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「横領罪」という言葉そのものは聞いたことがある方も多いことでしょう。しかし、横領罪にはどのようなものがあって、どれくらいの罪になるのかまではきちんと理解している人はそれほど多くないようです。
そこで今回は、横領罪についてその内容や逮捕された場合の罪の重さについて説明していこうと思います。
1.横領罪とは
横領とは自分が管理していた他人の物を不正に取得することをいいます。わかりやすい例でいえば、他人から借りていた車をそのまま借りパクしたり転売してしまったりすれば横領罪となります。
横領罪には単純横領罪と業務上横領罪、遺失物等横領罪の3つの種類があり、それぞれ内容や罪の重さが異なります。
2.単純横領罪
(1)単純横領罪とは
単純横領罪とは私生活において、自分が管理している他人のものを不正に取得することです。上記の車の例のようにいわゆる「借りパク」をすれば単純横領罪となります。
(2)量刑
刑法において、単純横領罪の量刑は「5年以下の懲役」となっております。罰金刑の制度はなく、懲役刑のみの比較的重い量刑となっております。罰金刑がない理由は、横領などの金銭が絡む犯罪を起こす人は貧困などの経済的な理由で起こすことが多いため、罰金刑を定めても支払う能力がないとみなされているからです。
3.業務上横領
(1)業務上横領罪とは
業務上横領とは、仕事上の都合で自分が管理することになっている会社の財産を不正に取得することです。業務上とは、事務などの継続的に行われていることをいいます。
具体例としては、会社の経理担当者が帳簿を改ざんして利益の一部を不正に取得したりすることが挙げられます。業務上横領は何度も継続して行われることが多く、不正が明らかになった時には、被害額が数億円にもなることがあり、告訴したとしてもすでに使い切っていて弁済を求める事が難しくなっていることが多いです。
(2)量刑
業務上横領罪の量刑は「10年以下の懲役」と定められており、単純横領罪の場合よりも重い量刑になっております。それは、業務上という信頼によって結ばれた関係によってそれに対する責任も重いとされていることに加えて、単純横領罪よりも被害額が大きくなりやすいことから抑止力として機能させるためです。
4.遺失物等横領罪
(1)遺失物等横領罪とは
遺失物等横領罪とは遺失物または漂流物などの所有を離れたものを不正に取得することです。いわゆる「ネコババ」をすることです。
具体例としては、道に落ちていた誰のものなのかわからない財布を拾って自分のものにしてしまえば遺失物等横領罪となります。
(2)量刑
遺失物等横領罪の量刑は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」となっております。遺失物等横領罪の場合は罰金材も定められており、起訴された場合はほとんどが罰金刑となるようです。
5.その他の犯罪との違い
横領罪と紛らわしい犯罪の種類に窃盗罪と詐欺罪そして背任罪があります。
(1)窃盗罪との違い
横領罪と窃盗罪の違いは、対象物を占有している人に違いがあります。
横領罪の場合は自分が占有している他人の物を不正に取得することであるのに対して、窃盗罪の場合は他人が占有している他人の物を奪うことです。
(2)詐欺罪との違い
詐欺罪は相手を騙して他人の物を奪うことです。横領罪との違いは「騙す行為」があったかどうかであり、「騙す行為」があった場合は詐欺罪でなければ横領罪になります。
この場合の「騙す行為」の基準は、騙したことで相手のものが自分のものに移ったかどうかです。
(3)背任罪との違い
背任罪は自分や他人の利益のために、会社からの命令に背いて会社の財産に損害を与える事です。横領罪と背任罪との違いは被害の対象物にあり、横領罪の場合は特定の財産自体が被害に遭うのに対して、背任罪では会社の財産全体が被害に遭います。
まとめ
一口に横領罪と言っても、横領罪には3つの種類があり、それぞれ逮捕された場合の量刑が変わります。普段何気なく使っている「横領罪」という言葉も、その意味を深く理解すればニュースなどを見る時には参考になるかと思います。