労働基準法では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めています。
そしてこの1日8時間、1週40時間を超えて時間外労働をさせる場合には、通常の賃金の1.25倍の割増賃金を支払うべきとしています。
しかしこの1.25倍の割増賃金の支払いがされない、サービス残業や残業代未払いなどの問題は、増加の一途をたどるばかりです。
けれども毎日積み重なっている未払いの残業代は、残業をした人が受け取るべきお金です。
「残業代を支払わないで、会社の利益を少しでも多く上げよう」とする会社の考え方は、決して許されるものではなりません。
泣き寝入りすることなく、しっかり請求していきましょう。
1. 割増賃金とは
割増賃金とは、使用者が労働者に時間外労働・休日労働・深夜業を行わせた場合に、法令で定めた割増率以上の率で算定して、支払わなければならない賃金をいいます(労働基準法37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る最低限度を定める法令)。
2. 割増賃金の対象となる賃金
割増賃金の対象となる賃金は、時間外労働、休日労働、深夜労働です。
この割増賃金の基礎となる賃金は、所定労働時間の労働に対して支払われる1時間当たりの金額です。
なおこの場合に以下の7つについては基礎となる賃金から除外することができるとされています。労働と直接関係がなく個人的な事情に基づいているというのはその理由とされています。
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(1)時間外労働
労働基準法では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めていて、これを超えて労働者に時間外労働をさせた場合には1.25倍(1か月60時間を超える時間外労働については1.5倍)の割増賃金を支払う必要があるとされています。
なお時間外労働には限度が定められており、原則として1か月45時間、1年360時間を超えてはならないとされています。
なお上記とは別に、普通会社では、独自に就業規則などで通常の労働時間を定めているものです。そしてこれは「所定労働時間」と呼ばれています。
この所定労働時間を超えて働く場合も、社内的には残業ではありますが、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えていなければ、労働基準法上は割増賃金を支払う義務はない、ということになります。
もちろん会社が就業規則で、「所定労働時間を超えて勤務した場合には残業代を支払う」と定めている場合には、社内的には残業代を請求できます。ただし、後々労働審判や労働裁判となった場合には和解を勧められて、法定の残業代については、対象から除外されるケースもあります。
(2) 休日労働
労働基準法では「原則として、1週間に1日は休みを与えられなければいけない(例外的に4週4日の休日)」と定められています。これを「法定休日」といいます。
つまり休みが週1日の労働者が、その週1回の休日に出勤したような場合には「休日出勤」になります。
そして会社は労働者に休日労働させた場合には1.35倍の割増賃金を支払わなければならないとされています。
ただし法定内の休日労働(就業規則などで決められた休日労働ではあるが、法律で定められた休日労働にはあたらない場合)の割増率は、1.00となります。
(3) 深夜労働
労働基準法では、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間においての労働を深夜労働としていて、その時間に労働させた場合には1.25倍の割増賃金を支払わなければならないとしています。
ですから、たとえば時間外労働で、なおかつそれが深夜労働となる場合には、時間外労働の割増率と深夜労働の割増率を合算し、1.5倍の割増賃金を支払う必要があります。
また休日労働で、なおかつそれが深夜労働となる場合には、休日労働の割増率と深夜労働の割増率を合算し、1.6倍の割増賃金を支払う必要があります。
3. 時間外労働にならないケース
個人的な理由で早出した場合や、週の間に祝日がある場合には、時間外労働とならないケースもあります。
(1) 個人的な理由の場合
「通勤ラッシュが苦手」「朝型だから早く出勤したい」などの個人的な理由で自ら朝早く出勤しているような場合は、時間外労働には当たりません。
しかし会社から命じられて早朝出勤した場合には、それは残業にあたります。
(3) 出張による移動時間
出張先に直行する場合の移動時間や出張先から直帰する場合の移動時間は、労働時間にあたらないと解釈される場合があります。ただし、その出張が、物品の運搬を目的とする出張などで会った場合には、労働時間に該当する可能性もあります。