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残業をするのを「当たり前」ではありません。きちんと請求できる労働者の権利です。
しかし労働者個人として会社に直接請求しても、話し合いすら難しいケースがほとんどでしょう。
ですから、未払いの残業代を請求する場合には、やはり第三者に介入してもらわないと、解決への道は遠いと言わざるとえません。
未払いの残業代について悩んでいる方は、早めに労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士から連絡がくれば、会社は話し合いに応じざるを得ませんし、残業代請求をするために必要な書類や証拠についてもアドバイスしてもらうことができます。
1. 残業代とは
未払いの残業代を請求するために、まずはそもそも残業とは何かについて基礎的な知識を知っておきましょう。
(1) 2種類の残業
残業代請求をする場合には、まず「残業」の概念について知っておきましょう。
ひとくちに残業といっていますが、実は残業には「(法定)時間外労働」と「法内残業」の2種類があります。
「(法定)時間外労働」とは、労働基準法32条1項、2項に規定されている「使用者は1週間に40時間、1日8時間を超えて労働させてはならない」という制限を超えて働いた場合のことをいいます。
そして法内残業とは、就業規則や契約書などで会社が定めた労働時間は超えているが、労働基準法で定められた労働時間以内の範囲で行われた残業のことをいいます。
(2) 割増賃金の支払義務があるのは、(法定)時間外労働
前述した2種類の残業のうち、労働基準法により割増賃金の支払義務があるのは、(法定)時間外労働だけで、(法定)時間外労働については、時間外労働の時間数×1時間あたりの賃金(円)×1.25の割増し賃金を請求することができます。
(3) 時効は2年
残業代は給料日から2年で消滅時効にかかってしまいます。
よく「退職してから2年」と勘違いしている方がいますが、毎月毎月給料日になると、2年前の残業代が時効にかかってしまっていることになりますので、未払いの残業代を請求したい方は早めに行動を起こすことをおすすめします。
2. 残業代請求を弁護士に相談するメリット
労働者が個人で、未払いの残業代を支払うよう会社に請求したところで、すんなり「すみませんでした、支払います」と応じるケースは少ないでしょう。
現実的には感情論から話がまとまらないのがほとんどで、なかには話し合いに応じようともしない会社もあります。
しかしこのような場合でも、労働者の代理人として弁護士から連絡がくれば、会社側としては無視するわけにはいきませんので、まず話し合いの場を持てるようになる、というメリットがあります。
(1) 必要な書類、証拠のアドバイスがもらえる
未払いの残業代を請求するためには、タイムカードや出勤簿のほか、就業規則や給与明細などの書類が必要です。これらの証拠がない場合には、手帳のメモ書きや送受信の時間がわかるメールなどが証拠になる場合もあります。
ただ、給与明細は捨ててしまっている人が多く、給与明細の再発行を求めても、会社がこれに応じないケースも多々あります。
弁護士に相談することで、個々の状況に応じて必要な書類、証拠についてアドバイスを受けることができるので、交渉に必要な書類、証拠について再発行を求めたりしてもらうことができます。
(3) 効率的な交渉ができる
未払いの残業代を請求するためには、前述した証拠に基づき、細かく残業代を計算する必要があります。しかし残業の割増率は時間帯によって細かく規定されていて、計算が複雑となる場合もあります。
また労働時間数を計算するには、原則として1分単位で計算する必要がありますし、変形労働時間制、フレックスタイム制などを採用している場合は、計算方法が異なるなど、特別な計算が必要となる場合があります。
弁護士に相談すれば、このような複雑な計算についてもスムーズに処理してくれるので、効率良く交渉を開始することが可能となります。
(4) 労働審判、訴訟で有利
弁護士に相談すれば、労働審判、訴訟などの法的手続きへの移行もスムーズです。
とくに労働審判は原則として3回以内の期日で審理が終わるので、第1回期日に提出する証拠書類や資料、プレゼンテーションが非常に重要になります。
残業代請求の経験豊富な弁護士に依頼すれば、労働審判の申立て書の作成はもちろん、主張を裏づけるのに効果的なプレゼンテーションを行ってもらうことができます。
また会社側に申立書が届けば、答弁書が申立人に送られてくることになりますが、その場合第1回期日まであまり時間がないことも多く、申立人はすぐに反論の準備をする必要があります。
弁護士であれば、届いた答弁書についてすぐに確認し、必要な証拠等と照らし合わせて、効率よく戦う準備を進めてくれます。
3. 弁護士に残業代請求を相談する時の費用
弁護士費用に関しては、交渉のみで解決するか、労働審判、訴訟まで行うか、どのくらい時間がかかるか、経済的利益の額はどれくらいか、などの事情で大きく異なってきます。相談料が無料の場合や、着手金を後払いにしてもらえる場合もあるので、早めに弁護士に相談してみるとよいでしょう。