残業代請求の時効を中断する方法

残業代
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残業代を請求したい人は、残業代の請求権には2年という消滅時効があることに注意が必要です。

労働基準法115条では、法律上残業代などの賃金請求権は、権利が発生してから2年で消滅時効が到来すると規定しており、この時効が到来する前に残業代請求権の行使をする必要があります。

ここでは、残業代請求権の時効と、この時効を中断する方法をご紹介します。

1.残業の時効は2年

残業代などの賃金請求権(※退職金を除く)は、権利が発生してから2年で消滅時効が到来すると規定されています(労働基準法115条)。

よく2年という時効を「退職してから2年」と思っていらっしゃる人がいますが、この2年という時効の起算点(スタート地点)は毎月の給料日の次の日から始まります。

つまり毎月毎月の給料日に、2年前の残業代が時効によって請求できなくなっているのです。

残業代を請求したいと考えている人は、早めに準備を始めることをおすすめします。

(1) 時効を止めるための内容証明郵便

前述したとおり、未払い残業代の請求権には2年という時効がありますが、2年の時効が来る前に権利を行使することで、時効の進行を止めることができます。これを「時効の中断」といいます。

時効を中断させる方法としては、裁判上の請求(訴訟・支払督促など)や債務者の承認などがありますが、内容証明郵便で行う裁判外の請求(催告)もその一つです。この催告は、口頭でも普通の手紙でも良いのですが、証拠を残すためにが使われるのです。

催告は口頭や普通の手紙で行うこともできますが、配達証明付きの内容証明郵便にしたほうが、後日争いになった場合に催告を行ったことの証拠を残すことができます。

(2) 内容証明郵便だけでは不十分

時効を中断するためには内容証明郵便を送付しただけでは足らず、内容証明郵便により催告したうえで、半年以内に提訴するなどの時効中断の措置を講じる必要があります。

つまり、内容証明郵便による催告は、時効完成の期限を最大で半年まで延長させることができますが、内容証明郵便で催告しても、半年の間何もしなければ時効は完成してしまいますので、注意が必要です。

2.残業代以外で請求できるもの

「すでに2年の時効が完成してしまった」と簡単に諦めてしまう人もいますが、2年間の消滅時効が完成している場合でも、不法行為による損害賠償請求として残業代相当額の損害賠償が認められた裁判例もあります。

不法行為損害賠償請求権の消滅時効は、3年なので、残業代請求権の2年の時効が到来してしまっている場合でも、損害賠償として未払いの残業代を取り戻すことができるかもしれません。諦めずに弁護士に相談してみることをおすすめします。

(1) 遅延損害金

遅延損害金とは、支払い期限が過ぎた際の損害賠償として、法律上当然に支払わなければならない金銭のことです。

在籍しているときの遅延利息は年6%、退職したら年14.6%の遅延利息が発生します。

(2) 付加金

付加金とは、労働基準法上の支払いが命じられている金銭を支払わなかった会社に対して、裁判所が支払いを命じる金銭のことです。

なお、この付加金の支払い義務は当然に発生するものではなく、労働者の請求があり裁判所の命令があって初めて成立するものです。

請求をしない限り支払い命令が出ることはないので、早めに弁護士に相談してみましょう。

3. 残業代請求を弁護士に相談するメリット

残業代請求は、必ず弁護士に相談しなければ支払ってもらうことができない、というわけではありません。

しかし個人が会社に直接請求しても、話し合いすら困難なケースがほとんどではないでしょうか。

そもそも残業代を未払いにする会社が、誠意をもって対応してくれることのほうが稀なのです。

悪質な場合には、内容証明郵便が届いたとたん、会社側が手元に保管していたタイムカードなどの重要なデータを破棄・隠匿する可能性すらあります。

弁護士に相談すれば、もし会社が重要なデータを破棄・隠匿する可能性がある場合に備え、内容証明郵便を送付する前に証拠保全などの必要な手続きをとって、相手に破棄・隠匿される前に重要な証拠を入手することができます。

(1) 必要となる証拠が分かる

未払いの残業代を請求するためには、未払いの残業代があることを立証するための証拠が必要となります。

証拠となる資料としては、タイムカードや入退館記録などがありますが、これらの資料がない場合にはメモ書きなどが有効となる場合もあります。

証拠は個々のケースによって必要となる資料が違いますので、早めに弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

(2) 協議はスムーズに進むことも

個々では話し合いが進まなかった場合にも、弁護士に相談することで話し合いがスムーズに進んで、驚くほど早く解決した、というのはよく聞く話です。

会社側としても弁護士が介入すれば対応せざるを得ませんし、審判や訴訟を避けるために、早めに和解したいと思うケースが多いからです。

(3) 労働審判や訴訟が有利になる

協議がまとまらず労働審判や訴訟となった場合にも、弁護士であれば必要な資料を準備し、早々に手続きをとってくれます。

労働審判は原則第三回期日までに審理を終えることになっているため、第1回期日で提示する資料が決め手になります。とくに「事実関係の確認」は、第2回、第3回では行われないことが原則とされているので、第1回期日に効果的な資料を提示することが大変重要となるのです。

労働問題に強い弁護士であれば、どのような資料が効果的なのか熟知しているので迅速に労働審判の事前準備を進めてもらうことができます。

また労働審判手続以外の民事訴訟、民事調停といった手続きが必要になった場合にも迅速に準備を行ってくれるので、個人で手続きをするよりも、有利に裁判を進めることができます。

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