朝型勤務、19時退社… 大企業が行っている過労死対策の事例5つを紹介します。

朝型勤務、19時退社… 大企業が行っている過労死対策の事例5つを紹介します。 過労死
過労死

長時間労働や心身のストレスなどによって引き起こされる過労死。「働き方改革」が叫ばれる昨今、企業にとって過労死への対策は急務となっています。今回はそんな過労死について対策を行っている企業とその事例5つをまとめました。

1.伊藤忠商事―朝型勤務の奨励―

総合商社は一般的に労働時間が長く、残業が蔓延している業界だといわれています。そんな中でも五大商社の一つである伊藤忠商事では、「朝型勤務」というユニークな方法をとることによって、長時間労働の削減に取り組んできました。

伊藤忠商事では、20時以降の残業を「原則禁止」、22時以降の残業を「禁止」とし、その代わりとして朝早くきて勤務を開始し、残業せずに早めに帰る「朝型勤務」を奨励しています。5時から8時の朝の時間帯は割増賃金として通常の150%の賃金がもらえ、また社内でパンなどの朝ごはんを食べることもできるそうです。

この対策の結果、導入前では30%あった20時以降の残業率を5%にまで下げることができ、過労死の大きな原因となっている長時間労働を減らすことができました。

伊藤忠商事:「朝型勤務」制度の導入

2.大和証券―19時退社を徹底する―

証券業界も、総合商社と同じく激務で、ストレスを感じやすい業界であるといわれています。国内2位の証券会社である大和証券は、2007年から19時に退社をすることを徹底し、従業員の過重労働を防いできました。

またこの19時退社は、業務効率の向上にも大きく役立っています。この制度が導入されるまで、証券マンは大して仕事がなくても夜中終電まで残業する、ということが普通に行われていました。この無駄な残業を減らすことで、残業代が削減され、従業員が集中して働くことができるようになりました。月の平均残業時間は20時間台に抑えられています。

この19時退社は10年前から始まり、社長からのトップダウンで施行されて徹底されてきました。働き方改革が急がれる現代においても、この施策は先進的な取り組みとして、評価されてきています。

大和証券:当社グループの制度や取り組み

3.大成建設―新国立競技場の現場に医療スタッフを常駐させる―

2017年、新国立競技場で23歳の男性が過労死する痛ましい事故がありました。この過労死は、厳しいタイムスケジュールからくる1か月に200時間近くという残業により、心身が疲弊してしまったことが原因だとされています。また、新国立競技場の建設に携わっていた企業81社が、長時間労働などの問題で東京労働局から是正勧告を受けるなど、長時間労働が常態化していました。

この事故を受けて、新国立競技場建設の受注業者の一つである大成建設は、従業員の健康を守る目的で、医師や看護師を配置するなどの取り組みを行っています。看護師が常駐し、医師も週2回ほど訪れる「健康相談室」を設置し、現場の労働者がいつでも健康に関して相談をできる環境を整備しました。またその他にもストレスチェックや休憩所の設置など、従業員が健康に働けるための施策を行っています。

長時間労働を是正するだけでなく、心や体に問題を抱えた従業員がいつでも相談できる環境を作ることも、過労死の防止に大切な要素です。

大成建設:新国立競技場整備事業における健康管理に係る取組について

4.SCSK―残業を減らせば、その分だけ残業代を出す―

SCSKはITベンダーの企業であり、長時間労働やブラック企業が問題視されているIT業界で、働き方改革を成功させた企業です。

同社では2013年から、月に20時間以下の残業、年に20日以上の有給取得を促す「スマートワーク・チャレンジ20」という運動を行いました。この運動の一環として残業・有給取得の目標を達成した社員にボーナスを出したり、全社で一斉に有給休暇を取得する日を設定したりといった施策を行いました。この運動によって月平均残業時間を35時間から18時間に、一年の平均有給取得日数を13日から18日に改善することができました。

この施策の大きな特徴は、「削減した給与を従業員に還元する」ということを前提に行われているという点です。残業すれば残業代がつくため、従業員の中には多少無理をしてでも稼ぐために残業しようという人も出てきます。そこで削減した費用を従業員に再分配するという姿勢をとることによって、働き方改革が社員に受け入れやすい体制を整えることができました。

SCSK:当社の「働き方改革」

5.三菱地所―健康経営宣言―

丸ビル等を手がける不動産会社である三菱地所は、従業員の健康を守って活力ある職場を作るという、「健康経営宣言」を行動憲章として設置しています。

施策としては、健康増進用のアプリを利用し、従業員とその家族の健康上の問題について、人工知能を用いた診断を行うことができる環境を整備しています。また社内で働き方や食事に関するセミナーを開催し、従業員が自分の健康に対して十分に理解できるような体制を整えています。

このように従業員が自身の体調について把握することで、過労死のサインを見逃さないようにすることを目指しています。

三菱地所レジデンス:健康経営宣言

まとめ

いかがでしたでしょうか。過労死を引き起こしてしまった企業は損害賠償を請求されるばかりか、社会的イメージを大きく悪化させてしまうことになるため、多くの企業が過労死の防止対策に取り組んでいます。

また、従業員が健康に働き、無駄な残業をしないことで辞める人が減り、効率をアップさせるにもつながるため、積極的に「働き方改革」を導入する企業も増えています。

今回紹介したのは大企業ばかりでしたが、中小企業やベンチャーなどでも従業員が健康に働けるよう、施策を打っている企業は数多くあります。企業選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。

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