残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2017.07.26

「残業代が出ないなら帰る」は許されるか

サービス残業が当たり前の感覚になってしまい、「残業代を払ってほしい」と口に出すことすら難しい職場は多々あります。

「残業代が出ないのに、残業するなんて納得できない」と思いつつも、会社に交渉する勇気までは出ない……という人や、労働基準監督署に相談するのは気が引けてしまって、結局日々サービス残業を繰り返している人は、とても多いものです。

また係長などの役職がついたとたん、残業代が支払われなくなって「以前よりも収入がダウンしてしまった」というケースでも、やはり会社に直接交渉するまでは勇気が出ない、という人がほとんどでしょう。

しかし役職手当が支給されたからといって、それが残業代を支払われないで良い理由となるわけではありませんし、ましてや「サービス残業することは当たり前」ではありません。

1. 残業とは

残業が出ないことが違法か否か確認するためには、まず「残業とは何か」について知っておく必要があります。

まず労働時間についてですが、労働基準法(32条1項、2項)では、1週間に40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないと規定しています。

つまり使用者は、原則として従業員をこの1週間に40時間、1日8時間を超えては「働かせてはいけない」のです。

 

そしてこの原則である「1週間に40時間、1日8時間」を法定労働時間といい、これを超えて働いた場合は時間外労働として法律上の残業に当たり、割増賃金(割増残業代)の対象となります。

つまり「1週間に40時間、1日8時間を超えて仕事しているのに、残業代が出ない状態」は違法である可能性が高いのです。

(1) 法定労働時間と所定労働時間

会社では、この法定労働時間とは別に労働契約書や就業規則、労働協約などで、通常の労働時間を定めてあるのが普通で、この労働時間を所定労働時間といいます。

 

所定労働時間を超えていても、前述した「1週間に40時間、1日8時間以内の労働時間、つまり法定内の労働時間であれば、法律上は割増賃金の対象とはなりません。

 

※残業代について、労働契約書などの各規定が労働基準法と異なる内容が規定されている場合には、労働者とって有利な方で請求することができます。

ただし、後々労働審判や労働訴訟となり和解を勧められた場合には、法定労働時間内の部分は対象から除外されるケースもあります。

(2) サービス残業は「違法」

前述したとおり、会社は労働者に対して法定労働時間を超えて労働させた場合には、割増賃金を支払う義務があります。

そ毎日毎日サービス残業を行っていれば、未払い残業代はどんどん積み重なっていきます。

とは言うものの、チームで仕事をしている場合や、担当している業務が積み重なっている時に「残業代が出ないなら帰る」とは言い出しづらいでしょう。

 

しかしだからといって、サービス残業を強いるのはやはり違法です。

未払い残業代は声を上げれば取り戻せる場合がほとんどです。もし今未払いの残業代があれば、労働者の正当な権利として取り戻していきましょう。

(3) 職務手当は「残業代」ではない

よく「職務手当のなかに残業代が含まれているから」とか「みなし労働なので、残業代は支払われない」と言われているケースがありますが、これらは残業代を支払わないための言い訳になっている場合があります。

 

仮に会社と労働者との間で、「職務手当に残業代が含まれるので、別途残業代等を支払わない」と合意をしていたとしても、その合意は法律に反する違法な合意であれば、無効となる場合があります。

 

本来残業代が支払われるべきなのに支払われず、それが悪質なケースと認められる場合には、一定期間の懲役または一定額の罰金を罰則が科せられることもあります。

(4)我慢して残業する必要はない

繰り返し言いますが、残業した分の支払いを求める権利は、労働者の正当な権利であり、残業代を支払わないというのであれば、「1週間に40時間、1日8時間」を超えて仕事をする必要はありません。

 

もちろん、働く以上は嫌なことと向き合う必要はあります。

チームのメンバーが一丸となって取り組んでいるプロジェクトや、目の前の締切りやノルマを放り出して、「残業代が出ないなら帰る」と言える人は少ないでしょうし、言うべきでないシーンももちろんあります。

 

しかし、会社に・同僚に不信感を抱きながら自分をすり減らし、毎日何時間も働き続ける状態を続け、しかも残業代が出ない生活が続けば、そのうち「仕事の達成感」を得られることもなくなり、苦痛しか感じなくなってしまうのではないでしょうか。

 

辞めたくても「次の職場が見つかるだろうか」と不安になる気持ちはあると思いますが、サービス残業が当たり前の会社には見切りをつけ、新たな環境に転職することを考え始めてもいいかもしれません。

 

もちろん辞める前には、しっかり未払いの残業代を請求してから辞めるようにしましょう。

(5) 残業を拒否するべきではない場合

これまで述べてきたように、割増賃金が支払われないにも関わらずサービス残業を強いるのは違法ですが、きちんと割増賃金が支払われるようであれば、残業をすべきケースもあります。

 

残業すべきか否かは、時間外労働や休日労働が、労働者の義務となるかどうかがポイントとなるでしょう。

 

就業規則に「業務上、必要がある場合には時間外労働を命じる」など、会社が労働者に対して時間外労働を命じることができる根拠となる規定があり、「時間外・休日労働に関する協定」を締結していて、その書面を労働基準監督署に届出が出ている場合には、原則として労働者には時間外労働する義務が生じていると考えられますので、正当な理由なく残業を拒否することが、業務命令違反になる可能性があります。

 

しかし個別の労働契約を締結する際に「時間外労働や休日労働はさせない」と明示しているような場合であれば、会社は労働者に時間外労働や休日労働をさせることはできませんので、割増賃金が支払われる場合であっても残業を拒否することが可能です。

2.未払い残業代は請求できる

未払い残業代は請求できます。

そしてその際には併せて、①遅延損害金の支払、②付加金の支払の請求が可能な場合もあります。

それでは未払いの残業代を請求するには、どのような手段をとればよいのでしょうか。

(1) 交渉する

未払い残業代請求については、まず会社に直接交渉して、内容証明郵便を送付するなどの方法があります。

残業代請求権の時効は2年と短いのですが、内容証明郵便の送付は、この短い時効を中断するための催告という意味合いもあります。

しかし割増賃金の計算方法や、必要となる証拠が何かについては、自身で判断しにくいことが多いものですし、個人で交渉しても「では支払いましょう」とすんなり応じてくれるケースはほとんどないと思っていた方がよいでしょう。

(2) 弁護士に相談する

残業代請求は自身で行うことも可能ですが、時効の問題や必要となる証拠類などについてアドバイスを受けるためにも、いちど弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

(3) 裁判手続き

会社側と交渉しても内容証明郵便で通知しても、互いに納得できる結果が得られないような場合には、裁判などの手続きを検討することになります。

 

裁判手続きは大きく分けて、民事訴訟と労働審判手続きがあります。

なかでも労働審判は、原則3回で終わる制度で、短期解決が望めるとして最近注目されています。

 

ただし、いずれの手続きでも膨大な証拠資料を提出する必要がありますし、審判や訴訟では、証拠を提示しアピールするなど、さまざまな工夫が必要となります。

何が説得力のある証拠なのかについては、ケースバイケースで異なりますので、、やはり早めに弁護士に相談してアドバイスを受けたほうがよいでしょう。

(4) 行政機関の活用

労働基準監督署は、労働基準法の法令違反について申告を受け付けていて、違反が認められる場合には、使用者に是正監督をしてくれます。

ただし「残業代を支払え」と命令してくれるわけではなく、あっせんや指導に強制力があるわけではありません。

 

ただし残業代の不払いには刑事罰がありますので(労働基準法119条)、この規定に従って告訴した場合には、使用者が示談目的で残業代支払いに応じてくれることもあります。

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