残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2017.07.24

営業職に残業代が出ないのは違法?

営業職など主に会社の外で仕事をする人や、研究・開発職など、使用者(会社)の具体的な指揮監督が及ばない職種の場合には、労働時間を算定するのが困難であったり、労働時間で管理することが合理的ではない場合があります。

労働基準法では、このような仕事をしている人たちについては、会社が労働時間の管理をしないで、「所定労働時間勤務したもの」とみなしてもよいことにしています(みなし労働制・労働基準法38条の2第1項)。

しかしみなし労働制が適用されていれば、すべてのケースで残業代を支払わなくてもよいということではありませんし、深夜労働や休日手当には割増賃金が必要です。

1. みなし労働制とは

営業職や特殊技術の研究・開発職など、会社が労働者の労働時間が把握しづらい職種については、所定労働時間勤務したものとみなすことができるとしています。これを「みなし労働制」といい、労働基準法38条の2第1項で規定されています。

(1) 事業場外労働(営業職など)

一日うちほとんどを会社外で費やす営業マンは、使用者や上司の目の届かないところで労働していますので、労働時間を細かく算定するのが困難な場合や、労働時間を管理することが合理的ではない場合があります。

そこで労働基準法38条の2第1項では、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。」と規定して、労働時間で管理することなく、所定労働時間働いたと「みなす」事ができるとしました。

しかし事業外労働でみなし労働制が適用されているすべてのケースで、当然に残業代を支払われないでよいというわけではありません。

(2) 専門業務型裁量労働制(研究・開発職など)

特殊な技術などを研究・開発している場合など、出勤時間や退社時間などを労働者が自分の裁量で決めている場合には、労働時間で管理することが合理的ではないという理由で、みなし労働制が適用される場合があります。

2. みなし労働制が適用されるための要件

営業職として、みなし労働制が適用されるためには、事労働時間を算定しづらい職種であることのほか、主に下記のような要件が必要です。

* 協定書の提出

* 「事業場外」で労働したこと(営業職の場合)

* 労働時間を算定するのが困難であること

(1) 協定書の提出

みなし労働を適用するためには、三六協定と同様に「労働組合もしくは従業員の過半数を代表する社員と交わした協定書等」を労働基準監督署に届けておく必要があります。

なおこの協定書には「1日○時間働いたものとみなす」と明記しておくことが必要です。

(2) 「事業場外」で労働したこと(営業職の場合)

営業職でみなし労働を適用するためには、労働者が事業場外(会社外)で労働を行い、労働者が自分の裁量で出勤時間や退社時間、昼休みなどの時間配分を決めている、という実態が必要です。

(3) 労働時間を算定するのが困難であること

みなし労働を適用するためには、使用者が実労働時間を把握し算定するのが困難であることが必要です。

たとえば出勤時間や退社時間が決まっていて、使用者が実労働時間を把握し算定することが可能である場合には、みなし労働を適用することは認められません。

この点について旧労働省では、以下のような場合はみなし労働制が否定される可能性が高いとして、下記の判断要素を示しています。

* 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーのなかに労働時間を管理する者がいる場合

* 事業場外で従事するが、無線やポケットベル等で随時使用者の指示を受けながら労働している場合

* 事業場で訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その御事業場に戻る場合

3.みなし労働と認定されない場合

必要な要件が備わっていないにもかかわらず「営業職は、みなし労働制だから残業代は支払わない」としている会社は、非常に多いのが実情です。

とくに下記のようなケースでは、みなし労働制とされている営業職でも割増賃金を請求することができる可能性が高いので、労働問題に詳しい弁護士に早めに相談するとよいでしょう。

* 自由裁量の実態がない場合

* みなした時間以上働いた場合

* 深夜労働や休日労働

(1)自由裁量の実態がない場合

前述したとおり、みなし労働制が適用されるためには、使用者が実労働時間を把握し算定するのが困難であることが必要ですが、実際には営業職でも他の社員と同様に朝9時に出社し、打ち合わせが終わるたびに上司に報告をしている場合や、帰社後事務処理を行っているなど、自由裁量の実態があるとはいえないケースがあります。このようなケースでは、みなし労働制は適用することができません。

とくに使用者の事前の指示があり、その指示が具体的であればあるほど「使用者の具体的指揮監督が及んでいる」といえますので、「労働時間の把握・算定が困難であるから、みなし労働制とする」とはいえないケースがほとんどでしょう。

(2) みなした時間以上働いた場合

労働者がみなした時間以上働いた場合には、その超えた時間について、残業代を支払う必要があります。

(3) 深夜労働や休日手当には割増賃金が必要

みなし労働制の協定を結んでいる場合でも、深夜労働や休日労働は、もともと労働時間として想定されていない労働時間です。

したがって深夜労働や休日手当については、割増賃金を支払う必要があります。

この記事を共有する
Share on Facebook
Facebook
4Share on Google+
Google+
0Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin
弁護士の無料相談実施中!
当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には弁護士にご相談頂いた方がよい可能性があります。 050-5212-3326

(対応時間 平日9時~19時)

弁護士法人エースパートナー法律事務所
所属:神奈川県弁護士会、東京弁護士会