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セクハラというと、男性の上司が、職場での立場を利用して女性の部下に対して性的な嫌がらせをするというイメージが強いと思います。現に都道府県労働局雇用均等室に寄せられるセクハラの悩みの大半が、女性被害者によるセクハラ相談です。
しかしなかには男性がセクハラの被害者になる場合もあります。
最近は女性からのセクハラに悩む男性は増えていて、過去には女性上司がセクハラの加害者で男性の部下がセクハラの被害者という裁判事例もあります(大阪高判平成17年6月7日)。
1. 女性→男性のセクハラもある
「セクハラは、男性が女性に対してするもの」というイメージが強いのですが、セクハラは「男性から女性へされるもの」に限られるわけではなく、最近は女性(とくに女性上司)によるセクハラに悩む男性も増加しています。
セクハラを行う女性は、自分の言動や行為がセクハラに当たるという自覚がまるでないケースが多く、男性側も「女性からセクハラを受けているなんて、恥ずかしい」と誰にも相談できずにいるケースが多々あります。
また、女性側も「相手も喜んでいるはず」とセクハラを行っている自覚がまるでないすらあります。
2. 女性からのセクハラに多い事例
女性からのセクハラで多いのが、「性的な話を聞かされた」「しつこく飲食に誘われた」というものです。また、この他にも業務に関係のないプライベートな内容のメールを大量に送りつけたり、不必要に何度も肩を触られたというケースもあります。
以下では女性からのセクハラ事例について紹介します。
* 性的な関係を強要する
* 「彼女・奥さんはいるの?」と執拗に聞く
* 彼女がいない男性をからかう、バカにする
* 露出度の高い服装を着る。
* 休日・業務時間外にプライベートな買い物に着き合わせる
* 不必要に身体を触る。
* 「男らしくない」「男のくせに」と叱責する。
* 「男なのだから」と当然のように力仕事をさせる。
3. 女性からのセクハラへの対応策
女性上司のセクハラに悩んでいても、「男がセクハラで悩むなんて、恥ずかしい」「男性がセクハラの相談をして、女性陣を敵に回し、仕返しをされるのではないか」等の理由で、泣き寝入りしてしまう方も多いようです。なかには、そのまま耐え切れず退職してしまう例もあります。
しかしこれまで述べてきたように、男性のセクハラ被害者も増えていますし、平成19年の男女雇用機会均等法改正で、男女双方を対象として性による差別を禁止する法律となりました。
女性からセクハラを受けても、それを恥ずかしく思うことはありません。
毅然として対応することで、状況が変わる可能性は大いにありますし、慰謝料を請求することができる場合もあります。
(1) 不快であることを本人に伝える
セクハラを受けたら、まずは不快であるということをしっかり本人に伝えましょう。
女性は、自分の言動や行為が相手に不快感を与えている……という自覚がまるでない場合が多いものです。
ですから、まずしっかりと不快であることを伝え、セクハラ行為を辞めるよう本人に伝え、本人にセクハラ行為を行っているという自覚を持たせるようにしましょう。
(2) 証拠を集める
セクハラ行為で会社の相談窓口に相談する場合や、後々労働審判や訴訟になった場合に何よりも重要になのが証拠です。
セクハラ現場の録画や録音、送り付けられたメールなどは有力な証拠となりますし、もし現場を目撃した第三者がいれば、その第三者に供述を頼んでみましょう。
その他、日記や業務日報、メモなどの記録も証拠になる場合があります。
メモや日記を取る場合には日付、時間、場所、行為や発言の内容をできる限り正確かつ具体的に記載するようにしましょう。
また、セクハラを受けたことが原因でうつ病や適応障害などの精神疾患を発症した場合は、それを証明する診断書も準備しておきましょう。
その証拠をもとに慰謝料請求できる可能性がありますい、労災が認定される場合もあります。
どのような証拠が有効なのか、その証拠をどのように集めたらよいのかは、セクハラ問題に詳しい弁護士に相談して、アドバイスを受けておきましょう。
(3)行為について周知する
男性は、セクハラ被害を受けても「自分で解決しよう」と思ってしまいがちですが、信頼できる上司や同僚に相談するなどして、1人で悩みを抱え込まないようにしましょう。
また、メールでセクハラされた場合には、セクハラメールへ返信する際、その宛先に同僚や上司を追加して返信をすると、周囲にセクハラの事実を周知することができるという点でおすすめです。
周囲にセクハラ行為を周知すればセクハラを行う女性に「セクハラ行為を行っている」という自覚を持たせることになりますし、その後の交渉がスムーズに進む場合もあります。
(4)社内・社外の窓口に相談する
セクハラ行為などの労働問題があった場合、会社・雇い主は従業員の生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮する義務があります。
会社には、セクハラが起きないように予防し、もし起きた時には適切に対応する義務があります。
また社内の窓口では、セクハラ問題について男性労働者、女性労働者双方の悩みを受けなければならず、女性労働者のみの相談に対応するなどの措置は認められていません。
もし社内にセクハラを相談・解決してくれる窓口がない時には、労働基準監督署や都道府県労働局雇用均等室などでも、労働問題の専門家が解決に向けてアドバイスをしてくれるので、積極的に利用してみましょう。
(5) 弁護士に相談する
セクハラの被害に遭った場合には、社内窓口や労働基準監督署や都道府県労働局雇用均等室などさまざまな相談窓口がありますが、相談をしたことで、相談者本人が仕返しをされたり嫌がらせをされるなどの不利益を受けてしまうこともあります。
ですから、セクハラの相談は公正かつセクハラ問題を解決するプロである弁護士に相談するのがいちばんです。
加害者に対して民事訴訟を提起して損害賠償請求を行うことができるほか、会社に対しても損害賠償請求を行うことができる場合があります。加害者と会社は、被害者に対して連帯して責任を負うことになるからです。
弁護士であれば、どのような手段で何を要求したらいいのか、そのためにはどのような書類が必要なのかなどの総合的なアドバイスをもらうことができますし、今後の見通しなども教えてもらうことができるので、冷静に戦略を立てることができます。
また、セクハラの被害でうつ病などの精神障害を発症してしまった場合には労災認定されることもありますので、併せて相談することをおすすめします。