新型のコロナウイルス感染で出勤停止や売上低迷による休業…その場合の給与はどうなる?

新型コロナウイルスによる突然の出勤停止や休業・・・その場合の給与はどうなる? 労働災害
労働災害

毎日のように話題を集めている新型コロナウイルスですが、“自身には関係ない”とも言えないほど感染者増加のニュースを目にします。

感染が広がらないためにも、体調が少しでも悪い場合には会社を休むことや、検査を受けに行くなどの処置をとっている方は多いかと思います。会社によっては、感染予防の1つとして発熱、咳などの症状が見られる従業員へは「出勤停止」を命じる会社もあるのが現状です。

また、観光客減少により売上が減少してしまう事業も少なくありません。自身は元気であっても、事業の売上減少に伴い労働を制限されてしまうなんてこともあります。

もしも新型コロナウイルスで出勤停止や休業となってしまい働けなくなった場合、その間の給与はどうなるのか、活用可能な制度などは存在するのか、について見ていきましょう。

1.季節性インフルエンザと新型コロナウイルスの出勤停止の違い

新型コロナウイルスと似た感染症の季節性インフルエンザですが、季節性インフルエンザにおいても出勤停止といった言葉を耳にするかと思います。ですがこの二つの感染症には出勤停止において大きな違いがあります。

季節性インフルエンザに感染した場合…

季節性インフルエンザと診断を受けた場合でも、出勤停止が法律で定められているわけではありません。そのため診断後の処置は会社で決められているルールに従う形になります。

多くの会社で感染後に取られる処置としては、診断書の提出や医師からの診断書に書かれている出勤停止期間での出勤は禁止し、出勤停止期間が終了した後に出勤が可能、ということが一般的です。

新型コロナウイルスに感染した場合…

新型コロナウイルスと診断された場合、「指定感染症・検疫感染症」に指定されているため、法律で強制入院および隔離措置が定められています。会社への連絡後は、医療機関の指示や法律に従った措置をとらなければなりません。

ただし、季節性インフルエンザと違い治療費は公費負担となるため感染したことによる治療費用は掛かりません。また、退院や出勤制限についても国である厚生労働省から各自治体に向けた通知が出されているため、その指示に従う形になります。

 

2.状況別の出勤停止時や休業時の給与について

新型コロナウイルスに感染したことによる出勤停止

新型コロナウイルスの感染による出勤停止は、法律や都道府県知事が定める就業制限によるもののため、会社に対して休業手当を請求することはできません。しかし、要件を満たすことにより「傷病手当金」の支給対象となる可能性があります。

傷病手当金とは、健康保険法上の制度の1つで、勤務している会社で健康保険へ加入していることが前提です。そして下記の条件を満たすことで賃金の3分の2の金額が支給されるというものです。

(1)業務外の事由による病気・ケガの療養のための休業であること

(2)仕事に就くことができないこと

(3)連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

(4)休業した期間について給与の支払いがないこと

引用元:全国健康保険協会HP

会社が協会けんぽに加入していなかったとしても、健康保険組合に加入していれば同様の制度があり、申請方法は会社もしくは加入している協会けんぽ、健康保険組合に問い合わせて確認してみましょう。

また、新型コロナウイルスが業務上においての疾病だと認められた場合、「業務災害」として認定される可能性もあります。この場合には、労災保険から休業補償給付として賃金の60%、及び休業特別支給金として賃金の20%を受給することができます。業務災害としての認定には仕事が原因となって疾病したということが認められる必要があり、下記のような業務遂行性が前提条件として認められなければいけません。

(1)事業主の支配・管理下で業務に従事している場合

(2)事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合

(3)事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合

引用元:厚生労働省 福島労働局HP

どのような経緯で感染に至ったのかが曖昧な分、業務との関係を立証することは難しいかもしれませんが、診断を行った医師や医療従事者などには「労働者災害補償保険(労災)」を適用することが妥当とされています。

会社の判断による労働者への出勤停止

会社の判断で出勤停止を指示され休業となった場合は、会社に対して平均賃金の60%以上である「休業手当」を請求することができます。これは労働基準法26条の〈使用者の責に帰すべき事由〉に基づく休業になるため、会社側には支払い義務があります。感染の拡大予防のために発熱の症状がある従業員に対して出勤停止を命じることがこれに該当します。

災害などによる不可抗力で休業を余儀なくされた場合以外の休業は、この〈使用者の責に帰すべき事由〉に含まれるものと考えられており、休業手当の請求が可能です。反対に、自然災害など様々な手を使っても従業員を就労させることができないという場合に限り、会社側は支払いの義務が免除されます。

“新型コロナウイルスの感染疑いがあり、検査を受けたが陰性だったので就労が可能”という場合でも、会社からの判断で出勤停止を命じられた場合には休業手当を請求することができるので覚えておきましょう。

労働者の意思で自主的に休んだ

会社からの出勤停止を命じられたわけでもなく、自主的に体調不良により会社を休んだ場合には、休業手当を会社側に求めることができません。また、何らかの症状があるが会社を休んだら収入面が不安で休めないという方もいるかもしれません。

この場合は、上記の“新型コロナウイルスに感染したことによる出勤停止”内でも記載した「傷病手当金」の支給対象となります。協会けんぽもしくは健康保険組合に加入し、条件を満たすことで賃金の3分の2が支給されるというものです。

長期休暇をとったからといって必ず無収入になるわけではないため、自身の身体や周囲のことも考え、体調が悪い際は無理をせず休暇をとるようにしましょう。また、有給休暇が多く残っている場合には賃金を全額受け取ることができる有給休暇を先に取ることを考えてみましょう。

事業の売上低迷による休業

新型コロナウイルスの感染が拡大することにより、観光客の減少と比例して売上の減少、経済活動の面での縮小にも大きく影響します。売上の減少や経済活動の縮小により、従業員が休業を言い渡される状況も少なからずあるでしょう。

このような場合においても、上記の労働基準法26条〈使用者の責に帰すべき事由〉が当てはまり、「休業手当」を請求することができるのです。しかし、従業員が休業手当を請求したとしても、休業にならないために会社が様々な努力を重ねた結果、休業とするしかなかった場合には会社側の支払い義務が免除されます。

また、今回の感染拡大の影響を受け、厚生労働省は売上の低迷や業績が悪化した企業に向けた下記の助成金特例を設けました。この特例は、止むを得ず経済活動の縮小を強いられた企業が従業員に対して一時的休業、教育訓練などを行い雇用維持の努力を図った場合に休業手当の一部が助成されるというものです。

厚生労働省:雇用調整助成金の特例

まとめ

新型コロナウイルスの感染疑いや予防措置などによる予期せぬ休業や出勤停止、生活していく上で収入面に不安を感じる方も多いかと思いますが、労働者の生活を守るためにも法律や制度は存在します。不安な方は社会保険労務士などの専門家や支援機関に相談してみることも一つの方法です。

また、同じような悩みを抱えた労働者が無料で相談できる窓口を各都道府県の労働局が設置しています。法律や制度、無料相談などの活用で収入の不安も解決していきましょう。

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