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上司のパワハラ(嫌がらせ、いじめなど)が原因で退職するケースが増えています。
パワハラが原因で辞める場合、もし特定受給資格者と認められれば失業保険を早く受け取ることができる可能性があります。
しかし、パワハラの被害に遭ったのに、泣き寝入りしてしまうことはありません。
確かに上司のいじめに我慢し続けて働いても、心身のバランスを崩してしまうこともあるので、退職することは正解かもしれません。
それでも退職すれば、働く人は生活のための給料をもらうことができなくなり、生活が脅かされることもあるのです。
それにパワハラの被害に遭ったことを立証できれば、慰謝料を請求することもできます。
ここでは、上司のいじめで退職した場合の注意点についてご紹介します。
1.「いじめで退職」は自己都合?
上司や同僚から、嫌がらせやいじめを受けて退職した場合には、特定受給資格者に該当する可能性があります。
そして特定受給資格者に該当すると認定された場合には、単なる自己都合退職より手厚い給付を受けることができます。
(1) 特定受給資格者とは
退職理由は大きく分けて「自己都合退職」と「会社都合退職」がありますが、この退職理由によって給付制限があったり給付日数が大きく変わったりしますので、注意が必要です。
例えば自己都合退職の場合には、実際に失業保険が支給されるまで待期期間7日間+3か月の給付制限があり、この間は失業保険の支払いが一切されません。
しかし会社都合退職の場合には、労働者の都合ではなく急に失業した状態になるケースが多いため、この3か月の給付制限がありません。
しかし退職理由が自己都合退職であったとしても、パワハラやセクハラなどやむを得ない理由があって退職せざるを得なかったようなケースは「特定受給資格者」として、解雇や倒産のような会社都合退職と同じ給付を受けられることになっています。
とは、「正当な理由のある自己都合退職」のことです。
会社が民事再生や会社更生の申立てを行なったことを知って、それを理由に自ら退職したケース、通勤するのに片道5時間もかかるような場所に会社が移転してしまったケース、セクハラやパワハラの被害に遭った場合もこの特定受給資格者に該当します。
厚生労働省では、「特定受給資格者の範囲」を以下に規定していますので、チェックしてみましょう。
①「倒産」に準ずるもの
厚生労働省の「特定受給資格者の範囲」で倒産に準ずる事例とされているケースは、以下のようなものがあります。
* 民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立てがあったことを理由に、退職した者
* 大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため、退職した者
* 事業所が移転したことで、通勤することが困難となり、退職した者
② 「解雇」に準ずるもの
厚生労働省の「特定受給資格者の範囲」で解雇に準ずる事例とされているケースは、以下のようなものがあります。
* 休日の付与や賃金額など入社時の雇用契約の条件とまったく異なっていたことが判明したため退職した者
* 給与の3分の1を超える額が2か月以上も遅配となったため、退職した者
* 継続して3か月以上の間に、月80時間以上もの残業があったため退職した者
* 労働契約の更新で3年以上引き続き雇用されるのに更新されなかったため、退職した者
* 上司、 同僚等からパワハラ、セクハラがあったため退職した者
* 会社から退職勧奨を受けて退職した者
* 事業所の業務が法令に違反したため、退職した者
(2)特定理由離職者との違い
特定受給資格者と混同されがちですが、同様に失業保険の給付の際に優遇される者として「「特定理由離職者」があります。
特定受給資格者が、倒産や解雇、それに準ずる理由に寄り再就職の準備をする余裕がなく退職せざるを得なかったケースであるのに対して、特定理由離職者とは、特定受給資格者以外で例えば派遣労働者や有期雇用のアルバイトやパート、契約社員の労働契約が更新されなかったために退職するケースのことをいいます。
また体力不足やケガ、病気で退職した場合や、妊娠・出産・育児、介護などで退職せざるを得なかった場合も、この特定受給資格者に該当します。
2. 特定受給資格者か否かの判断
特定受給資格者の場合も、特定理由離職者の場合も、該当するかどうかはハローワークが判断します。
ハローワークでは、会社側が主張する退職理由や離職票、退職者の主張を資料などで確認し、ケース・バイ・ケースで判断していきます。
もしパワハラがあったという証拠があれば、ハローワークに特定受給資格者と認定されやすくなりますので、可能な限り証拠を集めておきましょう。
(1) ハローワークで相談する
パワハラ被害に遭ったため、退職することになった場合には、その旨をきちんとハローワークで主張しましょう。
なお、その際には、特定個人を対象とする配置転換辞令、就業規則、賃金台帳などが必要になりますが、そのほか、いじめや嫌がらせを受けた時の録音や、嫌がらせのメールなどの証拠を用意して提出できるようにしておきましょう。
(2) 弁護士に相談する
これまで述べてきたように、パワハラ被害に遭って退職した場合には、特定受給資格者に該当し、失業保険の面で優遇される可能性があります。
また、それだけでなく会社やパワハラの加害者に対して、損害賠償請求をすることができますし、パワハラがひどくてうつ病などの精神障害を発症してしまった場合には、うつ病について労災申請を行い、医療費や生活費の支給を受けることもできます。
いずれにせよ、パワハラ被害に泣き寝入りしても就業環境はますます悪化するだけで、得するのは会社やパワハラの加害者だけということになりかねません。
十分は補償を受け、正当な損害賠償請求をして、一日も早く再就職を成功させるためにも、早めに労働問題に詳しい弁護士に相談して下さい。
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