セクハラ裁判~性的な発言が問題となった事例

セクハラ
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セクハラに関する民事裁判例では、性的な言動が違法だと判断された事例が数多くあります。

身体接触によるセクハラで強い精神的苦痛を被った場合には、1回のセクハラ行為で「就業環境を害する」と判断されますが、性的な言動は行為が継続的になされたことに加え「明確に抗議しているにもかかわらず放置された」「心身に重大な影響を受けていることが明白」などの事情がある場合に、「就業環境を害する」と判断される傾向があります。

ここではセクハラ裁判のうち、性的発言が問題となった裁判例についてご紹介します。

1. セクハラの行為態様

セクハラの行為類型は多々あります.

直接相手の身体に接触する場合はもちろん、相手に対して性的な発言をすることや、ヌードポスターを壁に貼るなどして、他人の視覚に訴える性的嫌がらせの行為もセクハラに該当します。

(1) 言葉によるセクハラ

性的な発言によるセクハラも多種多様で、スリーサイズを聞く、下ネタ、性生活に関する質問などはもちろんセクハラに該当しますし、「男のくせに仕事が出来ない」「女には仕事を任せられない」などの発言をすることも、セクハラに該当する可能性があります。

 

以下は、国家公務員の労働関係を規律する「人事院規則(セクシャル・ハラスメント防止等)の運用について」で列挙された性的発言事例です。

 

* スリーサイズを聞くなど身体的特徴を話題にすること

* 聞くに堪えないような卑猥な冗談を交わすこと

* 体調が悪そうな女性に「今日は生理か」「もう更年期か」など言うこと

* 性的な経験や性生活について質問すること

* 性的な噂を流したり、性的なからかいの対象とすること

* 「男のくせに根性がない」「女に仕事を任せられない」「女性は職場の花でありさえすればいい」などと発言すること

* 「男の子、女の子」「僕、坊や、お嬢さん」「おじさん、おばさん」など人格を認めないような呼び方をすること

2. 環境型セクハラ事例(性的な言動)

性的な発言が問題となり、裁判となった事例は多々ありますが、一般的には言葉によるセクハラよりも、身体接触が問題となったセクハラの方が、慰謝料は高額になる傾向にあります。

また違法と評価された場合でも、慰謝料の金額については、行為態様や被害の程度などによって、額に差が生じます。

(1) 和歌山セクハラ事件

被害者:女性正社員

加害者:会社役員の男性 4名

 

会社役員の男性4名は、離婚をして子どもを育てている女性正社員に対して「おばん」「ばばあ」「くそばば」などと呼びからかいました。また、性器付近や胸、尻などを何度も触り、性的に露骨な表現でからかいました。

 

裁判では「おばん」という発言は、侮辱的な呼称であり、「ばばあ」「くそばば」という発言は卑しめる呼称だと判断しました(和歌山地裁 平成10年3月11日)。

(2) A市職員セクハラ事件

被害者:女性職員

加害者:上司係長

 

上司である男性係長は、女性職員に対して「早く結婚しろ」「子どもを産め」などと発言し、「言葉でセクハラされるだけで、身体へのセクハラがないのは、我々に理性があるからか、自分に魅力がないからか考えろ」などと発言しました。そして女性職員とバーベキューパーティに参加した際には、「不倫しよう」などと発言しました。

 

裁判では「早く結婚しろ」などの発言は、性的関心に基づくものであり、バーベキューパーティで発言した「不倫しよう」という言動は、客観的にも多くの人たちの面前で強い不快感、屈辱感を与えるものであり、セクハラに該当すると判断されました(横浜地裁 平成16年7月8日)。

(3) 東京セクハラ事件

被害者:女性編集者 甲

加害者:上司編集長

上司である男性編集長は、「甲はおかしい」「甲は毎日電話をかけてくる。ストーカーだ」などと発言しました。また、甲が同僚と飲食店で飲食しているのを見て「2人はできているのかねえ」と発言しました。また、甲が総務部長に相談していることを知り、「2人はできているから気を付けろ」などと発言しました。

裁判では、上司編集長の言動は、いずれも女性編集者の名誉感情、プライバシー権を侵害したものとして、セクハラに該当すると判断されました(東京地裁 平成15年7月7日)。

3. セクハラ被害に悩んだら

セクハラの被害に遭い、加害者に慰謝料の請求を検討したいと考えている場合には、早目に弁護士に相談することをおすすめします。

 

「弁護士に相談するのは、裁判になった時」というイメージを持つ方も多いのですが、場合によっては、裁判をする前に示談を成立させることも十分可能なのです。

 

示談交渉する際には、弁護士は依頼主の絶対の味方としてできるだけ依頼人に対して有利に交渉を進めてくれます。弁護士が介入し協議を重ねるうえで、加害者としても「裁判を避けるために示談に応じる」というケースは多々あります。

 

セクハラ被害に遭った場合には、加害者のみならず会社にも慰謝料を請求することが出来る場合があります。どのような場合に会社に慰謝料を請求出来るかについても、弁護士に確認すると良いでしょう。

(1) 証拠や期間などが重視される

慰謝料の額は、セクハラの内容や頻度のほか、被害の程度やどのような不利益を被ったか、どのような証拠があるかなど、様々な状況を総合的に判断して決まります。

とくに、セクハラの被害をしっかりと立証するためには、証拠が大変重要となります。

決定的な証拠があるか否かで、同じような内容のセクハラでも慰謝料の金額は全く違ってくることも珍しくはありません。

 

どのような証拠が必要になるのか、適切な方法で証拠を集めるにはどうすれば良いかなどは事案によって異なります。早目に弁護士に相談して、アドバイスを受けましょう。

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