会社が実施しなければならない健康診断は、大きく分けて「特殊健康診断」と「特殊健康診断」がありますが、このうち「特殊健康診断」とは、労働者の業務内容に関係なく、その労働者の健康状態を把握するために実施する健康診断のことです。
「特殊健康診断」は、危険有害業務などの特殊物質を取り扱う労働者が職業病などを発症しないように早期発見・早期治療を行うことを目的とした健康診断なので、有害な業務に常時従事する労働者等に対し、原則として、雇入れ時、配置替えの際及び6月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回)、それぞれ特別の健康診断を実施しなければならないとされています。
1.特殊健康診断とは
特殊健康診断とは、一定の危険有害業務に分類される業務に従事する労働者がその業務に起因する職業病を発症しないように早期発見・早期治療を行うことを目的として実施する健康診断です。
原則として6か月以内ごとに1回実施(粉じん作業については3か月または1年以内ごとに1回)実施することを事業主に義務付けています。
(1) 特殊健康診断の受診対象者
特殊健康診断の対象者は、以下の有害な業務に常時従事する労働者です。
* 屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者
* 鉛業務に常時従事する労働者
* 四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者
* 特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者および過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る)
* 高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者
* 放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者
* 除染等業務に常時従事する除染等業務従事者
* 石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者および過去に従事したことのある在籍労働者
※じん健診
常時粉じん作業に従事する労働者及び従事したことのある管理2又は管理3の労働者(じん肺法第3条、第7~10条)
※歯科医師よる健診
・塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者(安衛則第48条)
(2) 特殊健康診断の種類
特殊健康診断の診断項目について、会社は労働者の業務内容に応じて、以下のような健康診断を実施する必要があります。ここでは主な健康診断の診断項目についてご紹介します。
【1】鉛健康診断
鉛業務に常時する労働者を雇い入れる際、または当該業務へ配置換えの際およびその後6ヶ月以内に実施しなければなりません。
~診断項目~
* 業務の経歴の調査
* 鉛による自覚症状および他覚症状の既往歴の調査
* 血液中の鉛の量および尿中デルタアミノレブリン酸の量の既往の検査結果の調査
* 自覚症状または他覚症状の有無の検査
* 血液中の鉛の量の検査
* 尿中デルタアミノレブリン酸の量の検査
~医師が必要と判断した場合には、実施しなければならない項目~
* 作業条件の調査
* 貧血検査
* 赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査
* 神経内科学的検査
【2】特定化学物質等健康診断
特定化学物質を製造または取り扱う業務に常時従事する労働者を雇い入れる際、または当該業務へ配置換えの際およびその後6か月以内に実施しなければなりません。
~診断項目~
業務の経歴の調査をする他、物質別に業務の経歴、カドミウム黄色環の有無、肝または脾の腫大有無、胸部X線直接撮影などの検査項目が細かく分類されます。
【3】石綿健康診断
石綿を製造または取扱う業務に常時従事する労働者を雇い入れる際、または当該業務へ配置換えの際およびその後6か月以内ごとに実施しなければなりません。
~診断項目~
* 被ばく歴の有無の調査およびその評価
* 白血球数および白血球百分率の検査
* 赤血球数および血色素量またはヘマトクリット値の検査
* 白内障に関する眼の検査
* 皮膚の検査
【4】有機溶剤健康診断
有機溶剤の製造または取扱い業務に常時従事する労働者を雇い入れる際、または当該業務へ配置換えの際およびその後6か月以内ごとに実施しなければなりません。
~必ず実施すべき項目~
* 業務歴の調査
* 有機溶剤による健康障害・自覚症状および他覚症状の既往歴の検査、異常所見の既往の有無の調査
* 尿中代謝物の既往の検査結果調査
* 自覚症状または他覚症状の有無の検査
* 尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査……※1
* 尿中の蛋白の有無の検査
* 肝機能検査(GOT,GPT,γ-GTP)……※1
* 貧血検査(赤血球数、血色素量)……※1
* 眼底検査……※1
このうち※1は特定有機溶剤種類に限る
~医師が必要と判断した場合には、実施しなければならない項目~
* 作業条件の調査
* 貧血検査
* 肝機能検査
* 腎機能検査(尿中の蛋白有無の検査を除く)
* 神経内科学的検査
【5】高気圧業務健康診断
高圧室内業務または潜水業務に従事している労働者に対して、雇い入れ時、配置換えの際、およびその後6か月以内ごとに実施する必要があります。
~必ず実施すべき項目~
* 既往歴及び高気圧業務歴の調査
* 関節、腰若しくは下肢しの痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査
* 四肢しの運動機能の検査
* 鼓膜及び聴力の検査
* 血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋たん白の有無の検査
* 肺活量の測定
~医師が必要と判断した場合には、実施しなければならない項目~
* 作業条件調査
* 肺換気機能検査
* 心電図検査
* 関節部のエックス線直接撮影による検査