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不当な理由で解雇を受けた場合、慰謝料を請求することができます。
裁判の慰謝料相場を含め、高額請求が認められる事例をご紹介します。
1.そもそも不当解雇とは
雇用主に対して労働者が直面するか可能性があるトラブルの一つとして不当解雇があります。
不当解雇は解雇に当たる条件を満たしていないか、または解雇に対しての規程に準ずることなく労働者を解雇することを指します。
不当解雇は会社の都合で簡単にできるものではなく、労働者を不当な理由で解雇することは法律に触れる行為のため、慰謝料の請求ができます。 不当解雇なのかどうかを判断することは労働者にとって難しいことかもしれませんが、「不当解雇かな?」と感じたら、まず弁護士に相談してみましょう。
慰謝料を請求する方法にはどのような手段があるのか、ご自身の状況に合った方法で慰謝料請求へのプロセスを踏むようにしてください。
2.裁判での一般相場は50万円~100万円
不当解雇や労働者の意思に反しての退職強要に関しては、労働者への精神的な損害が発生するため慰謝料請求ができます、不当解雇での一般的な慰謝料はセクハラに関する事案で高額な慰謝料を勝ち取る場合を除いて、おおむね50万円~100万円前後が相場となっています。
不当解雇の慰謝料は、解雇に対する不当性が高く、なおかつ違法性が著しいほど金額が上がっていきますが、労働者が受けた精神的損失を代償するに値するような高い賠償額はほとんど認められていません。裁判で不当解雇の違法性が認められた場合のみ慰謝料請求が可能となりますが、不当解雇と思われる行為が必ずしも不法であるとは限りませんのでご注意下さい。
3.不当解雇にあったら?慰謝料請求に至るまでの2つの方法
不当解雇されたら慰謝料請求に向けて準備を始めていくことが大切です。
(1)不当解雇から慰謝料請求までの方法は2つある
不当解雇を受けてから慰謝料請求までには大きく分けて2つの方法があります。まず1つ目は、会社を辞めずに職場復帰を条件とし、賃金の支払いと慰謝料の請求をする方法です。もう1つは、不当解雇に対し、精神的損害を被ったとして損害賠償と慰謝料を求める方法です。ご自身の会社での立場や状況、また解雇の不当性の高さを考慮して、ベストな方法を選択するようにしましょう。
①方法1
職場への復帰を求め、賃金請求と慰謝料の請求するこの方法では職場に復帰する意思を会社側に伝えた上で、賃金の支払いと慰謝料の請求をします。
ただし、不当解雇を受けてから職場復帰をするには、さらなる精神的苦痛を抱えることも多く、実際には以前と同じように何のしこりもなく復帰できるケースは少ないのが現状です。
少なくとも不当解雇を受けた日以後の賃金と慰謝料が請求できるのが特徴的で、不当解雇での違法性がそれほど著しくなく、不当性が高くない場合に選ばれる方法です。
②方法2
職場への復帰や賃金請求をせず、損害賠償と慰謝料の請求をする この方法では職場への復帰や賃金請求を要求しない代わりに、損害賠償と慰謝料を請求します。
不当解雇での違法性が高いセクハラ事案や労働者の意思に反しての退職強要など、損害賠償や慰謝料の対象となる行為が認められる可能性が高い場合に選ばれる方法です。
この方法では、逸失利益の損害賠償や慰謝料のほか、会社都合での退職金との差額、弁護士を雇う際に必要する費用なども請求することが可能です。
逸失利益の損害賠償って何?
逸失利益の損害賠償とは、不当解雇にならなければ継続勤務で得られたであろう賃金の相当額です。裁判の例では、およそ6ヵ月分が相当額として認められています。
また、不当解雇によって退職した場合、自己都合で退職した分の退職金しかもらえないことがありますが、その際、会社都合と自己都合での退職金の差額を請求することができます。平均的な差額は100万円程度になります。
裁判で不当解雇の事実を証明するためには、
「雇用契約書」
「就業規則」
「解雇通知書・解雇理由証明書」
「仕事で使用したメールや書面」
「社内賃金規程」
「人事評価書」
「解雇に関するやり取りが残っている書類」
など、証拠となるものが必要になります。 解雇通知書が裁判で最も有効となる手段として、真実ではない会社側の主張、すなわち「解雇の事実はなかった」という点において、無駄な争いを避けることができます。
たとえ、解雇の事実が有効であっても「解雇予告手当」を受給することができます。
また、解雇理由証明書に関しては、労働者が受けた不当解雇が実際に
「普通解雇」
「懲戒解雇」
「整理解雇」
のどれであったかを証明する大切な証拠材料になります。
4.解雇の3つの種類、不当解雇に該当するのはどれ?
不当解雇かどうかを判断するには3つの解雇の種類を理解しておく必要があります。ご自身がどの解雇理由をもって解雇されたのか、しっかり確認をしておきましょう。
(1)普通解雇
普通解雇は就業規程で定める解雇事由に該当する場合に行われる解雇です。
ただし、この就業規程に書かれていない理由で解雇した場合は不当解雇としてみなされます。普通解雇でも、「労働者に対し、解雇への回避努力が行われていない」「解雇事由に合理性がなく、社会的な観点から見ても解雇に相当しない」場合は、不当解雇とみなされます。
会社側は普通解雇をする30日前までに、労働者に解雇の旨を通告するか、平均的な賃金の30日分を予告手当として支給しなければなりません。
(2)懲戒解雇
懲戒解雇は就業規程において最も処分の重い解雇です。通常支払われるべき退職金の減額や支払われないことがある上、即時に解雇することができるのが特徴ですが、それには労働基準監督署長から「解雇予告除外認定許可」を受けなければなりません。懲戒解雇という解雇基準に該当せず、30日前の予告なしで解雇をした場合は、不当解雇となります。
(3)整理解雇
整理解雇はいわゆるリストラのことです。会社経営において労働者の確保が厳しく、やむを得ず人員を削減しなければならない時に適用する解雇の種類です。 整理解雇で必要なのは以下に挙げる4つの要件を満たしているかどうかです。
1.会社が極めて深刻な経営危機に陥り、解雇による人員削減がやむを得ない
2.労働者への解雇を避けるために、具体的な措置や十分な努力がなされた
3.解雇の基準や適用に合理性がある
4.人員削減の必要性と内容に関して、真摯に労働者に説明を行い、納得できる協議や話し合いが十分になされた 以上の項目がクリアしているかどうか、確認する必要があります。
5.退職勧奨と解雇以後の賃金について
不当解雇に関して、その他気を付けたい点を挙げてみましょう。
(1)退職勧奨
会社側は適切な解雇事由がなく労働者に対して一方的に会社を辞めてもらいたい場合に、労働者に対し「会社を辞めてほしい」と話をもちかけ、辞職に追い込むことを「退職勧奨」と言います。労働者の意思に反して辞職への同意させるもので、断っても執拗に退職を勧奨し続ける場合は、損害賠償や慰謝料の請求ができます。 労働者にとって会社は大きな存在であるため、渋々ながら同意してしまうケースがありますが、一旦退職勧奨に同意をしてしまうと、自己責任となるため、のちに不当解雇を訴えても認められる可能性は低くなってしまいます。
(2)解雇以後の賃金
不当解雇の場合においては解雇以後も会社との雇用継続は存続しているので、会社側は労働者へ賃金を支払わなくてはなりません。不当解雇における解雇から解決日までの賃金を遡って請求することができます。
不当解雇が多い傾向として、独自で築いた社内規則がある中小企業が挙げられます。弱い立場にある労働者は解雇の理由が法律や社内規則にそぐわない場合でも、上手に言いくるめられてしまうこともあります。
労働者は不当解雇にあった労働者は大きく分けて2つの方法から慰謝料が請求できます。解雇の不当性のレベルや度合いによって、ご自身に合った方法を選ぶようにしましょう。
総じて、不当解雇で会社に請求できる金銭は、それぞれの項目を合わせて相場的に月収の3ヵ月~6ヵ月、つまり50万円~100万円程度が一般的な金額となります。
まとめ
・裁判上での慰謝料相場は50~100万円
・慰謝料請求のパターンは大きく分けて2種類
- 辞職せず、職場復帰を条件として賃金支払い・慰謝料の請求をする
- 不当解雇による精神的村議を受けたとして損害賠償・慰謝料の請求をする
・解雇には大きく分けて「普通解雇・懲戒解雇・整理解雇」の3種類があり、それぞれ特定の条件を満たしていないと不当解雇に該当します
・退職勧奨をされ、一度同意してしまうと自己責任となり不当解雇として認められるのが難しくなってしまう可能性がある
日本において「解雇」という行為は皆さんが思っているよりも難しい手続きとなっています。ある日急に「解雇」を宣言されてしまったり、「退職勧奨」をされてしまった場合はすぐに承諾せず、弁護士に相談してみましょう。