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残業による割増賃金は労働基準法でも定められている労働者の権利の一つです。しかし、近年、未払いの残業代に関する労働問題の問合せが増えています。
未払いの残業代を請求するためには未払い残業代を取り戻すことができる準備をしっかりと行う必要があります。ここでは、当サイトの中でも残業代の請求に関する内容についてをまとめて紹介していきたいと思います。
1.残業代とは
(1)時間外労働につてい
残業代とは「時間外労働に対する割増賃金」を言います。労働基準法では法定労働時間という労働時間の基準を設けています。このサイトでも度々触れていますが「1日8時間、週40時間」が法定労働時間です。
この法定労働時間を超えて業務をさせなければならない場合、通常の賃金の1.25倍の割増賃金の支払いが必要です。
また、割増賃金には時間外労働以外にも休日や深夜の労働に対する手当も決められています。この法定労働時間はどのような契約形態であっても労働時間の基準として企業は理解しておく必要があります。
残業・時間外労働については下記も合わせてご確認下さい。 |
(2)契約ケース別の時間外労働
近年では様々な契約形態で業務を行う人が増えています。そのため、時間外労働の概念が分かりづらく、結果として残業代が出ないことを仕方がないと諦めている方も多いです。
ここでは、それぞれの契約形態での時間外労働についてご紹介します。
変形労働時間制
変形労働時間制は労働時間の基本を月や年単位で設定するという方法です。変形労働時間の場合、時間外労働は3つの方法で算出されます。
① 1日単位の時間外労働を算出
② ①の時間外労働を除き、1週単位の時間外労働を算出
③ ①②の時間外労働を除き、変形労働時間制の全期間の時間外労働を算出
変形労働時間制の時間外労働は少しややこしい部分があります。そのため、時間外労働に該当するのかどうかの判断が曖昧で「まぁ良いか」という判断になりやすいです。
下記に詳しく紹介していますので変形労働時間制で働かれている方は参考にしてみてください。
変形労働時間の残業代はどうやって考える?変形労働時間制を理解しましょう! |
フレックスタイム制
フレックスタイム制も変形労働時間制の一つですが、出退勤の時間を労働者の自由に決めることができるという特徴があります。
フレックスタイム制の時間外労働は、1ヶ月以内で定められている精算期間というものがあります。精算期間の総労働時間は週40時間以内で設定されています。
上記の総労働時間を超えた部分に対して残業代が発生します。
フレックスタイム制についての詳細は下記をご確認ください。
フレックスタイム制で働いていても「残業代」は請求できる? |
裁量労働制
いわゆる「みなし労働」が裁量労働制です。少し前のニュースでも話題となっていましたね。
裁量労働制は労使協定によって定められた労働時間を「みなし労働時間」とし、その時間内は労働しているものと「みなす」という方法です。
例えば、みなし労働時間を8時間としている場合には、5時間で帰っても、10時間働いても「8時間働いたとみなされる」ということになります。
裁量労働制は対象となる業種等が定められていますので全ての企業で導入できるわけではありません。
裁量労働制の時間外労働は、みなし労働時間が法定労働時間内かどうかという部分がポイントとなります。
裁量労働制についての詳細は下記をご確認下さい。
裁量労働制は労働者にとって損?得?裁量労働制とはどんなものかを知ろう |
【みなし残業とみなし労働は違うもの?】
みなし残業とは固定残業代のことを言います。
固定残業代とは、固定給の中にあらかじめ残業代が含まれている雇用契約です。残業したとみなすという考え方はみなし労働と似ていますが、どのような契約でどのように固定残業が含まれているのかを把握しないと、実は損をしている可能性もあります。
みなし残業についての詳細は下記をご確認ください。
固定残業代(いわゆるみなし残業)の問題点|未払い賃金の計算方法 |
2.残業代がでないケース
(1)裁量労働制
先ほども少し触れましたが、裁量労働制のみなし労働時間が法定労働時間内に設定されている場合には、実労働時間が法定労働時間を超えていても残業代が発生しないことになります。ただし、休日や深夜の手当は裁量労働制であっても発生しますのでしっかりと確認しましょう。
(2)年棒制
年棒制の場合には、その契約内容によって残業代が発生しないケースがあります。
契約書に「ひと月あたり◯時間の時間外手当を含む」という契約の場合には、契約書に記載された時間分の手当はすでに含まれていることになりますので、その時間分の残業代は発生しません。
(3)歩合制
歩合制の場合も、年棒制と同様に、時間外手当の金額が契約書等に明記されている場合には
その時間分の残業代は発生しません。
(4)管理監督者
いわゆる管理職と呼ばれる方の中には残業代が出ないと思い込んでいる方も多いです。
労働基準法の定める「管理監督者」に該当する場合には、残業という概念がなくなるため残業代が発生するということはありません。
それは、管理監督者は労働時間に対する裁量権を持っていることが前提となっているからです。本当に管理監督者に該当する場合には、それなりの給与等も保証されており、時間的な余裕もあることが多いのですが、「名ばかり管理職」と呼ばれる肩書は管理職だけれども労働基準法の管理監督者に該当しない管理職の残業代については問題となるケースが多いです。
管理職としてお勤めの方は是非、下記の記事をご確認ください。
管理職の未払い残業代を取り戻す方法 |
上記以外にも「法定内残業」など割増賃金の対象とならない残業もあります。残業代が出ないケースについては下記も合わせてご確認ください。
残業代が出ないのは当たり前? |
3.未払い残業代を請求する方法
未払いの残業代がある場合、諦めずにしっかりと回収しましょう。
残業代はあなたが働いた労働に対する対価です。未払いとなっている残業代を請求するためには以下のポイントしっかりと抑えて下さい。
(1)未払いの残業代がどれくらいなのか計算しましょう。
残業代と一言でいっても、時間外、休日、深夜ではその手当の割増率が異なります。割増賃金の基礎となる賃金は所定労働時間に対して支払われる賃金です。
この基礎となる賃金には家族手当や住宅手当、通勤手当等は除外して考えます。
残業代の計算方法は下記をご確認ください。
基本給から残業代を計算する |
(2)残業代請求は証拠が必要!
未払いの残業代をきちんと回収するには、ご自身1人で闘うよりも弁護士さんなどに協力してもらう方が良いケースもあります。
どのような方法で未払い残業代を請求するにしても、証拠はしっかりと準備しておいたほうが良いでしょう。
残業代を請求するためには、
を示すための証拠が必要です。
タイムカードや出勤簿、給与明細などはいざという時の証拠となりますのでしっかりと保管しておきましょう。
残業代を請求する時に必要な証拠 |
(3)残業代の請求方法
残業代の請求は、会社に直接交渉する以外にも、労働基準監督署や労働審判、裁判など様々な方法があります。
それぞれの請求方法について ▶ 残業代請求する前に覚えておくべき4つの残業代請求方法とは?
未払いの残業代の請求は弁護士に相談した方がスムーズであることが多いです。
個人で請求手続きを進めると、会社側にはぐらかされてしまったりと思うように進まないケースがあります。
弁護士に相談すると対応方法がわりやすくなる他、以下のようなメリットがあります。
ただし、弁護士に依頼する場合には報酬が発生します。報酬がどのようになっているかなどはしっかりと確認しておきましょう。
4.時給でも残業代は発生します!
さて、ここまで未払い残業代について色々とご紹介しましたが、「残業代は固定給で働いている人だけ」という訳ではありません。
時給で働かれているパートやアルバイトの方であっても、残業代と無関係ということはありません!!
時給で働かれている方の場合には、残業代を計算するための基礎となる「基礎時給」というものがあります。この基礎時給が1時間の時給です。
そして、労働時間は正規雇用であれ非正規雇用であれ1日8時間、週40時間が基本です。
つまり、1日8時間を超える労働をした場合には、超えた部分に対して、時給×1.25の割増賃金が支払われます。
時給勤務の場合、単純に時給×時間と考えてしまいがちですが、労働時間が8時間を超える場合には割増賃金の適用となりますので、しっかりと確認しましょう!
時給で働いている時の残業代の計算方法 |
5.未払い残業代の請求には時効がある!
未払い残業代の請求には時効があります。
残業代ももらえないまま一生懸命働いても、そのもらなかった残業を取り戻すことができるのは「2年」です。2年経過してしまうと、本当のサービス残業になってしまいます。
未払いの残業代をしっかりと回収するためには「時効の中断」を理解して、活用するようにしましょう。
残業代請求の時効は2年間!時効を中断させる方法とは |
6.残業代請求で失敗しないために
未払いの残業代を請求するためには、契約形態がどのようになっており、本来支払われるべき残業代がいくらあるのか、その証拠となるものは何があるのかを労働者が把握する必要があります。
うっかり支払いを忘れてしまったという場合には、会社に直接伝えることで支払ってもらえることもありますが、悪質な場合にはとりあってもらえないというケースもあります。
残業代請求で失敗しないためには、労働問題に力をいれている弁護士さんに相談するなど詳しい方を見方につけることが大切です。