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セクハラの被害に遭った場合には、セクハラを行った加害者に対して民事訴訟を提起して損害賠償請求を行うことができます。
なお会社にも責任があると認められる場合には、会社に対しても損害賠償請求を行うことができます。
ここではセクハラで裁判を起こす際に必要となる手続きや必要となる証拠、慰謝料の相場などについてご紹介します。
1.セクハラ裁判の流れ
セクハラの被害について裁判を起こす場合には、民事訴訟を提起することになります。
ここではセクハラ時間で民事訴訟を提起する場合に、どのような手続きが必要で、どのように解決していくかについてご紹介します。
(1) 訴えを提起する
セクハラの民事訴訟は、原告(被害者)の「訴えの提起」によって開始します(民事訴訟法133条)。
訴額が140万円以下の場合には、簡易裁判所、それ以上の額の損害賠償を求める場合には、地方裁判所が管轄になります。
(2) 審理の開始
訴状が提出されると、裁判所の審査を経てから被告に通達され(民事訴訟法137条・138条)、口頭弁論期日が指定されます。
(3) 争点の整理
審理が開始され、原告(セクハラの被害者)と被告(セクハラの加害者)それぞれの主張の対立点を明らかにして、ひとつひとつの争点を整理していきます。
どこか争点なのか、どのような証拠があるのか、その証拠をどのように取り調べるべきなのかについて迅速な証拠調べを行うためにも、この争点の整理手続きは大変重要となります。
(4) 証拠調べ
争点の整理手続きをした結果、争いがある事実については証拠調べを行います。
拠調べには、【1】証人尋問【2】当事者尋問【3】鑑定【4】書証の取り調べ【5】検証の5つがあります。
(5) 判決の言い渡し
裁判所が判決を言い渡すと、この裁判は終了します。
その他、原告が訴えを取り下げる場合も裁判は終了します。また、「訴訟上の和解」が成立した場合にも同様に訴訟は終了します。
2.セクハラ裁判・慰謝料の相場
セクハラの慰謝料の相場は100万円~200万円のケースがほとんどですが、なかには3000万円以上の慰謝料が認定されたケースもあります。
そしてセクハラの慰謝料の相場は、今後ますます高額化することが予想されています。
(1) 慰謝料100万円~200万円が相場
被告上司が、部下である原告を辞めさせようとして原告は異性関係が派手である等の噂を流したりした行為がセクハラの不法行為責任にあたり、使用者である会社は働きやすい職場環境を整備する義務があるとして、さらに会社が使用者責任を認め、セクハラ行為を行った被告と、会社に対して慰謝料150万円と弁護士費用15万円の合計165万円を連帯して支払うよう命じた事例(福岡地裁 平成4年4月16日判決)
(2) 慰謝料3000万円以上の事例も
セクハラの被害を訴えた女性社員らに対して、解任、降格、減給などの不利益な処分をしたことは不法行為にあたるとして、未払い賃金や退職に夜1年間の逸失利益、弁護士費用等の支払い等、合計3009万円の支払いを命じた事例(岡山地裁 平成14年5月15日判決)
3. セクハラ裁判で重要なのは「証拠」
セクハラで裁判をする場合に、非常に重要になってくるのが証拠です。特にセクハラは、人目につかない場所で行われる場合も多く、暴言や行為などの証拠も残りづらいものです。
裁判を起こしても、相手に「そんなことはしていない」と反論をされた場合に証拠不十分であったり、被害者の言葉に「信憑性がない」と裁判所に判断されてしまえば、敗訴してしまうこともあり得るのです。ですからセクハラで裁判を起こす際に、証拠が大変重要となるのです。
(1) 録音・録画
セクハラの証拠として有効なのが、録音や録画です。しかしセクハラは密室で行われることも多く、録音・録画が難しいケースが多いでしょうし、せっかく録音・録画しても有利な証拠になるとは限りません。事前に弁護士にアドバイスを受けておくとよいでしょう。
(2) 日記・メモ・同僚の証言
事案によってはセクハラを受けた内容を、日記やメモに記載しておく方法が有効となる場合もあります。また証言してくれる同僚がいれば、その証言が証拠となる場合もあります。
(3) 病院の診断書
セクハラのストレスで、うつ病などの精神疾患になってしまったり、暴行を受けてケガをしたりした場合には、病院の診断書をもらっておきましょう。
(4) 加害者とのメールのやり取り
セクハラ行為の加害者から送られたメールは、裁判所でも重要な証拠となります。
性的な内容を含んだメールはもちろんですが、上司がメールでしつこく食事に誘っている内容だったり「くそばばあ」「いい年して」などの侮辱的な言動が記載されているメールも、セクハラの証拠となりますので、「こんなメール送りつけられて気分が悪い」と言って安易に削除することがないようにしましょう。