、試用期間ではありませんでした。
試用期間とは、企業が従業員を採用するかを検討する期間。これに対し、研修期間は従業員がスキルを身に着ける期間です。そのため、前項で挙げたSさんのケースに関しては労働監督署へ必要な資料(労働契約書)や証拠(〇月でやめてほしいと言われたことの証拠)を提出できれば、不当解雇を免れた可能性があります。
ちなみに、企業が解雇できるケースは以下の5つに当てはまる場合です。
①就業規則等に列記された解雇事由に該当する事
②就業規則等に定められた解雇手続きを守ること
③労基法20条に規定する解雇予告手続きを守ること
④法律的に解雇が禁止されている規定に違反しないこと
⑤解雇権の濫用にあたらないこと
このルールは労働基準法ですが、実際には「職場に迷惑をかけるから」と、多くの女性は妊娠中に多くの我慢を現場で強いられます。不当解雇以外にも「職場に人がいないから、体調が悪くても出てこいと電話がかかってきた」「迷惑がかかるから、妊娠自体をなかなか言い出せない」などなど。こんな状況では、女性は安心して出産できません。
本来であれば、ギリギリの人数やシフトで運営している職場にはその職場に問題があります。次にご紹介する法律「男女雇用機会均等法」をご紹介しましょう。
3.妊婦を守る「男女雇用機会均等法」について
企業で仕事をして、結婚して出産してからまた職場へ戻る。そのサイクルを守るために、様々な法律やルールが女性のために存在します。その代表格が男女雇用機会均等法における「母性健康管理」の措置です。
【男女雇用機会均等法の母性健康管理とは?】
- 事業主は女性労働者が妊産婦のための保健指導又は健康診査を受診するために必要な時 間を確保することができるようにしなければなりません。(法第12条関係)
- 妊娠中及び出産後の女性労働者が 、健康診査等を受け 、主治医等から指導を受けた場合 は、その女性労働者が、受けた指導を守ることができるようにするために、事業主は、勤務 時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じなければなりません。(法第13条関係)
この2つの法律の中身を具体的に言うと、例えば通勤ラッシュの時間を避けた時差通や勤務時間を30~60分ほど短めにする、などの措置があります。
どんなに健康な女性でも、妊娠期間中には健康診断へ行く必要がありますし、悪阻で仕事ができない時もあります。妊娠している女性または妊娠の予定のある女性は安心して働くために、この法律の存在を頭の片隅に入れておきましょう。
4.妊娠中の不当解雇やマタハラを防ぐために
私たちが安心して出産してまた職場に戻るためには、出産前~後にちょっとした気遣いをすることで状況やだいぶ変わります。
①そもそも過酷な仕事を選ばないようにする
若くて体力もあるころは、日雇いや倉庫、居酒屋での立ち仕事も楽しく苦にならないかもしれません。しかし、妊娠中の仕事としては適しません。
どうしても仕事をしなくてはいけない状況なのであれば、妊娠中でもできる事務仕事やアパレルや雑貨店での販売員はオススメです。また、スマホやPC操作のみで可能なポイントサイトや覆面モニターなども気楽にできる副業です。
②妊娠したら、最初に報告する人は吟味する
妊娠がわかって嬉しい反面、まずどの人に報告するというのは非常に重要です。あなたがある程度の規模の会社で5~6人をまとめるリーダーの元にいるのであれば、ますはそのリーダーに報告をしましょう。安定期に入ってからが望ましいでしょう。リーダーがいない、またはリーダーと相性が悪い、などの事情があるなら、その上の人物に相談を持ち掛けます。あくまで、業務の終わった後や余裕のある時間帯にしましょう。
また、話をする前に自分の意志をしっかりとまとめておきましょう。いつまで働きたいのか、旦那は賛成なのか、今の体調はどうなのか、など後から話すのではなく、わかっていることは時間短縮のため簡潔にまとめて話しましょう。
③職場の人間関係は日ごろから良好にしておこう
職場であなたの妊娠をどのように受け止めるかは、あなたの職場での能力や人間関係にもよって異なります。本来であればすべての女性はすべての職場で平等に扱われるべきですが、実際はどうはいきません。
明らかに不当である、これってどうなの?と思う場合は、弁護士の無料相談や以下の母性健康管理サイトを是非有効利用してください。
妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ|厚生労働省委託
※上記URLをクリックすると、母性健康ナビにリンクします
④母子健康管理指導事項連絡カードを有効活用しよう
このカードは、あなたが検診を受けた際に主治医が「勤務に支障がある」と判断した際に事業主に伝えるための書類です。あなたが直接事業主に「医師に〇〇と言われたので、、」と交渉するよりも、「主治医からこのカードをもらったんですが」とこの書類を見せる方が正確に意思疎通が図れます。また、妊娠している女性側としても間に医師が入っていることでなんとなく事業主に対して「休みたい」と言いやすくなるというメリットがあります。
母子健康管理指導事項連絡カードは以下のURLよりダウンロードできます。
まとめ
妊婦を理由の不当解雇はもっての他です。しかし、職場によって従業員が妊婦となった経験が多いところ(子育てママも多い職場)、そうでないところと職場での格差があります。
あなたのすべきことは、まず職場で最低限守られるべき法律を知ること。そして、日ごろから職場での意思疎通も良好にするなど自分でできることも率先して行いましょう。