内定取消、内定辞退…内定をめぐるトラブルQ&A

内定取消、内定辞退…内定をめぐるトラブルQ&A 不当解雇
不当解雇

「採用の内定」とは、将来のある時期から会社で働くことが予定されているという労働契約が成立している状態のことをいいます。ですから、会社から一方的に内定を取消すことは許されませんし、内定を辞退するよう強要されることももちろん許されません。

しかし採用内定ではなく「採用内々定」である場合には労働契約が成立していない場合もあり、個別的な事情によって判断せざるを得ないケースもありますので、注意が必要です。

1.採用の内定とは

採用の内定とは、将来のある時期から会社で働くことが予定されているという、「始期付かつ解約権留保付きである労働契約」が成立している状態のことをいいます。

企業が内定を通知した時点で、企業と労働者の間には労働契約が成立したことになり、合意がなされた時点から採用日までは内定期間となります。

(1) 採用内々定との違い

採用の内定と採用内々定が、「労働契約が成立しているか否か」で区別することがあります。ただしこれらが厳密に使い分けられているわけではなく、実際は個々のケースによって判断されることになります。

具体的には、「過去に内々定を出したのに正式内定を出さなかったなど、これまで内々定を内定と区別して扱ってきた実績があるか」「採用することが当然の前提というような期待をさせる言動や対応をとったか」「採用担当者が、応募者に他社の内定を辞退するよう勧めたか」など、個々の判断事情を総合的に見て判断していくことになります。

(2) 内定通知書の確認事項

採用内定書や労働条件通知書に記載されている労働条件については、最初に説明された待遇などと異なるケースがありますので、しっかりチェックする必要があります。

たとえば、求人票では「月給30万」と記載されている場合でも、その後届いた採用内定通知書で「月給25万」と記載されている場合には、「月給50万」で契約が成立したことになってしまいます。

入社したあと「求人票と条件が違う」と気づいても、内定通知書の記載内容が有効とされてしまいますので、賃金、労働時間、休日などの労働条件についてはしっかりと確認して、おかしいと思ったら、早めに採用担当者に確認するようにしましょう。

2.採用内定を取消されたら

採用が内定していたにも関わらず、企業が一方的に内定を取り消してくることがあります。しかし、これまで述べてきた通り、採用内定は始期付かつ解約権留保付きである労働契約が成立している状態のことですから、これを一方的に解約することは解雇と同様簡単に認められるものではありません。

企業が内定を取り消すことができるのは、採用内定通知書などで規定されている取消原因に限定されることだけではなく、客観的に合理的であり社会通念上相当と認められる理由に限られます。

 賃金や賠償を請求できることも

客観的に合理的な理由や社会通念上相当と認められる理由のない、違法な採用内定取消を受けた場合には、その取消の効力を争い、賃金や損害賠償を請求できることもあります。

会社に内定取消の理由を求めたにも関わらず曖昧な返答しか得られない場合には、約束通り働かせてもらうよう求めることもできます。

そして会社側はこれに応じない場合には、取消の無効を主張し、解決するまでの賃金を請求したり慰謝料の支払いを求めることもできます。

 

ですから、会社に言いなりになって、内定取消の同意書にサインしたりする前に、早めに労働問題に詳しい弁護士や労働基準監督署の相談コーナーに相談することをおすすめします。

3. 内定辞退を強要されたら

内定先の会社から、「内定を辞退しろ」と強要されることがあります。

会社側が内定を辞退するよう求めてきても、内定を辞退するかどうか決めるのは労働者側ですので、はっきりと断ることもできます。しかし、内定辞退を強要するような企業で働きたくないと考えたのであれば、それなりの補償を請求したうえで、内定辞退に応じるという選択肢もあります。ここでは、内定辞退を強要された時の対処方法についてご紹介します。

(1) 強要を辞めさせ補償を求める

まず内定辞退するよう求められることが「強要」だと感じた場合には「強要は辞めて欲しい」と会社に要求しましょう。

しかし、それでも会社側の強要が続くようであれば、労働基準局のあっせん手続きを利用したり、労働相談情報センターを利用することもできます。

また、もし内定辞退を強要するような会社では働けないと感じたのであれば、会社側と交渉して、適切な補償をしてもらったうえで、申し出に応じるという選択肢もあります。

 

以上、内定の取消や内定辞退の強要など、内定をめぐるトラブルや対処方法についてご紹介してきました。

内定をめぐるトラブルに限らず労働問題は、労働者個人で交渉するには難しいケースがほとんどです。

しかし、弁護士に相談すれば裁判外の示談交渉のほか、通常の裁判手続き、仮処分手続き、労働審判手続きなど、さまざまな解決方法がありますので、簡単に諦める必要はありません。

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