目次
セクハラ加害者のなかには、セクハラを行っているという自覚がないケースも多々あります。
自分では、好意を持っている相手にアプローチをしているだけのつもりだけだったのに…とか、職務上必要な軽いスキンシップのつもりだったのに…というケースもあります。
このような加害者は、セクハラ行為を指摘されると「なぜ自分がセクハラをしたなど、言われるのか」「被害者の思い過ごしだ」と憤慨することもあります。しかし実は、そのような考え方こそ、セクハラ問題の一番の課題といえるのです。
ここでは、セクハラ加害者にならないための注意点についてご紹介します。
1.自覚がないセクハラ加害者
セクハラの加害者のなってしまう人のなかには、「自分は異性からのウケがいい」「自分は異性の扱いがうまい」という根拠のない自信を持っている場合があります。
特に、社内で高い地位に就いている人や、社会的に成功している人は、人間関係もそつなくこなしてきている場合が多いので、「自分は人づきあいがうまい」「自分の言動は大丈夫だ」と思ってしまいがちなのです。
しかし、だからといって「自分はセクハラ問題を起こさない」という自信を持つ根拠にはなりません。
人間関係の構築に自信がある人ほど、セクハラとはどのような言動をいうのか、どのような行為をいうのかを正しく理解していないと、セクハラの加害者になってしまう危険性があるので、注意が必要です。
ここでは、セクハラ加害者と訴えられた時に加害者が主張する「言い分」についてご紹介します。
(1) 「スキンシップのつもりだった」
「肩や腰を軽く叩いたが、単なるスキンシップのつもりだった」「相手を和ませようとしただけだ」という加害者がいます。しかし、スキンシップという行為はそもそも職場で行われるべき行為ではありません。
加害者は軽い気持ちであったとしても、不快に思う人がいる以上、慎むべきです。
過去の判例でも、膝の上に乗ったり触ったりする行為がセクハラに該当すると認定された判例がありますし(岡山セクハラ事件 岡山地裁 平成14年11月6日)、肩をもんだり髪を触る行為、抱きついたり、首筋や唇にキスをする行為がセクハラに該当すると認定された判例があります(横浜セクハラ事件 東京高裁 平成9年11月20日)。
(2) 「下ネタは場を和ませることもある」
「多少卑猥なジョークでも、飲み会の場なら許されると思った」という加害者がいますが、セクハラでいう「職場」は、業務終了後の飲み会も含まれることをしっかりと認識すべきです。
大阪セクハラ事件では、二次会のカラオケボックスで女性をソファに押し倒してキスをしようとした行為がセクハラとして問題になりました(大阪地裁 平成10年12月21日)。
東京セクハラ事件では、飲食店で「店にいる男と何人とやったんだ」「何かあったんじゃない?キスされたでしょう」などの発言がセクハラに該当すると判断されました)東京高裁 平成20年9月10日)。
お酒の席では職場にいる時より気が緩み、多少の卑猥なジョークなら許されると考える人もいますが、もしその場で「それはセクハラです」と抗議をされなかったからといって、周りの人がすべて、その卑猥なジョークを楽しんでいると思ったら、大間違いです。
「今この場で抗議すると、場の雰囲気を壊してしまうのではないか」と遠慮しているだけに過ぎないケースも考えられることを忘れないようにしましょう。
安易に「自分の下ネタで皆楽しんでいた」と捉えるのは、早合点の場合がありますので、注意しましょう。
(3) 「一度断られても誘い続けるタイプだ」
セクハラ加害者のなかには「セクハラではなく、好意を持っている相手をデートに誘っているだけのつもりだった」という場合があります。
しかし部下からすれば、上司からの誘いは断りにくいものです。一度や二度誘いに応じたからと言って、「自分に気がある」と判断するのは、考えものです。
一度断っても執拗に誘われると「何度も断るのは悪いのではないか」と仕方なく誘いに応じてくれている可能性も十分考えられます。
加害者からすれば「好意に応えてくれて、デートに応じてくれた」と思ってしまうかもしれませんが、応じた相手はそもそも「デート」と考えているかどうかは分かりません。
上司からの誘いであるから断りにくく、仕方なく誘いに応じているに過ぎないというケースも多いということを認識しておきましょう。
(4) 「性的なジョークも大人なら受け流すべき」
「性的なジョークでも、うまく受け流すのが大人だ。セクハラなんて騒ぎ過ぎだ」という人がいます。
確かに、コミュニケーションは大切ですし、相手の話題に合わせる努力は必要です。
しかしその話題がセクハラである必要はありませんし、このような発言を許してしまう環境は、セクハラの温床となりがちです。
自分では軽いジョークのつもりでも、人の受け止め方は色々ある、ということは常に意識しておきたいものです。
2. 加害者と言われたら
セクハラの加害者は、強制わいせつ罪などの刑事上の責任を負う可能性があります。
胸を触る、肩をもむなどの行為は強制わいせつ罪になる可能性もありますし、言葉によるセクハラは、名誉棄損罪や侮辱罪が成立することもあります。
また、セクハラの加害者は不法行為に基づく損害賠償責任を追及された場合には、被害者が被った損害を賠償しなければならないこともあります。
また加害者と断定された場合には、ほとんどのケースで会社から懲戒処分を受けることになり、悪質なセクハラ行為と判断されれば、解雇される可能性もあります。
弁護士にすぐ相談
セクハラ行為を行ったことが事実であったとしても、早めに弁護士に相談するのが得策です。セクハラ行為を行った覚えなどないなら、なおさらです。
弁護士が介入し被害者と交渉を行うことで、裁判などに至る前に示談が成立するケースは多くあります。
くれぐれも被害者を逆恨みして、軽率なメールを送信するなどせず、早めに弁護士にアドバイスをもらうようにしましょう。