パワハラ(パワー・ハラスメント)とは、「職場の地位や人間関係など職場内の優位性を利用して、適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為、または、職場環境を与える行為」と定義されています。
パワハラが社会問題として顕在化し、相談窓口が設置されたこともあり、パワハラの相談件数は年々増加傾向にあります。
ここでは、厚労省などのパワハラのデータについて、ご紹介します。
1.パワハラの相談件数は増加中
都道府県労働局などに設置されている相談コーナーに寄せられる相談のなかでも。パワハラに関する相談件数は年々増加傾向にあります。
また、パワハラの相談件数の増加とあわせ、職場のいじめや暴力などが原因で、うつ病などの精神障害を発症し、労災補償されたケースも増加しています。
(1) パワハラの相談件数
労働相談コーナーに寄せられるパワハラの相談件数は下記の図のとおり、年々増加傾向にあります。
民事上の個別労働紛争の相談件数に対する「いじめ・嫌がらせの相談件数の割合」は、平成16年には9%だったのが、平成28年には28%にまで増加しています。
民事上の個別労働紛争相談件数 | いじめ・嫌がらせの相談件数 | いじめ・嫌がらせの相談割合 | |
平成16年 | 160,166 | 14,665 | 9% |
平成17年 | 176,429 | 17,859 | 10% |
平成18年 | 187,387 | 22,153 | 12% |
平成19年 | 197,904 | 28,335 | 14% |
平成20年 | 236,903 | 32,242 | 14% |
平成21年 | 247,302 | 35,759 | 14% |
平成22年 | 246,907 | 39,405 | 16% |
平成23年 | 256,343 | 45,939 | 18% |
平成24年 | 254,719 | 51,670 | 20% |
平成25年 | 245,783 | 59,197 | 24% |
平成26年 | 238,806 | 62,191 | 26% |
平成27年 | 245,125 | 66,566 | 27% |
平成28年 | 255,460 | 70,917 | 28% |
民事上の個別労働紛争相談件数 いじめ・嫌がらせの相談件数 いじめ・嫌がらせの相談割合
平成16年 160,166 14,665 9%
平成17年 176,429 17,859 10%
平成18年 187,387 22,153 12%
平成19年 197,904 28,335 14%
平成20年 236,903 32,242 14%
平成21年 247,302 35,759 14%
平成22年 246,907 39,405 16%
平成23年 256,343 45,939 18%
平成24年 254,719 51,670 20%
平成25年 245,783 59,197 24%
平成26年 238,806 62,191 26%
平成27年 245,125 66,566 27%
平成28年 255,460 70,917 28%
(2)精神障害の労災補償状況
パワハラなど、職場でひどい嫌がらせやいじめ、暴行を受けた結果、うつ病などの精神障害を発症し、労災補償がなされたケースも平成22年度には308件であったのに比較して、平成28年には497件と、60%以上の増加率となっています。
精神障害の労災補償の支給決定数全体 | |
平成22年 | 308 |
平成23年 | 325 |
平成24年 | 475 |
平成25年 | 436 |
平成26年 | 497 |
平成27年 | 472 |
平成28年 | 498 |
精神障害の労災補償の支給決定数全体
平成22年 308
平成23年 325
平成24年 475
平成25年 436
平成26年 497
平成27年 472
平成28年 498
(3) 最も多いパワハラ類型
平成24年に厚生労働省が全国の企業に勤務する20歳から64歳の男女を対象に行った調査では、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答したものは、回答者全体の25.3%となっています。つまり4人に1人がパワハラの被害を経験していることになります。
どのようなパワハラの被害に遭ったかについては、「精神的な攻撃」が55%で最多となっています。
* 精神的な攻撃…55.6%
* 過大な要求…28.7%
* 人間関係からの切り離し…24.7%
* 個の侵害…19.7%
* 過小な要求…18.3%
* 身体的な攻撃…4.3%
* その他…8.6%
参考:厚生労働省「明るい職場応援団」数字で見るパワハラ事情より
2.パワハラの法的問題
パワハラの被害に遭った場合には、その内容や程度にもよりますが、悪質な場合には損害賠償請求できる場合があります。またパワハラの行為者(加害者)は、侮辱罪などの刑事責任を追及される場合もあります。
(1)民事上の責任
パワハラの被害者は、加害者だけではなく会社に対しても責任を追及することが出来ます。パワハラが不法行為に該当する場合には、会社は使用者としての責任(使用者責任)を負うことになりますし、会社自体の不法行為や使用者の労働者に対する安全配慮義務違反としての損害賠償責任を負う場合もあります。
損害賠償責任を負うか否か、負うとしたら、賠償額はいくらかについての判断においては、当該パワハラ行為が行われた期間が重要な判断要素となります。
会社がパワハラの事実を把握していたにもかかわらず放置していた場合には、損害賠償責任を負う可能性は高くなりますし、より多額の損害賠償を請求出来るケースもあります。
(2) 刑事上の責任
パワハラは、その行為の内容によっては、刑事罰の対象となることがあります。
パワハラの加害者が刑事罰を追及されることになれば、当然職場が捜査の対象となります。
職場が捜査対象となれば、業務上の支障は避けられませんし、企業の評判の低下にもつながりかねません。会社として、パワハラ問題の予防施策に真摯に取り組み、万が一パワハラ問題が発生した場合には、迅速にパワハラ問題に詳しい弁護士に依頼し、早期解決のために尽力することをおすすめします。