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パワハラ(パワー・ハラスメント)は、職場のいじめ・嫌がらせのことです。
1990年代頃から「どうしても会社に行くのが辛い」という人が増えてきたという社会的な背景を受けて、パワハラが労働問題としてクローズアップされることになりました。
職場のパワーハラスメントについて厚生労働省は「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」を開催し、平成24年3月に「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」を取りまとめ、職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組みを即しています。
しかしそれでも、会社のいじめ・嫌がらせなどで退職に追い込まれるケースは後を絶ちません。
ここでは、パワハラ被害に遭い、退職・転職に追い込まれた時の注意点についてご紹介します。
1.パワハラで退職する時の注意点
会社が労働者を辞めさせたいがために、いじめや嫌がらせをすることがあります。
会社としては、さまざまな事情で解雇したいのですが、労働者に解雇する理由がない時に、他の社員の前で罵倒したり、過度な業務を命じたりして、精神的にまいらせて、自ら退職するように仕向けるのです。
しかしこのようなパワハラは、個人の尊厳を傷つける行為であり、決して許されない行為です。
正当な理由なないのに、会社に言われるがままに退職届を出す必要などありませんし、泣き寝入りをする必要もありません。
(1) パワハラは「自己都合退職」ではない」
パワハラでやむを得ず退職に追い込まれた場合には、会社が自己都合退職へ誘導するための行為だった「退職強要」だった可能性があります。
またパワハラによって退職に追い込まれた場合には、自己都合で退職した場合より雇用保険の失業等給付が手厚く保護されるなどのメリットがあります。
もし会社がパワハラの事実を把握していながら雇用管理上の措置をとらなかったことが原因で離職した場合には「特定理由離職者」に当たるので、失業保険が3か月早く支給されるなどのメリットがあります。
パワハラによる退職者かどうかはハローワークで認定されますが、その際にはパワハラがあったことを証明する書類や、不当な配置転換があった際にはその事例、就業規則、労働契約書、賃金台帳などが必要になります。
(2) パワハラ被害者は損害賠償請求できる
パワハラの被害者は、パワハラの被害者を不法行為者として、損害賠償を請求することができます。また会社の使用者責任を追及して、会社に対しても損害賠償を請求することができます。
損害賠償を請求するためには、精神的苦痛を受けた慰謝料の他、退職を余儀なくされたために給料が減った場合には、その減った給料を逸失利益として請求することができます。
また会社には、労働契約上の附随義務として「就業環境配慮義務」がありますので、この義務に関する債務不履行による損害賠償請求をすることも可能です。
2. いじめ、嫌がらせ……パワハラのさまざまな類型
厚生労働省は、職場のパワハラを6つの類型に整理しています。
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1.身体的な攻撃(殴る、蹴るなどの暴行・傷害などの行為)
2.精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言など)
3.人間関係からの切り離し(隔離・仲間外れ・無視など)
4.過大な要求(業務上明らかに不要なことを命令するなど)
5.過小な要求(業務上の合理性なく、程度の低い仕事を命じるなど)
6.個人的な事への過度な干渉(過度にプライバシーな事柄に立ち入る)
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ただし、この6つの類型に当てはまらない場合でも、パワハラに該当する場合はあり、ケース・バイ・ケースで判断されることがほとんどです。
ここでは、パワハラのより具体的な事例についてご紹介します。
(1) 理不尽な配置転換
ずっと同じ職種・部署で勤務していたにも関わらず、ある時突然十分な教育訓練もないまま配置転換されたり、営業職で勤務してきたにも関わらず、突然倉庫係や警備員に配置転換させられたというようなケースの場合には、嫌がらせとしてパワハラに該当する可能性が髙いと言えます。
(2) 転居を伴う異動命令
特に理由を説明されないまま「能力不足だから、○○店に転勤してくれ」と異動命令されるなどのケースでは、命令の有効性が証明されない限りはパワハラに当たります。
(3) ほかの社員の前で罵倒する
「出来損ない」「給料泥棒」「何度言ってもできない」など、他の社員がいる前で罵倒する行為はパワハラに当たります。
なおほかの社員が見ていなくても、その行為や言動の態様によってはもちろんパワハラに当たる場合もあります。
(4)精神的に追い詰める
到底1人ではこなせないような膨大な量の仕事を押し付けたり、逆に軽微な仕事ばかりさせたり、ミスしたことについて能力不足を必要以上に追及するなどして精神的に追い込もうとする行為はパワハラに当たります。
3. 労災認定されることも
パワハラが原因で精神障害などを発症した場合には、労災認定される場合があります。
精神障害が労災と認められるには、以下の3つの条件が必要です。
- 判断指針で対象とされる精神障害を発症していること
- 判断指針の対象とされる精神障害を発症するおおよそ6か月前に、客観的にその精神障害を発症させるおそれのある「業務に寄る強い心理的負荷」があったこと
- 業務以外の心理的負荷および個人的要因によって、その精神障害が発症したといはいえないこと
過去に労災認定された事例としては、以下のケースがあります。
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過重な業務と上司のパワハラがストレスとなって脳梗塞を発症したとして、運輸会社の元社員の妻が国に労災認定を求めた訴訟で、東京高裁は「元社員を2時間も起立させたまま、叱責した」として労災を認定ました。
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労働局や弁護士に相談を
パワハラによって自己都合退職に追い込まれた場合、そのような会社の仕打ちにどのように立ち向かえばよいのでしょうか。
最も大切なのは、パワハラがあったという証拠と「指示通りに働いている」という証拠をしっかりと残すこと、そしてその悩みを1人で抱え込まないことの2つです。
パワハラの被害者をを助けてくれる人はたくさんいますし、サポート体制も整っています。
辛い状況を1人で抱え込まずに、早めに労働基準監督署、労働局、弁護士などの労災問題のプロに相談するようにしましょう。
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