残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2017.08.01

残業代を請求する時に必要な証拠

労働基準法32条の「1日8時間、週40時間」を超えて労働させた場合には、会社は労働者に、法律上、時間外の割増賃金を支払う必要があります。

そしてこの時間外割増賃金を計算するためには、タイムカードや出勤簿、給与明細などからまず残業した時間を算出して、計算する必要があります。

「給与明細を捨ててしまった」「会社が出勤簿を見せてくれない」などの理由で、未払いの残業代を請求することは無理だ……とあきらめてしまう方もいらっしゃいますが、タイムカードや出勤簿、給与明細以外にも、残業代の証拠にできる資料は多々あります。

早めに弁護士に相談して、何が証拠になるのかアドバイスを受け、未払いの賃金を取り戻しましょう。

1, 残業代請求に必要な証拠

労働基準法で定められた労働時間である「1日8時間、1週間40時間」を超えて、労働者を労働させた場合には、使用者は基礎賃金の1.25倍以上の割増賃金(残業代・残業手当・時間外手当などとも呼ばれます)を支払わなければならないとされています。

そして未払い残業代・残業手当・時間外手当を請求するためには、使用者との間で所定労働時間に関する労働契約が締結されていたことと、1日8時間1週間40時間を超える労働をしたことを主張するために、さまざまな証拠を提示しながら立証する必要があります。

労働時間や時間外労働を立証するために必要となる証拠については、タイムカードや出勤以外にも多々あり、裁判例も蓄積されています。

証拠類については「これがあれば有効となる証拠」とか「必ず必要になる証拠」というものはありません。

個々の状況や、客観性、信用度から判断されるものですから、早めに弁護士に相談してアドバイスを受けるようにしましょう。

(1) タイムカード

タイムカードは、労働時間や時間外労働を立証する資料の典型例といえます。

 

使用者には、労働時間の安全配慮および賃金算定義務などの関係から、労働時間を把握する義務がありますし、タイムカード・出勤簿などを、最低3年間保存しておく義務があります。

 

未払いの残業代が問題となった際に、まれに会社側から「タイムカードは出退勤を管理しているだけに過ぎない、実際の労働時間はタイムカードとは違う」と主張されることがありますが、過去の裁判例ではタイムカードは証拠としての価値を高く認めています。

(2) 労働時間管理ソフト

IT環境の普及により、労働時間管理ソフトがタイムカードの代替とされることも多くなりました。

しかし労働時間管理ソフトは、勤務時間を自分で入力するものや、パソコンの起動と共に時刻が自動で入力されるものなど、ソフトによってしくみが異なりますので、その点は注意が必要です。

ただし労働者が労働時間を入力し、それが管理ソフトに反映されるためには、上司の承認を必要な場合には、客観性の高い資料として認められる可能性が高いでしょう。

(3)入退館記録

複数の企業が入居している大規模なビルの場合には、セキュリティ対策として、警備会社に警備を委託している場合があります。

そしてその警備会社が、労働者の入退館時刻を明らかになる資料を持っていれば、客観性の高い証拠資料となりえます。

 

裁判例では「勤務状況報告表から算出される平均勤務終了時刻と、管理員巡察実施報告書上の退館時刻との差は、実際には、残業に充てられていたものと認めるのが相当」として、警備会社の管理員の巡察実施報告書を、証拠として認めた判例があります(電通事件・東京地判・平成8年3月28日)。

(4) パソコンのログイン・ログアウト時間

パソコンを使う仕事の場合には、パソコンのログイン・ログオフ時間で、労働時間を立証できる場合があります。

ただし使用しているパソコンがノートパソコンで、自宅に持ち帰ることができるような場合には、「職場で仕事をしていた」と言えない場合もあります。

この場合には、パソコン起動時間中に労働していたことを、他の資料などから補強する意味で、立証する必要があります。

(5) メールの送信時刻

メールの送信時刻も、実労働時間の証拠になる場合があります。

しかし、メールを職場のパソコン以外からも送信できるような場合には、証拠とされない場合があります。

このような場合には、別途「そのメールは職場内から返信した」と立証できるような客観的な事実や、メールを送信した時間まで仕事をしていた、という事実を立証する必要があります。

(6) 給与明細書

給与明細書には、総労働時間や所定外労働時間数の合計が、印刷されている場合があります。

このような場合には、給与明細書の総労働時間の記載から、残業時間を推測できる場合があります。

(7) 開店・閉店時刻

飲食店、美容院、ショップなどでは、その店舗の開店時間と閉店時間で、労働時間を立証できる場合があります。

ただしこの場合には、開店から閉店までその労働者が仕事をしていたという前提が必要です。

(8) シフト表

飲食店、美容院、ショップなどではシフト制で勤務する場合がよくありますが、その際に作成されるシフト表が、労働時間の立証に役立つこともあります。

(9) 労働者のメモ書き

使用者(会社)側が時間管理をまともに行っていない場合には、労働者が自分で労働時間をメモするのも証拠となる場合があります。

メモの場合には、そのメモだけで証拠とするのは難しく、他にそのメモの信用性を立証する資料が必要となる場合がほとんどです。

 

過去の判例では、「労働者の手帳の記載は、Suika(スイカ)の利用明細及びオフィスの入退室記録によって信用性が補強される」として、労働者のメモを証拠として認めた判例があります(HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド賃金等請求事件・東京地判・平成23年12月27日)。

2. 証拠になる資料がない場合

給与明細やタイムカードを紛失してしまい、未払いの残業代を請求したくても証拠がないというケースもあるでしょう。

証拠を紛失してしまった労働者が、使用者に給与明細の再発行や必要資料の提供を求めても、使用者がこれに応じない……という方もいます。

 

しかし使用者が合理的な理由もなく、これらの資料を提出しない場合には、公平の観点から「合理的な推計方法」をとり、労働時間を算定するとした裁判例もあります(スタジオツインク事件・東京地判・平成23年10月25日)。

 何が証拠になるかは早めに弁護士に相談を

これまでご紹介してきたとおり、何が証拠になるのか、その証拠を補強するために必要な資料は何なのかは、個々の労働状況や労働時間について異なります。

 

残業代の時効は2年なので、早めにこれらの証拠を準備して、請求手続きをとる必要があります。

 

未払いの残業代を取り戻したいと考えている方は、早めに弁護士に相談して証拠資料を準備し、必要に応じて弁護士から会社側に必要資料を提出するよう求めていくなどの交渉してもらうなどするとよいでしょう。

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