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退職強要とは、会社が労働者に自分から辞めると言わせるために、嫌がらせやいじめを行うことです。
密室で数人で取り囲んで退職を迫ったり、仕事を全く与えないなどして精神的に追い込む行為は退職強要に該当します。
近年、このような退職強要で労働者に自ら退職届を書かせようとする退職強要のトラブルが増加しており、社会問題として注目されています。
1.退職強要とは
退職強要とは、さまざまな嫌がらせを行い、労働者が自分から退職するように追い込むことです。
退職強要の手口はさまざまで、プロジェクトからを外したり、劣悪な環境に追いやったり、遂行不可能な仕事を与えて嫌がらせを行うなどのほか、「この職場に君の居場所はないよ」と執拗に退職を迫るなどするケースもあります。
このような退職強要は、民法の不法行為として損害賠償(慰謝料)などを請求できる場合があります。また、数人で取り囲んで退職を迫るなど悪質なケースであれば、刑法の強要罪(223条)に該当する可能性もあります。
過去の事例としては、産前休暇(6週間以内に出産する労働者が請求することによって取得できる休暇)を認めないで、会社が労働者に退職を勧めたケース、HIV(エイズ)感染者に対して退職をするよう執拗に迫ったケースが退職強要と認定されました。
(1) 退職勧奨との違い
退職勧奨とは、会社が労働者に退職するよう求めることです。
退職勧奨自体は違法ではなく、「退職しないか」と勧奨することは問題ありません。
しかし「勧奨」と言える限度を超えて嫌がらせをするなどした場合には、「退職強要」となり違法です。
どこまでが退職勧奨でどこからが退職強要なのかについては、明確な基準はないので、判断する場合には、さまざまな証拠や状況からケース・バイ・ケースで判断していくことになります。
(2) 解雇との違い
解雇は会社から契約解消をする申し込みです。
解雇された場合には、退職理由は「会社都合退職」となります。
これに対して退職強要は、労働者が自ら退職するよう追い込む行為で、労働者が退職強要に耐えかねて、自ら退職届を提出してしまったりすると、退職理由は「自己都合退職」となってしまいます。
退職理由が会社都合となるか、自己都合となるかについて、は失業保険を受ける際に大きな差が出てきますので、注意が必要です。
会社を退職して失業状態になった際は、一定の条件を満たしていれば、雇用保険から失業保険の給付を受けることができますが、この場合退職理由が会社都合か自己都合かによって支給される期間などに差が出てしまうのです。
会社都合退職は自己都合退職に比べて優遇されていて、失業給付金が自己都合よりも3か月早く支給されます。また解雇の場合には、会社から最大30日分の給与に相当する解雇予告金が支払われることもあります。
2. 退職強要された時の対処法
退職強要された場合も、退職勧奨された場合も、承認するかは労働者の自由なので、「辞めません」と言ってそのまま働き続けることができますし、会社に退職強要された結果、損害を被った場合には、会社に損害賠償請求をすることもできます。
(1) 拒否する
退職強要・退職勧奨いずれの場合にも、退職する意思がないのであれば、「いいえ辞めません」ときっぱり拒否するのが一番良い方法です。労働者が退職勧奨を受け入れなければ労働契約が解消されることはありません。
(2) 証拠を準備する
退職強要された場合には、証拠が大変重要です。
後々労働審判などで、退職強要があったかどうか争われることになった場合には、退職強要行為があったことを、労働者の側で立証していく必要があるからです。
嫌がらせやいじめなどの退職強要があった事実については、録画や録音をするなどして、可能なかぎり証拠を集めておきましょう。
暴力を振るわれたのであれば、診断書があると有力な証拠となりますし、もし執拗な退職強要が理由で、うつ病などを発症してしまった場合には、労災が認められる場合もあります。
そのような場合には、クリニックを受診して診断書をもらっておきましょう。
(3) 退職届は出さない
退職強要されても、退職届は提出する必要はありません。
「しまった、もう提出してしまった……」という場合でも、諦めずに弁護士に相談して下さい。状況次第では退職届の取り消しや無効を主張できる場合もあります。
退職届を撤回したい場合には、後から「そんな撤回はされた覚えがない」と言われることがないように、内容証明郵便などで退職届を撤回する旨の通知をするとよいでしょう。
(4) 慰謝料請求する
退職強要は、労働者が自分の自由な意思で「働き続けるか」「退職するか」を決めることを阻害する違法な行為です。
ですから退職強要されたことに対して差止め請求をすることもできますし、慰謝料を請求することができる場合もあります。
ただし慰謝料を請求する場合には、あまりに多額の慰謝料を請求すると、会社にも裁判所にも認められずに、かえってトラブルが長引く可能性もあります。
どの程度の慰謝料が相場なのかについては、弁護士などの専門家の意見を聞くことをおすすめします。
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