残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2017.07.21

残業ゼロ法案に反対する人の意見

労働基準法は、労働した時間に対して賃金を支払うことが大原則です。

しかし、賃金を時間ではなく成果で評価されるべきというニーズが存在していることも事実で、これを受けて以前から「ホワイトカラー・エグゼンプション」と称する労働時間にかかわらず賃金を支払う制度が検討されてきました。

この制度によると、一定の要件を満たしている労働者に対しては、労働基準法で定める「労働時間」「休憩」「休日」「深夜」に関する規定が適用除外されることになります。

しかしこの制度は、一部のメディアや労働組合からは、どんなに働いても残業代がゼロなので、まるで「残業代ゼロ法案」と批判されています。

1. 残業代ゼロ法案とは

「残業代ゼロ法案」とは、安倍政権が閣議決定した労働基準法の改定のことで、正式名称は「日本型新裁量労働制」といいます。

この制度は簡単にいえば、「働いた時間ではなく結果に対して、給料の支払いを行う」ことを目的とした制度です。

労働基準法で定める「労働時間」「休憩」「休日」「深夜」に関する規定が適用除外されるので、いくら働いても残業代の出ないため、「残業代ゼロ法案」として批判をする人もいます。

(1) 残業代ゼロ法案の背景

「賃金を時間ではなく成果で評価されるべき」というニーズを受けて、以前から「ホワートカラー・エグゼンプション」という「労働時間にかかわらず賃金を支払う制度」については検討されてきましたが、これまでは「労働者の使い捨てなど劣悪な労働環境につながるのではないか」「いずれ適用対象の幅が明確ではない」といった批判から法律改正まではされませんでした。

しかし一定の年収要件を満たしていて、かつ職務の範囲が明確であり、高度な職業能力を有する労働者だけを対象とし、長時間労働を防止するための措置を講じるのであれば、労働時間制度の新たな選択肢となるのではないかと、さらに検討が続けられてきました。

そして、特定高度専門業務・成果型労働制(通称「高度プロフェッショナル制度」)の新設が盛り込まれることになったのです。

(2) 残業代ゼロ法案の適用条件

残業代ゼロ法案の対象となるのは、年収が1,075万円以上で、金融商品の開発、金融商品のディーリング、アナリスト(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタント(事業・業務の企画・運営に関する高度な考案または助言の業務)、研究開発など高度な専門的知識を必要とし、労働時間と成果との関連性がそれほどない労働者のみとされています。

実際に適用する場合には、以下のような条件が必要とされています。

* 使用者との間の書面(職務記述書など)による合意に基づき、職務の範囲が明確に定められ、その職務の範囲内で労働する労働者であること。

* 本制度の対象となることによって賃金が減らないよう明記すること。

* 年少者(満18歳未満)でないこと。

2.残業代ゼロ法案のデメリット

残業代ゼロ法案は、「時間ではなく、成果に対して賃金を支払う」という考え方の制度なので、これまで残業代目当てにダラダラと残業をしていた人より、効率よく業務をこなしていた人の方が、給料が安い……という矛盾を解消できるというメリットや、「時間ではなく仕事の質で評価されるので、育児や介護と両立しやすくなるのではないか」というメリットが指摘されてはいますが、以下の多くのデメリットも指摘されています。

(1) サービス残業が増える可能性

とくに強く指摘されるデメリットが、「残業代ゼロ法案が、サービス残業の口実として使われるのではないか」という懸念です。

長時間労働は、過労死や過労自殺、さまざまな精神疾患をはじめ、働く人たちの心と体をすり減らす大変重要な問題です。

すべての労働者が健康に働き続けられるようにするためにも、会社は残業代ゼロ法案を導入したとしても、健康管理時間を把握したうえで「これ以上働かせてはならない」という具体的な時間の上限や、休息時間を法律で規制することが必要となってくるでしょう。

(2) ノルマの強化

一部の労働組合は、「『時間ではなく成果』に対して給料が支払われるようになると、会社が労働者に対してノルマを強化し、サービス残業が横行するなどブラック企業が横行し、労働者にとって過酷な労働環境を誘発しないか」というデメリットを指摘しています。

つまり、「仕事の質が低かったら、どんなに働いても残業代が支払われない」とノルマを強化する企業が出てくるのではないか、そうなれば結果的に以前の制度より賃金が低くなってしまうのではないかという懸念です。

(3) 適用範囲の拡大

残業代ゼロ法案の対象となるのは、年収が1,075万円以上で、金融商品の開発、金融商品のディーリング、アナリスト(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタント(事業・業務の企画 運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発など高度な専門的知識を必要とし、労働時間と成果との関連性がそれほどない労働者のみとされています。

しかし残業代ゼロ法案の対象とするために、今後は、厳密には残業代を支払わなくてはいけない人たちまで年収要件を段階的に引き下げていくのではないかという指摘があります。

つまり今は年収1,075万円以上の労働者が対象とされていても、将来的には年収400万円台や300万円台の労働者など対象が広がるのではないかといった懸念や、サービス残業が増えるのではないかという懸念です。

現に、既に同様の制度が導入されているアメリカでは、年収200万円程度にまで収入要件が段階的に引き下げられて批判を受けています。

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