未払い残業代を請求する請求書のひな形はさまざまありますが、請求書に記載すべき項目は決まっています。
今回は、残業代請求をするためのベストな書類の書き方をご紹介していきます。
1.残業代の請求書の書き方 ポイント
請求書は、内容証明郵便で送付することになるため、必要項目はしっかりと入れ、かつ簡潔にまとめるようにしましょう。
残業代の請求書の効果的な書き方には、2つの大きなポイントがあります。
一つ目のポイントは、残業代を請求する意志をしっかりと相手に伝えることです。
これは、ただ単に請求する気持ちを伝えるだけでは、相手を説得する強さに欠けます。もしも、相手に支払いの意志がないならば「法的な措置をとるつもりである」ことまで伝える必要があるのです。「法的な措置」という言葉を使うことで、会社としては残業代を支払った方が損害は小さいと判断する可能性があります。
そして二つ目のポイントは、残業代請求の時効を遅らせることにあります。残業代は、振り込まれるはずだった日から2年が経過すると請求時効を迎えます。書面(内容証明郵便)で残業代の請求意志を伝えることで、時効を遅らせることができるのです。それでは、2つのポイントを踏まえたうえで具体的な書き方を解説します。
【 】内には日付が入ります。日付は月日だけでなく年月日を記入してください。
【送付する日付】(右寄せ)
非通知人(左寄せ)
会社所在地 ○○県・・
会社名 株式会社○○
代表取締役名 ○○様
通知人(右寄せ)
通知人住所 ○○県・・
通知人名 自分の氏名 印
請求書(中央寄せ)
私は、【入社日】に貴社に入社し【退職日】に退職したものです。
私は、【時間外労働開始日】から【時間外労働最終日】までの間、合計○時間の時間外労働を提供しました。
しかし私は、いまだに時間外労働に対する割増賃金○円の支払いを受けていません。
よって貴社に対し、時間外労働に対する割増賃金○円の支払いを請求します。
つきましては時間外労働に対する割増賃金○円と、これに対する○年○月○日(支払いが滞り始めた給料日もしくは退職日)から支払い済までの商事法定利率6%の遅延損害金を下記振込先に振り込む方法によってお支払いください。
支払期限 【支払期日(請求書到着日から1週間から3週間以内もしくは「本請求書到着後○日以内」とする)】
振込先 銀行名 支店名
普通預金 口座番号 口座名義人
もしも支払期限までに支払いいただけないときには、労働基準監督署に申告、民事裁判や刑事告訴などの法的手段をとらせていただきます。
あらかじめご承知おきください。
以上(右寄せ)
上記の請求書では、本来残業代を支払うべき日を過ぎた日数にたいして、損害遅延金も請求しています。
損害遅延金の利率は、雇い主が会社であるか個人であるかによって異なり、雇い主が個人の場合、利率は5%になります。また例に挙げた請求書の残業代は、法定時間内での残業であったと仮定しています。
1日8時間以上、週40時間以上の「法定時間外の残業」の場合には、残業代は25%増になるため注意してください。
請求書とあわせて、残業代請求の根拠となるタイムカードや就業規則と雇用契約書の写しも送付します。
もしも手元にタイムカードなどがない場合には、タイムカードなど各種証明書もあわせて請求しましょう。
各種証明書を請求するときには「本件の速やかな解決のため、給料明細とタイムカードと雇用契約書・源泉徴収書の開示を請求します。」と追記しておくといいでしょう。
さらに「時間外労働に対する割増賃金の請求は労働基準法第24条・各種証明書の開示は労働基準法第22条4項に明記されており、貴社は請求にこたえる義務があります。」と書いておくと説得力が増すでしょう。本来ならば、残業代を算出した根拠となるタイムカードがあればいいのですが、ないときには自分で作成したメモでもやむを得ません。メモには、残業した日付と時間と仕事内容を記入しておきます。
2.内容証明の方法は?
まず、送付する文書3通、準備しましょう。
1通は実際に送るものです。これだけなら想像がつくかもしれませんが、内容証明の場合には、郵便局と差出人が送付した文書を保管するために1通ずつの文書も必要です。ですので、文書は都合3通、準備する必要があるのです。
内容証明を送付するための封筒ですが、どのような封筒を用いても問題はありません。ただし、料金を少しでも安く済ませようと思うのであればA4サイズの用紙を三つ折りにして収納できるような封筒を使って下さい。
あとは、郵便料金と印鑑があれば準備完了です。
ただし、ここで注意したいことは、文書を入れた封筒に封をしないということです。なぜなら、内容証明で送付する文書は、郵便局で送付文書の内容を確認するという手続きが入るためです。封をした状態で郵便局に文書を持っていかないように、気をつけて下さい。
3.内容証明を送付するにはいくら必要?
定型内の内容証明を発送するために最低限必要な料金は1252円です。
内訳としては、
・基本料金(82円)
・内容証明郵便料金(430円)
・書留料金(430円)
・配達証明料金(310円)
です。
なお、この最低料金は、1枚の文書を内容証明で送付する場合に限った話です。
文書の枚数が1枚増えるごとに260円必要です。
つまり、3枚の文書を内容証明で送付する場合には、内容証明郵便料金だけで950円(430円+260円+260円)が必要になるということです。
4.内容証明書を出せない郵便局がある!
実は、内容証明はどこの郵便局でも発送できるというものではありません。ですから、内容証明を発送しようと思っている郵便局が内容証明を出せる郵便局なのか、日本郵政グループのホームページで事前確認するようにしましょう。
もし、近くに内容証明を出せる郵便局がないとなっても気を落とさないでください。パソコンで送付文書を作成してインターネットで送信すると郵便局が送付手配をしてくれるという「電子内容証明サービス(e内容証明)」というものもありますので、活用してみて下さい。
まとめ
残業代を請求するときには、どのように書類作成すればよいかをご理解いただけたでしょうか?
残業代請求は、ご自身でやることもできますが、労働問題に強い弁護士に相談した方が確実でしょう。
相談だけでもよいので、してみることをお勧めします。