休職中は、その休職について労災が認められた場合には、労災保険から休業補償給付を受けることができます。また、労災とは言えないような事情の場合には、健康保険の傷病手当金の制度を利用することが出来ます。ただし、健康保険料や住民税は支払う必要があります。
ここでは、休業期間中も負担しなければならない保険料や税金についてご紹介します。
1.休職中の労働保険料
休業した場合には、労働保険料を負担する必要はありません。
労働保険料には、労災保険料と雇用保険料がありますが、労災保険料は全額が会社負担となりますので、休職している労働者がいるかどうかについては実務作業上、ほとんど影響がないと判断されます。
雇用保険料については、失業等給付について労働者の負担分はあります。ただし、休職によって支給される賃金がない場合には、雇用保険料も発生しません。また、健康保険から傷病手当金が支払われていた場合であっても、傷病手当金は賃金とはなりませんので、傷病手当金に対して雇用保険料は負担する必要はもちろんありません。
2.休職中の社会保険料
社会保険料については、休職となった場合でも健康保険が適用されます。そして必要な給付を受け取ることが可能なので、厚生年金も適用対象となります。
ただし、それぞれの保険料は納付する必要があります(※育児休業に基づく社会保険料が免除されることは除く)。
このときの納付の方法については、毎月振込依頼書などで会社に口座に本人負担分の金額を振込む方法がほとんどです。ただし、休職している労働者は通常、収入が大幅に減少していて、社会保険料の支払いが負担になってしまう可能性もあります。そこで、労働者の負担する分の保険料を会社が立て替えて負担し、労働者が休職後復職した際に分割して労働者に請求するという方法をとる会社もあります。
3.休職中の所得税
休職中の所得税は原則として、納付する必要はありません。
所得税は、実際に支給される賃金から社会保険料を控除した後、扶養家族の人数を考慮した所得税額表に当てはめて計算されます。
つまり賃金が支給されていない場合には、所得税も発生しないことになり、納付する必要はないことになります。
その後、本人負担分の社会保険料を会社から請求されて支払っている分を含めて計算し、年末調整で清算される手順となります。
4.休職中の住民税
休職中の住民税は、会社に対して支払う必要があります。
住民税は、毎月6月から翌年5月までの間に支払うべき金額が決められていて、通常では会社側が賃金から控除して同一市区町村の住所に住んでいる人の分をまとめて納付しています。
休職中で賃金が支払われていない場合には、会社側が休職している労働者に請求し、労働者が、会社に対して支払うという手順になります。
ただしこの場合も、社会保険料の時と同様に、休職している労働者は通常、収入が大幅に減少しているので、住民税の支払いが負担になる可能性もあります。
その際は、会社に返済方法について相談してみましょう。状況に応じて分割払いなどに応じてくれる会社もあります。
5.休職中にもらえる手当
以上のように、休職した場合でも、社会保険料や住民税は支払う必要がありますが、休職中にもらえる手当もあります。
これらの手当は申請しないと支給されない場合もありますので、注意が必要です。
(1)労災の休業(補償)給付
休職した病気やケガが労災と認められた場合には、労災保険から休業補償給付を受けることができます。
休業補償給付の額は、給付基礎日額(通常、平均賃金に相当する額)の60パーセントです。
(2)社会保険からの手当
労災とは言えないような事情の病気やケガの場合には、健康保険の傷病手当金の制度を利用することが出来ます。
傷病手当金とは、健康保険の被保険者(労働者)が業務外の病気やケガで労働できなくなり、その間の賃金をもらえなくなった場合にもらえる手当金です。
傷病手当を受給するためには、「傷病手当支給申請書」に病院の証明書を受けて申請する必要があります。
ただし、健康保険の傷病手当金や、労災の休業(補償)給付がもらえる場合には、いずれも働くことができない間の生活保障を行うものであることから、傷病手当と二重に受給することはできません。
なお、労災で支給される休業補償や障害補償は非課税とされていて、それに対して所得税がかかることはありません。一方、会社都合で休業した際に支払われる休業手当は給与所得になるため、通常の賃金と同様に所得税を計算した額が変遷控除されて支払われることになります。
以上、休業期間中も負担しなければならない保険料や税金についてご紹介しました。
休職中は、身体の回復を第一に考え、健康保険の傷病手当金や、労災の休業(補償)給付などの支給を受けながら、ゆっくり転職や復職の準備を進めるようにしましょう。
なお、パワハラやセクハラなどが原因でケガをしたりうつ病などを発症している場合には、加害者に対してだけではなく会社に対して損害賠償を請求できる可能性もあります。
一人で悩みを抱え込まずに、まずは労働問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。