目次
ある日突然「本日で解雇する」と通告されたら、労働者はおsの時点から収入がなくなり、生活が不安定になってしまいます。
そこで労働基準法では、労働者保護の観点から、「会社が労働者を解雇しようとする場合には、30日以上前にその予告をしなければならない」と規定されています。そして「30日以上前にその予告をしない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない」と規定されています。
※この場合の平均賃金は、通常支払われている賃金とは異なります。
ここでは、解雇と言われた時の対処法や、解雇予告手当の計算方法などについてご紹介します。
1.解雇と言われたら
会社から突然「もう会社に来ないでいい」「辞めてもらいたい」などと言い渡されたら、労働者としてはまず「それは、解雇ということですか」と確認することが大切です。
その時会社側が「解雇ではない」と言えば、労働者としては、自ら退職の意思を表明しない限りは、その会社の従業員でいることが出来ます。
もし「解雇である」と言われたら、解雇の理由等について十分に説明を受け、納得してから以下のステップに従い、解雇予告手当を請求していきましょう。
(1) 解雇制限について確認
会社は簡単に労働者を解雇することが出来る訳ではなく、解雇は法律で厳しく制限されています。
労働基準法19条では、次の場合には会社は労働者を解雇出来ないとされています。
* 労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間およびその後30日間
* 6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合と産後8週間を経過しない女性が休業する期間およびその後30日間
ただし上記は、療養開始後3年を経過しても負傷または疾病が治らないため、会社は平均賃金1200日分の打切補償を支払う場合や、天災事変などやむを得ない理由で会社の存続が不可能となった場合には、この限りではないと規定されています。
また、労働基準法19条以外でも以下のケースに該当する場合は、解雇が禁止されています。
* 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
* 労働組合の組合員であること等を理由とする解雇
* 女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことを理由とする解雇
* 労働者が育児・介護休業を申請したこと、または育児・介護休業したことを理由とする解雇
* 公益通報をしたことを理由とする解雇
(2) 退職届は提出しない
会社から「辞めてくれ」と言われても、自分で納得出来ない限りは退職届を提出する必要はありません。退職届を提出してしまうと、自主的に退職したことになりますので、解雇とはなりません。
そのため、解雇予告手当が支払われなくなってしまいます。
もし退職届を提出するよう強要された場合には、それは「退職強要」となり違法です。
退職届はあくまで自分の意思で提出するものですから、退職することについて納得できないのであれば、退職届は提出しないようにしましょう。
(3) 解雇通知書の発行を求める
解雇を言い渡されたら、解雇通知書や退職理由証明書の発行を求めましょう。
労働基準法22条では、労働者が退職の際に退職の事由について証明書を請求した時には、会社はそれに応じて発行する義務があるとされています。
これに違反した会社は、30万円以下の罰金が課されます。
また、労働者が解雇の予告をされた日から退職日までの間に、退職理由証明書の発行を請求した場合にも、会社は交付しなければならないとされています。
もし請求しても会社が応じない場合には、会社とのやり取りについてICレコーダーなどで録音しておきましょう。後日解雇を証明するデータとなります。
(4) 平均賃金の計算
解雇予告手当を計算する際には、平均賃金をもとに計算します。
この場合の平均賃金は、通常支払われている賃金とは異なるので注意しましょう。
労働基準法12条では、「平均賃金とは、これを算定すべき事由に発生した日以前の3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」と規定されています。
平均賃金には、通勤手当や住宅手当などは含まれますが、以下の賃金は支払われません。
* 臨時に支払われた賃金
* 3か月を超えた期間ごとに支払われる賃金
* 通貨以外の者で支払われた賃金で一定の範囲に属さないもの
また、次の賃金も平均賃金の計算から除外されます。
* 労働災害にかかり療養のために休業した期間
* 産前産後の規定によって休業した期間
* 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
* 育児休業、介護休業した期間
* 試用期間
たとえば、3月の総支給額が210,000円、4月の総支給額が240,000円、5月の総支給額が180,000円の場合には、210,000+240,000+180,000を「31日+30日+30日」で割るので、630,000円÷91日となり、1日の平均賃金は、6,923円となります。
解雇予告手当を計算する時は、即時解雇の場合には30日分なので、6,923円×30日となり、207,690円となります。
(4) 解雇予告手当の請求
解雇予告手当の請求する場合には、内容証明に配達証明をつけて請求しましょう。
その際には、必ず添付した請求書のコピーを残しておきましょう。
会社が請求に応じない場合には、労働基準監督署で申告することになりますが、その際には、請求の事実を労働基準監督署から請求されることになるからです。
~解雇予告手当請求書の文例~
——————————–
私は平成27年5月1日、貴社代表取締役○○氏より、同日をもってかいこする旨を言い渡されました。
労働基準法第20条1項では、貴社は平均賃金30日分の支払い義務がありますので、貴社に対し解雇予告手当として、207,690円の支払いを請求します。
本書面到達後平成○年○月○日までに以下の指定する口座に、金207,690円を振込みいただきますようお願い致します。
なお、指定期日までに金員の支払いがない場合には、労働基準監督署等の公的機関へ申告し、法的措置をとらせていただきますことを併せて申し添えます。
——————————–
## 解雇予告手当が支払われない場合
解雇予告手当を請求しても会社が支払わない場合には、労働基準法違反となります。
労働基準監督署や、労働問題に詳しい弁護士に相談して、請求しましょう。
(5) 労働基準法違反
前述したとおり、即時解雇したにも関わらず解雇予告手当を支払わない場合には、労働基準法違反となります。
労働基準監督署に「解雇されたのに解雇予告手当の支払いがされない」と申告すると、労働基準監督署が是正勧告するなどの行政指導を行ってくれる場合があります。
(6) 弁護士に相談する
「不当に解雇された」「解雇予告手当が支払われない」などの労働トラブルについては、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、そもそも正当な解雇かどうかについて判断することが出来ますし、未払い残業代や未払い賃金があれば、併せて請求することが出来ます。
また、解雇された際の経緯に違法な行為があれば、損害賠償を請求することも出来ます。