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昔ある会社を解雇されてしまったAさん。今は別の会社で働いています。
しかし時間がたち、様々なことを調べているうちに「前の会社を解雇されたのは、不当なのではないか…?」と思うようになりました。
しかい、前回解雇されてから、時間がたってしまっています。この場合、Aさんは解雇した前の会社に対して、何かアクションを起こすことができるでしょうか。
1.不当解雇をした会社に訴える方法は2種類ある
まず、会社を解雇され、それを「不当解雇」だと思った場合、とりえる手段は2つあります。
1つ目は、「解雇の無効」による「解雇以降の賃金の支払い」を主張することです。企業は、従業員を自分の都合で勝手に辞めさせて良いわけではありません。客観的合理性・社会的相当性がなければ、その解雇は無効となります。
簡単に言うと、
といった理由だけで解雇されることはありません。( 逆に言えば、もしそのような理由で解雇された場合、それは不当解雇となります! )
もう1つは、「慰謝料」を請求することです。不当な解雇によって心理的な負担を受けた、精神的損害が発生した、ということを証明できれば、解雇以降の賃金の支払いだけではなく、慰謝料として請求することが出来ます。
現実的には、会社に戻る気が無くても解雇の無効を主張したり、慰謝料と解雇以降の賃金の支払いのどちらかだけ主張したりと、訴えはもっと複雑になってきますが、法的には、主にこの2種類の方法で会社にお金を請求する、と覚えておきましょう。
2.「解雇の無効」を訴えるとき、時効は基本的には2年
1つ目の方法、「解雇の無効」を訴えるときについて、解雇以降の賃金の請求をするわけですから、未払いの賃金を請求するのと同じ時効が適用されます。賃金の請求権は、労働基準法によって2年と定められています。
例えば、2018年4月に解雇され、2018年4~6月の3ヶ月分の賃金を請求する場合、時効となるのは2年後の2020年の4~6月となります。
いくらもらえるのかということですが、基本的には解雇が無効であると判断されれば、「解雇されなければ、その期間働いていたらもらえたであろう賃金」をベースに計測され、その分がもらえるという仕組みになっています。
何か月分の賃金がもらえるかはケースによって違いますが、3ヶ月~半年分が一般的だとされています。
3.「慰謝料」を請求するとき、時効は3年
解雇の無効を訴えるのではなく、精神的損害を受けたことの慰謝料として会社を訴える場合、その時効は3年となります。また、この慰謝料の時効は「損害および加害者を知った時から」スタートするので、基本的に時効は解雇されてから3年です。
不当解雇の慰謝料相場は、50~100万円となっています。
4.退職金について、時効は5年
注意が必要な点として、退職金の請求期限は他の賃金などと違って、5年と長めに設定されています。退職の仕方が円満ではなく、退職金が十分に支払われないまま退職した場合でも、5年間請求することが出来ます。
会社が退職金について不支給条項や減額条項を定めており、それを根拠に退職金を十分に支給しないというケースがありますが、その場合も必ずしも退職金をもらえない、あるいは減額されるというわけではありません。
不支給条項や減額条項を実際に行使するには、就業規則に明記している必要性があります。また、たとえ就業規則に書いてあったとしても、行使されるだけの正当な理由がないと判断されれば、会社は退職金を正規の金額だけ支払わなければなりません。
退職して5年以内なら、さらに退職金を支払うことを請求することが出来ます。
5.「債務不履行として訴える」場合は時効を10年に延ばせる
不当解雇をした企業に対して、お金を「請求」する場合の時効は2年ないし3年ですが、債務不履行、つまり一度支払いを請求されたのにも関わらずまだ支払いがされていない、といった場合の請求権は10年間となります。
この方法で、3年以上前の解雇以降の賃金の支払いをはじめから請求することはできません。しかし、必ずしも2年、3年の期間内に未払い賃金や慰謝料が支払われていなくても、再度請求を行うことができる場合もある、ということを覚えておきましょう。
まとめ
企業に対してお金を請求できる期限は、「2年」ないし「3年」です。また、一度請求をしていたり、退職金だったりといった特別な場合は、さらに請求できる期限が伸びることもあります。
意外に長い期間請求できるので、自分の過去の解雇が「不当解雇なのでは?」と思ったら、一度弁護士に相談してみることをお勧めします。