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厚生労働省の調査によると、平成28年の段階で過去3年以内にパワハラを受けた、もしくは見たという人は32.5%にもなるそうです。
それほど深刻な問題となっているパワハラですが、多くの企業がその対策を打っているにも関わらずなかなか完全に解決するのは難しいようです。
その理由としては、パワハラの定義自体があいまいで気づきにくいという要因が挙げられます。
今回は、そんなパワハラについてその6つの特徴と判例に関して説明しようと思います。
1.パワハラの定義
パワハラには明確に定められた定義が存在するわけではありません。一般的な定義としては以下の3点が挙げられます。
・業務上の地位や優位性を濫用している
・業務の範囲を超えている
・職場環境を悪化させたり、相手の精神的苦痛を与えたりする行為である。
(1)業務上の地位や優位性を濫用している
パワーハラスメントという名の通り、業務上の権力を濫用している行為のことを言います。その主体は先輩や上司が挙げられます。
部下は立場の弱さからパワハラに対処することができなくなります。
(2)業務の範囲を超えている
パワハラの特徴として、業務の範囲を大幅に超越していることも挙げられます。例えば、個人的な金銭の貸し借りを求めたり、無理に飲酒を強要したりすることはパワハラだととらえられます。
部下は断ると何をされるか分からないという恐怖から、その不当な要求に従ってしまいます。
(3)職場環境を悪化させたり、相手の精神的苦痛を与えたりする行為である
パワハラは相手の尊厳や人格を著しく毀損することも挙げられます。
例えば、ちょっとしたミスに対して必要以上に叱責したり、人格を否定するような発言をしたりすることはパワハラです。
2.パワハラの6つのタイプ
パワハラに代表的なのは以下の6つのタイプです。
・身体的な侵害
・精神的な侵害
・コミュニティーからの切り離し
・過剰な仕事の要求
・過小な仕事の要求
・プライベートの侵害
(1)身体的な侵害
暴力や傷害など目に見えて分かりやすい行為です。蹴ったり殴ったりする行為の他に、立ったまま長時間英行電話をさせられたり身体的に侵害する行為全てを含みます。
(2)精神的な侵害
侮辱や脅迫、名誉棄損など言葉の暴力を用いたパワハラです。一度だけでなく、継続して行われることが多いのが特徴で、結果的に精神障害やうつ病につながることがあります。
(3)コミュニティーからの切り離し
無視や仲間外れなどコミュニティーから隔離する行為です。やっている内容が非常に幼稚なのが特徴で、席を隔離したり、みんなで無視をしたりなどどの行為が挙げられます。
(4)過剰な仕事の要求
一人では達成不可能な量のノルマを課すことです。また、達成できなければ暴力に訴えるなどに発展することも多いです。
(5)過小な仕事の要求
著しく程度の低い仕事しかやらせないパワハラです。相手が自分の職場環境を害されていると感じればパワハラになります。
例えば、毎日お茶汲みなどの雑用しかやらせないなどの行為があげられます。
(6)プライベートの侵害
個人のプライベートに過剰に足を踏み込んでくる行為も、相手が不快に感じればパワハラになります。
また、女性に対して行えばセクハラになる可能性もあります。
3.パワハラの裁判事例
(1)暴力・暴言によるパワハラによる損害賠償が認められた事例
・概要
ある消費者金融会社に勤めていた従業員3名が上司からパワハラを受けたとして、会社及び上司を起訴した。
原告によると上司から、「扇風機で強風を当て続けられる」、「暴言を浴びせられる」などの常軌を逸したパワハラを受けたとのことだった。
裁判で原告らの訴えが認められ、3名にそれぞれ60万円、40万円、10万円の損害賠償及びうつ病の治療費の支払いが上司及び会社に課せられた。
・判旨
扇風機で強風を当て続ける行為と暴言は、上記で言えればそれぞれ身体的な暴言と精神的な暴言に当たります。
これらのような行為が長期的に続けば、うつ病などの精神疾患につながりますので早めに誰かに相談することが大切です。
(2)仕事外しや隔離がパワハラと認められた事例
・概要
ある高等学校に勤務していた女性教諭が、学校から不当は仕事外し、隔離に伴うパワハラによって精神的苦痛を受けたと学校法人を訴えた。
女性教諭によると、学校から授業・担任外しに始まり、職員室内での隔離や別部屋への隔離、そして自宅研修等の命令など不当な扱いを受けたとのことだった。
結果として、学校側が行った行為は人格尊厳を著しく損なう行為だとしてパワハラが認められた。そして、学校側に女性教諭に対する1000万円の慰謝料の支払いを命令した。
・判旨
雇用主は就業規則で定められた範囲での命令は認められますが、それを著しく超えた命令は認められません。そして、その就業規則で定められた中心的な業務に就かせないというのは、本人が受容すべき程度を超えているとみなされます。
今回の場合は、学校側による一連の行為がその理由からパワハラに該当すると認められました。
4.まとめ
定義が分かりにくいパワハラですが、労働者にとっていつ自分の身に起こるかわからない深刻な問題です。そのため、労働者としてどのような行為がパワハラに該当するのかをしっかりと把握し、前もって被害を避けられるようにする必要があります。
また、
そして、もしもパワハラの被害に悩んでいるという方でしたら、被害が深刻にならないうちに他の上司や弁護士、労働基準監督署などに相談してみてはいかがでしょうか。