残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2017.07.23

    基本給から残業代を計算する

    賃金(給与)には、労働の対価として支給される賃金の他、個人的な事情にあわせて支給される手当があります。

    個人的な事情にあわせて支給される手当とは、家族手当や役職手当などのことで、基本給とは、家族手当や役職手当など各種手当を含まない賃金のことをいいます。

    残業代を計算する際には、この基本給(基礎賃金)の額を基にします。

    ここでは、基本給から残業代を計算する方法をご紹介します。

    1.残業代とは

    使用者(会社)は、労働者に労働基準法で決められた法定労働時間「1日8時間、1週間40時間」を超えて労働させた場合や、午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働させた場合、または法定休日に労働させた場合には、残業代を支払う必要があります。

    そしてその場合には、所定の賃金に一定割合上乗せした賃金(割増賃金)を支払わなければなりません。

    残業には「法律で定める残業」と「就業規則で定める残業」の2種類がありますが、法律上割増賃金を支払う必要がある残業は、労働基準法で決められた「法定労働時間」を超えた残業です。※なお「就業規則で定める残業」についても、社内的には残業代を請求することはできます。

    (1) 割増率とは

    割増賃金の割増率は、以下のとおり時間帯によって異なります。

    * 時間外労働…25%以上

    * 深夜労働…25%以上

    * 時間外労働(月60時間を超えた場合)…50%以上

    (※当面は大企業のみに適用・中小企業は適用除外)

    * 休日労働…35%以上

     

    * 時間外労働が深夜まで及んだとき…50%以上

    * 休日労働が深夜まで及んだとき…60%以上

    (2)基本給から残業代を計算する

    それでは基本給と割増率を把握したら、その後どのように残業代を計算すればよいのでしょうか。

    ここでは、大まかな残業代の目安となる金額を知るための計算式を紹介します。

    ただし、次の式はあくまで目安ですので、正確なものではありませんし、就業規則等の定めによっては、金額が異なるケースも多々あります。

    未払いの残業代を請求したいと考えていて、大まかな残業代の額を知りたいという人は、早めに弁護士に相談して、就業規則や細かい計算式について確認おくとよいでしょう。

    (3) 基本給を確認する

    残業代の計算は、家族手当や通勤手当を除外した基本給(基礎賃金)から計算しますので、まずはこの基本給を確認する必要があります。

    給与明細の支給欄は、「基本給」と明記されて金額が記載されているはずです。

    なお、基本給(基礎賃金)は、残業代を計算する場合だけでなく、賞与算定の時にも基礎となる場合がほとんどです。

    給与というと「差引支給額」しか興味のない人も多いのですが、ご自身の基本給はきちんと把握しておきましょう。

    (4) 諸手当を除外する

    賃金(給与)には、労働の対価として支給されるものの他、個人的な事情にあわせて支給されるものがありますが、残業代や賞与を算定する時には、労働の対価として支給される基本給(基礎賃金)を基に計算します。

    個人的な事情にあわせて支給される家族手当や通勤手当まで、残業代や賞与の計算の基礎としてしまうと、労働者間で不公平が生じてしまうからです。

    たとえば通勤手当の例で考えてみます。

    会社から遠いところに住んでいる人ほど通勤手当が多くなるはずですが、この通勤手当も算の基礎としてしまうと、会社の近くに住んでいる人と比べて遠くに住んでいる人の方が、割増賃金の計算の額が高くなってしまうので、労働者間に不公平が生じて問題があります。

    このような事情から、個人的な事情にあわせて支給される賃金は、残業代や賞与の計算の基礎となる賃金から除くことになっています。

    除外される手当には、家族手当、通勤手当、子女教育手当などがありますが、労働者全員に一律に支給されている手当(月一律2万円の住宅手当など)については、割増賃金の計算の基礎賃金に含まれます。労働者に一律に支給されている賃金であれば、割増賃金を計算する際の基礎賃金としても、労働者間で不公平感が生じないからです。

    (5) 所定労働時間・所定休日を確認する

    所定労働時間とは、会社が法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)の範囲内で定めた労働時間の事をいいます。

    所定休日とは、会社が法定休日(毎週1日以上、あるいは4週間を通じて4日以上の休日)の範囲内で定めた休日の事です。

    所定労働時間や所定休日は、会社の就業規則や雇用契約書に規定されていますので、残業代を計算する前に確認しておきましょう。

    (6) 1時間あたりの賃金を算出する

    残業代を計算するためには、給料の支払い方法が月給制でも日給制でも、まずは1時間あたりの賃金を基礎とします。

    1時間当たりの賃金を算出したら、それに割増率をかけて割増賃金(残業代)を計算します。

    残業代=時間単価×残業した時間×割増率

     

    * 時間給

    時間給とは、「1時間あたりいくら」で仕事をする勤務形態で、主にパートやアルバイトの場合では、時間給で労働するケースが多いようです。

    時間給=1時間あたりの賃金

     

    * 日給

    日給とは「1日あたりいくら」で仕事をする勤務形態です。

    日給の場合には、日給を1日の所定労働時間で割って1時間あたりの賃金を計算します。

    日給÷1日の所定労働時間=1時間あたりの賃金

     

    * 月給

    月給とは、「1か月あたりいくら」で仕事をする勤務形態です。

    月によって労働日数や労働時間が多少異なっても、原則として毎月同じ額の給与が支払われることになります。

    会社員や公務員の場合は、ほとんどこの月給制で給与を支払われています。

    月給の場合には、月給の額を1か月の所定労働時間で割って1時間あたりの賃金を算出します。1か月の所定労働時間は、1日の所定労働時間に1か月の所定労働日数をかけた時間です。

    月給÷1か月の所定労働時間=1時間あたりの賃金

     

    ただ月給の場合には、1か月の所定労働時間が月ごとの祝日などの関係で、変動します。

    ですからその月ごとに所定労働時間を計算してしまうと、毎月の給与の額は同じなのに、割増賃金の単価が毎月違うことになってしまいます。

     

    そこで1年を通じて1か月の平均所定労働時間を計算して、月給を1か月の平均所定労働時間で割って求めた金額を、1時間当たりの賃金として扱います。

    (7)基本給からの計算例

    前述した計算方法に従って、以下のAさんの残業代を計算してみましょう。

    ——————–

    会社員Aさん

    所定労働時間:7時間30分

     

    基本給は200,000円

    通勤交通費10,000円

    家族手当5,000円

     

    所定時間を超えた法定時間内残業が10時間

    法定外普通残業時間が10時間


    1. まず、残業代に含まれる賃金は基本給のみなので、通勤交通費及び家族手当は、基礎賃金からは除外します。

     

    1. 1時間あたりの賃金を算出します。

    まず1か月あたりの労働日数を20日すると、基本給÷20日で1日あたりの賃金は10,000円となります。

    この会社の所定労働時間は、7時間30分ですので、1時間あたりの賃金=10,000円÷7.5時間=1,334円となります。

     

    1. 所定時間を超えた法定時間内残業代と法定時間超えた残業代を仕訳けします。

     

    所定労働時間を超えて働く場合でも、それが「1日8時間、1週間40時間」の法定労働時間を超えていない場合には、法律上の時間外労働には当たらないので、法律上は、割増賃金を支払う必要はないからです。

     

    Aさんの場合には、10時間分は法定時間内残業代として通常の賃金を支払えばよいことになり、1,334円×10時間=13,340円となります。

     

    「1日8時間、1週間40時間」の法定労働時間法定時間を超えた時間は、1.25倍以上の賃金支払いが義務付けられていますので、1,334×1.25倍=1,668円となります。

    よって、法定労働時間を超えた残業代は、1,668円×10時間=16,680円

     

    以上から、Aさんの残業代合計は30,020円(13,340円+16,680円)となります。

    この記事を共有する
    Share on Facebook
    Facebook
    0Tweet about this on Twitter
    Twitter
    Share on LinkedIn
    Linkedin
    弁護士の無料相談実施中!
    当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には弁護士にご相談頂いた方がよい可能性があります。 050-5212-3326

    (対応時間 平日9時~19時)

    弁護士法人エースパートナー法律事務所
    所属:神奈川県弁護士会、東京弁護士会