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深夜残業とは夜10時から翌朝5時までの間の時間に発生した残業を言います。深夜残業は通常の残業で支払われる時間外手当よりも割増率が高くなります。
今回は、残業と深夜残業の違いと深夜残業による手当の計算方法などをご紹介します。
1.残業と深夜残業は何が違う?
まずは残業と深夜残業の違いを確認しておきましょう。
(1)残業とは・・・・
残業は正確には時間外労働です。時間外労働には手当が支給されます。では時間外労働の「時間」は何を指しているのでしょうか?
時間外労働の「時間」は「法定労働時間」を指しています。つまり、法定労働時間を超えた時間が時間外労働となります。法定労働時間は「1日8時間、週40時間」と定められていますので、この時間を超えた部分をいわゆる残業と言います。
◯ 所定労働時間を超えても残業にならないこともある!
会社によっては所定労働時間を定めているというところもあるでしょう。
このようなケースでは、所定労働時間を超えて働いても残業にならないという場合があります。先に述べたように、残業(時間外労働)の定義は、「法定労働時間を超えて働いているかどうか」ということになります。
そして、所定労働時間は法定労働時間を超えないように設定するというルールがあります。
したがって、所定労働時間が法定労働時間に満たない可能性があります。このようなケースでは所定労働時間を超えて働いても労働時間が法定労働時間内の場合には残業に該当しない場合があります。
わかりやすく、図で説明します。
(2)深夜残業とは・・・・
深夜残業は、時間外労働による労働時間が22時~翌5時までの時間帯にかかり、かつ、法定労働時間を超える時間外労働がある場合を言います。
労働基準法では深夜労働に対して以下のように定めています。
引用:労働基準法第37条第4項
使用者が午後10時から午前5時までの間において労働させた場合においては、その時間の労働については通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払われなければならない。
つまり、午後10時から午前5時までの間に労働に対しては割増賃金を支払う必要があります。そして、時間外労働に対しては時間外労働の手当(残業代)を支払う必要がありますから、深夜残業の場合には、深夜手当と残業代の2つの手当を支給する必要があるということになります。
2.深夜残業に対する手当を正しく理解しよう
深夜残業は深夜手当と時間外労働手当の2つの手当が発生します。
通常の残業代は1時間あたりの賃金の1.25倍ですが、深夜残業の場合には、この残業代にプラス深夜手当(1時間あたりの賃金の0.25倍)が加わり、1.5倍の手当が発生します。
具体的に残業代を計算してみましょう。
(1)残業代の計算方法
ステップ1:基礎時給の算出
残業代を計算するためには1時間あたりの賃金(基礎時給)を算出する必要があります。基礎時給の計算は以下の算出式を用いて計算します。
ステップ2:残業代を計算する
基礎時給が算出できれば、あとはそれぞれの割増率と残業時間をかけることで残業代を計算することが出来ます。
(2)例を使って計算してみよう
では、具体的に例を使って深夜残業を計算してみたいと思います。
Aさんは基本給が17万円、職務手当が3万円、1ヶ月の平均所定労働時間は175時間、1ヶ月の残業が80時間でそのうち20時間が深夜残業でした。
Aさんの1ヶ月の残業代は120,015円となります。このように、残業代の計算は比較的簡単です。もし、残業代が少ないと感じたら、一度計算してみましょう。
未払いの残業代は過去2年分まで請求することが出来ます。
3.深夜残業で間違った理解をされているケース
深夜残業では意外と間違った理解をされているケースがあります。ここでは、間違った理解をされやすい部分をまとめてご紹介します。
(1)管理職の深夜残業
管理職という立場の場合、残業代が発生しないため、深夜残業をしても給与は変わらないと思われている方が多いです。しかし、深夜残業は残業代と深夜手当の2つの手当が発生します。
つまり、残業代は出ない場合でも、深夜の労働に対する深夜手当は発生します。管理職という立場であっても、急な対応等によって深夜勤務が発生した場合には、深夜手当を支払われると覚えておいて下さい。
-ここでポイント!-
世の中には「名ばかり管理職」という立場が横行している。
名ばかり管理職とは、労働基準法で定められている「管理監督者」とは異なる、企業が独自の基準で設定した管理職を言います。管理職=残業代の適用対象外という認識だけが広がり、本来の管理監督者という意味と異なる解釈をされているケースが多いです。
名ばかり管理職の方が深夜残業を行っている場合には、深夜手当以外に残業代が請求できるケースもあります。
管理職についての詳細に関しては下記をご確認ください。
(2)固定残業やみなし残業
最近では、固定残業やみなし残業など、あらかじめ残業代を給与と一緒に支払っているというケースが増えています。
このように、あらかじめ残業代を受け取っているという方の場合であっても、支払われている手当は残業代ですから、深夜残業の場合には深夜手当は別となります。
また、固定残業やみなし残業であっても、固定残業時間・みなし残業時間を超えた部分に対しては残業代も発生しますので間違えないようにしてくださいね。
固定残業・みなし残業の残業代については下記をご確認ください。
固定残業代(いわゆるみなし残業)の問題点|未払い賃金の計算方法
(3)女性の深夜残業
実は以前は女性の深夜労働は原則として禁止されていました。平成11年4月の法改正によって撤廃されました。
しかし、妊産婦に対しての深夜労働に関しては、改正後の労働基準法で以下のように定められています。
引用:労働基準法第66条
妊産婦が請求した場合、使用者は、時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはならない
現在の労働基準法は女性だから深夜労働をしてはいけないという決まりはありませんが、妊婦さんなどは拒否することが出来ます。それ以外にも、女性が深夜に仕事をする場合には、防犯処置や休憩・仮眠等のスペースを男女別に設けるなどの対応が必要となります。
まとめ
深夜残業が発生した場合、労働者は残業代と深夜手当の2つの手当が発生するということを理解しておくようにしましょう。
残業代に関しては、契約等によって必ず支払われるというわけではありませんが、深夜手当は必ず支払われる手当です。深夜手当に該当する時間に労働したにも関わらず、深夜手当が支給されていないという場合には、未払い賃金の請求を行いましょう。