過労死・過労自殺…残された遺族のための補償

労働災害
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過労死・過労自殺が社会問題として顕在化したことを受けて、最近は過労死・過労自殺の労災認定基準が緩やかになりつつあります。

過労死・過労自殺が労災認定されると、亡くなられた方のご遺族は、労災保険による年金や一時金、葬祭料などの手当が支給されます。

また過労死・過労自殺について、会社に過失がある場合には、会社に対して損害賠償を請求できる場合もあります。

1.過労死・過労自殺は労災

過労死・過労自殺の原因が、長時間労働したことや強い精神的ストレスを受けたことである場合には労災となります。

労災認定されると、残されたご遺族は労災保険による一時金や葬祭料などの手当を受け取ることができます。これらの手当を受けたからといって、悲しみが薄れるはずはありませんが、それでも残されたご遺族の生活の支えにはなるはずです。

申請方法などしっかり確認するようにしましょう。

2. 遺族が受け取ることができる手当

過労死・過労自殺で亡くなられた方のご遺族の支えるために、労災保険からはさまざまな手当てが支給されます。

これらの手当を受け取れる遺族は、生計を共にしていた配偶者、子ども、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。

残された遺族が死亡した場合や再婚した場合には、原則として受け取る権利を失います。

(1) 遺族補償給付

過労死・過労自殺で亡くなられた方のご遺族は、「遺族補償給付」が支給されます。

遺族補償給付は基本的には年金で支給されますが、亡くなられた方に生計を共にしていたご遺族がいない場合には、一時金で支給されます。

給付額は、遺族の人数によって決められています。

(3) 遺族特別支給金

亡くなられた方のご遺族には、上記遺族補償給付に加えて、遺族特別支給金として一律300万円の一時金が支給されます。

(4) ボーナス特別支給金の遺族特別年金

亡くなられた方のご遺族には、遺族補償給付・遺族特別支給金に加えてさらに、ボーナス特別支給金の遺族特別年金の遺族特別年金も支給されます。

(5)遺族補償年金前払一時金

労災によって労働者が亡くなった直後は、残されたご遺族は一時的にまとまったお金が必要になることもあります。

労災保険では、このような事情を考慮して、遺族が希望すれば遺族補償年金を前払いできる制度を設けています。

これを「遺族補償年金前払一時金」といいます。

前払一時金の額は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分のなかから遺族が選択することができます。

なお前払一時金が支給された場合には、遺族補償年金が、各月分(1年たってからの分は年5%の単利で割り引いた額)の合計額が前払一時金の額に達するまでは、支給が停止されます。

(6) 葬祭費用

労災保険では、葬儀費用も支給されます。

葬祭料は、次のいずれか高い方の額が支給されます。

 

* 31万5000円+給付基礎日額の30日分

* 給付基礎日額の60日分

3. 労災申請の方法

遺族(補償)給付や葬祭料(葬祭給付)の請求手続は、会社を管轄する労働基準監督署で行う必要があります。

(1) 遺族補償年金支給請求書

遺族補償給付などを請求する時には、以下の請求書を所轄の労働基準監督署に提出します。

 

* 遺族補償年金を請求する時:「遺族補償年金支給請求書」

* 遺族補償一時金を請求する時「遺族補償一時金支給請求書」

* 遺族補償年金前払一時金を請求する時:「遺族補償年金前払一時金請求書」

* 葬祭料を請求する時:「葬祭料請求書」

 

請求書は下記厚生労働省のホームページでダウンロードすることができます。

厚生労働省 労災保険給付関係請求書等ダウンロード

(2)必要書類

労災の補償年金などを請求する際には、死亡診断書や死体検案書、検視長所などが必要になるほか、戸籍謄本など請求人および他の受給資格者と死亡労働者との身分関係を、証明できる書類が必要になります。

(3) 時効に注意

労災の請求権には時効がありますので、注意が必要です。

請求の内容によりますが、2年で時効になるものと5年で時効になるものがあります。

 

時効は、過労死の場合には死亡翌日から2年もしくは5年たつと、時効にかかって労災を請求できなくなってしまいます。

* 2年で時効にかかる給付

療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護保障給付

* 5年で時効にかかる給付

障害補償給付、遺族補償給付

なお、労災の申請に当たり「会社から労災申請はできないと言われた」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、労災かどうかを認定するのは、会社ではなく労働基準監督署です。会社が協力してくれなくても、労災の申請はできます。

また、過労死・過労自殺したことについて、会社に過失がある場合には、会社にも責任追及をすることができます。

 

前述したとおり、労災申請には時効がありますので、是非早目に労災問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

参考URL

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-7-02.pdf

 

 

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