雇用保険というと、失業保険(正式には「雇用保険の求職者給付」といいます)をイメージする人が多いと思いますが、再就職活動をサポートしてくれる就職促進給付や教育訓練給付など、さまざまな手当もあります。
ここではそのうち「就職促進給付」について、ご紹介します。
1.就職促進給付とは
雇用保険の給付にはさまざまな種類があります。
このうち求職者給付(失業手当など)と就職促進給付は、失業した人を対象とした給付で、失業した人が再就職することを援助・促進することを主な目的とする給付です。
※求職者給付は、離職して失業状態にある人の生活の安定をはかり、求職活動を支援することを目的として支給される給付です)。
就職促進給付には、再就職手当・就職促進定着手当・就業手当・常用就職支度手当の4つの種類があります。
(1) 再就職手当
「再就職手当」とは、失業した一般被保険者で基本手当の受給資格がある者(以下「受給資格者」)が、失業後基本手当の支給日数を一定数以上残して1年を超える安定した職業に就いた場合に、支給される手当のことです。
支給残日数が所定給付日数の3分の1以上を残して、早期に就職を決定することができた人が対象となります。
基本手当が3分の2以上の受給者に対しては、支給残日数に基本手当をかけて算出した金額の50%、3分の1以上の受給者に対しては、支給残日数に基本手当日額をかけて算出した金額の40%が支給されることになります。
「再就職手当」=所定給付日数の支給残日数×30%(40~50%)×基本手当日額(上限あり)
(2) 就職促進定着手当
「就業促進定着手当」とは、再就職手当を受給した場合で、前職の給料よりも再就職先の給料が少ない場合に支給される手当です。
就職促進定着手当を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。
~就職促進定着手当を受けるための要件~
- 再就職手当の支給を受けていること
- 再就職の日から、同じ事業主に6か月以上、雇用保険の被保険者として雇用されていること(起業により再就職手当を受給した場合には、「就業促進定着手当」は受けられません)
- 所定の算出方法による再就職後6か月間の賃金の1日分の額が、離職前の賃金日額を下回ること
(3) 就業手当
「就業手当」とは、再就職手当の受給要件に該当しない人に支給される手当です。
雇用保険の失業保険の受給者は、離職後すべての人が正社員として再就職できるわけではありません。なかにはアルバイトや人材派遣、契約社員などの形態で働く人もいます。これらの形態で働く場合には、再就職手当の受給要件には該当しないため、その代わりに支給されるのが就業手当です。
「就業手当」の支給額は、就業日ごとに「基本手当日額×0.3×就業日数)」が支給されます。
就業手当を受けた日の分は、失業保険を受けたものと同様に扱われ、失業保険の給付残日数から減らされます。
(4) 常用就職支度手当
採取職が決まった場合でも、一定の日数以上の支給残日数が残っていない場合には、再就職手当を受けることができません。
しかし、就職時に45歳以上だったり障害者であるなど、一般的に就職が困難な人が再就職をした場合には、「常用就職支度手当」を受けることができます。
「常用就職支度手当」は、就職が困難な者の常用就職を促進することを目的としていて、支給日数が残っている受給期間中に、ハローワークの紹介で安定した職業に就いた場合に支給されます。
(5) 移転費
「移転費」とは、再就職のために転居が必要な際に支給されます。
移転費が支給されるためには、以下の1もしくは2のいずれかに該当する必要があり、かつ公共職業安定所長が必要と認めた場合である必要があります。
~移転費が支給されるための要件~
- 受給資格者が公共職業安定所の紹介した職業に就くため、住所または居所を変更する場合
- 公共職業安定所長の支持した公共職業訓練などを受けるため、住所または居所を変更する場合
なお、移転費には以下の6つの種類があります。
~移転費の6つの種類~
- 鉄道賃
- 船賃
- 航空賃
- 車賃
- 移転料
- 着後手当
(6) 求職活動支援費
「求職活動支援費」とは、公共職業安定所の紹介により広範囲の地域にわたる求職活動(広域求職活動)をする場合に支給されるものです。
交通費については、前述した移転費の場合に応じて計算した額が支給されます。
まとめ
以上、「就職促進給付」についてご紹介しました。
雇用保険には、「就職促進給付」以外にも、雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、失業を未然に回避するために支給される「雇用継続給付」や、短期間働けない人のために支給される「傷病手当」、働く人の能力開発への取り組みを支援し、雇用の安定と再就職の促進を目的として支給される「教育訓練給付」など、さまざまな給付があります。
教育訓練給付で何らかの資格や技能を身に付ければ、給料や待遇の面で有利になることもあります。
さまざまな給付を上手に利用して、再就職を成功させるために役立てましょう。