残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2018.09.12

え?管理職ではなかったの?名ばかり管理職は管理監督者に該当しない?その役職、残業代が請求できるかも!

「管理職だから残業代は出ません」と思っている方は多いと思います。

そうです、労働基準法では「管理監督者」は割増賃金(残業代)を支給する必要がないことになっています。その結果、最初に書いたように「管理職だから残業代はでません」という話題になります。

しかし、あなたの役職は本当に管理職ですか?会社が管理職という名前をつけただけの「名ばかり管理職」ではありませんか?

管理監督者に該当しない「名ばかり管理職」の場合には、割増賃金(残業代)を請求することが出来る可能性があります。

1.労働基準法が定める「管理監督者」の定義

管理監督者は労働時間などでの制限を受けないことが前提になっているため、時間外労働に対する割増賃金の支給対象外となります。(深夜手当は支給されます。)

管理監督者=管理職というイメージが強いですが、会社が与えているポジションや役職名で管理職とするわけではありません。労働基準法では、職務内容やその方の責任・権限、勤務態様、待遇などによって管理監督者かどうかを判断しています。

労働基準法が示す「管理監督者」は以下の4つの要件を満たしている必要があります。

経営者と一体的な立場で仕事をしている

出社、退社などの勤務時間について厳格な制限を受けていない

採用や人事考課などの権限を持っている

基本的には上記の4つに該当する場合には、管理監督者という扱いになり、残業代の支給対象ではないということになります。会社によっては必ずしも上記の条件に当てはまるというわけではありませんが、上記が管理監督者の基本的な考え方と思っておきましょう。

2.名ばかり管理職の割増賃金を巡る裁判の判例

以下は、過去の家庭裁判所の判例です。どの事例も会社側は役職者として地位を与えていますが、その実態が管理監督者に該当しないというケースが多く見受けられます。

(1)地方銀行割増賃金等請求

地方銀行で支店長代理相当職という肩書で仕事を任されていた方の判例です。裁判の争点は「時間外労働に対する割増賃金支払義務の存否」でした。

支店長代理相当職が管理監督者に該当するかどうかという点がポイントになります。

この支店長代理相当職の方は、銀行側の定めた就業時間に従う必要があり、勤務時間に対しての自由裁量権をもっていませんでした。また、人事や銀行内の機密事項に関与していた事実もなく、経営者と一体となって経営をしていたとは言えないという判断から、管理監督者には該当しないという判決になりました。

(2)レストラン店長割増賃金等請求

ファミリーレストランで店長として働かれていた方の判例です。この裁判の争点も「時間外労働に対する割増賃金支払義務の存否」でした。

店長というポジションが管理監督者に該当するかどうかという点がポイントになります。

店長としてお店の従業員の統括や採用の一部には参加していましたが、従業員の労働条件等は経営側が決めており、店長の職務も、店舗で従業員と同じようにサービスに務める必要があり、経営者と一体的な立場にあるとは言い難い状況でした。

また、店長は店舗の営業時間に拘束されているため、出退勤の自由もありませんでした。その結果、管理監督者には該当しないという判決になりました。

(3)管理監督者と判断された判例

関西の医療法人で人事第二課長として働かれていた方の判例です。この裁判の争点は「時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金支払の存否」でした。

人事第二課長というポジションが管理監督者に該当するかどうかという点がポイントになります。

この人事第二課長は、看護師の募集業務で本部や他の病院の人事関係者の指揮命令を行う権限が与えられており、採用の決定や配置など労務管理に関しては経営者と一体的な立場でした。また、タイムカードの打刻は行っていましたが、労働時間に関しては自由裁量となっており、時間外手当に変わる特別手当等が支給されていたという点から人事第二課長は管理監督者であるという判決となりました。

3.あなたは大丈夫?名ばかり管理職のチェックポイント

上記でご紹介した判例をみていただくとわかるように、役職やポジションが与えられていても、その内容が労働基準監督署の示す管理監督者に該当しない場合には、「なばかり管理職」となり、割増賃金の対象となる可能性があります。

以下の名ばかり管理職のチェックポイントをまとめています。1つでも該当する場合には「名ばかり管理職」が疑われます。

―名ばかり管理職かも?7つのチェックポイント-

□ 自分のお店や支店、所属部署内での意思決定を行う事ができるが、会社や本社の経営方針に対して意見を言うことができる立場ではない。

□ 経営者など上が決めた指示を部下に伝えるだけであり、会社の重要事項を決める会議等への出席は出来ない。

□ 社員等の募集・採用に関して、可否を決める最終的な権限はもっていない

□ 実務上ではリーダー的な役割を担っているが、部下の人事考課や異動への関与はない

□ 遅刻をした場合、賃金が控除される

□ 一般社員と比較して高い賃金を貰っているとは言えず、残業代が出ないことにより賃金が下がったと感じる

□ 役職手当が少ない(~3万円程度)

4.名ばかり管理職の未払い残業代はどうやって取り返す?

自分は名ばかり管理職ではないか?!と思ったら、まずは会社と話し合いをしましょう。

それでも改善されない場合には、労働基準監督署に相談します。それでもダメなら、弁護士に相談しましょう。どの場合であっても、きちんとした証拠を揃えておく必要があります。

未払い残業代を請求するための証拠

上記のような記録がない場合には、手書きで勤務時間を記録しているものや、ご家族に帰宅時間を知らせているメールなども証拠となる可能性があります。

ご自身が時間外労働を行っていたということを証明できる記録はすべて証拠としてとっておきましょう。

5.管理職でも深夜労働は手当が支給されます!

深夜労働とは22時~翌朝5時までの間の労働を言います。この時間帯に仕事を行う場合には、深夜手当として割増賃金を支払う必要があります。

労働基準法にもきちんと記載されています。

引用:労働基準法第37条第4項

使用者が午後10時から午前5時までの間において労働させた場合においては、その時間の労働については通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払われなければならない。

深夜手当は残業代とは異なる手当です。

管理職だから残業代は出ないという場合でも、22時~翌5時までの間に業務を行う必要がある場合には、深夜手当が支給されることになります。

まとめ

会社で決められた役職が管理職という扱いだから残業代は支給されないと思っている方が多いと思いますが、労働基準法は会社で定めた役職名ではなく、職務の実態によって管理監督者を判断しています。

もし、ご自身が「名ばかり管理職」なのではないかと疑問を持った場合には、会社にしっかりと確認することも大切です。

また、未払いの残業代には2年という時効があります。残業代の請求をきちんと行うためには証拠を準備しておくことも大切です。ご自身が働いた分のお給料はしっかりと支給してもらえるように準備しておきましょう。

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