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パワハラは、人格や尊厳を傷つける行為であり、働きやすい職場の環境を阻害する許されない行為です。
このようなパワハラは、どのような職場でも起こり得るものですが、独立行政法人労働政策研究・研究機構が平成24年4月に発表した「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント対策に関する労使ヒアリング調査」によると、パワハラが起こる職場の背景・原因には、いくつかの要素があると指摘されています。
それぞれの要素は、それが単独でパワハラの原因となっているわけではありませんが、ひとつひとつの要素が相互に密接に関連して、パワハラ発生の原因になるとしています。
ここでは、パワハラが起こりやすい職場、要素などについてご紹介します。
1.パワハラが起こりやすい職場
パワハラは、どの職場でも起こり得る問題です。
独立行政法人労働政策研究・研究機構が平成24年4月に発表した「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント対策に関する労使ヒアリング調査」によると、パワハラが起こる背景・原因には、過重労働とストレス、職場のコミュニケーション不足、成果主義、雇用形態の多様化などがあるとされています。
参考資料:
「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント対策に関する労使ヒアリング調査」
ここでは、そのなかでも特に問題が大きくなる可能性がある要素について、ご紹介します。
(1) 過重労働とストレス
職場というものは、もともと過酷な状況下に置かれることが多いですし、最近は不景気も続くなか、整理解雇や早期退職を促す企業も多くあります。
しかし、整理解雇や早期退職で人員を減らしても業務量が減るわけではないケースも多く、結局残った従業員が担当する仕事量が大幅に増えてしまい、結果的に残業時間が増える等、過重労働が発生してしまうケースがほとんどです。このような場合には、従業員のストレスも増大し、職場で優位に立つ者のパワハラが横行しやすい状況になってしまいがちです。
また、企業側にも社内の状況を把握する余裕がなくなり、パワハラ問題の存在に注意を払うことができなくなってしまう可能性もあります。
過重労働とストレスで疲労が蓄積すると、判断能力が衰えてしまうことは、数々のデータからも判明しています。十分な休養がとれずに、ついイライラして人格を否定するような心ない言動を行うことで、パワハラ問題に発展するケースは決して珍しくないのです。
(2) 職場のコミュニケーション不足
円滑な人間関係を構築するためには、話しかける、話を聞くというコミュニケーションが欠かせません。
「話かける」という行為は、相手の存在を認め、気にしているというメッセージになります。困っていることはないか、悩みがあれば聞く姿勢は、業務が進む中で問題点を把握し、的確なアドバイスをすることにつながります。
また、「相手を褒める」という行為も有効です。
相手の成果を認めて評価することは、「自分の仕事は成果を出している」「このやり方で進めて間違いない」という自信につながり、良好な人間関係を構築するのに効果があります。
(3)成果主義
一定のノルマを課すなどの成果主義をとっている職場は、パワハラ行為が起こりやすい環境といえます。なかには、到底遂行不可能なノルマを強制するようなケースもあり、そのノルマをこなすために、無理をして体調を崩してしまうケースも多々あります。
仕事上で必要な教育・指導の範囲内でなされる行為であれば、パワハラにはなりませんが、能力や経験とかけ離れたようなノルマを強制する行為は、パワハラに該当する可能性がありますし、パワハラ問題が起こる可能性も非常に高いといえるでしょう。
(4) 雇用形態の多様化
現代は、正規雇用、非正規雇用、派遣、業務委託など、さまざまな雇用形態が存在します。このような、さまざまな立場の労働者が働いている職場では、仕事の内容や賃金、労働時間などの面で大きな格差が生じていることもあり、円滑な人間関係が構築できずに、職場がコミュニケーション不足に陥ることがあります。
とくに、賃金面などのデリケートな問題では、ちょっとした発言から意思の疎通が難しくなり、パワハラ問題に発展するケースがありますので、注意が必要です。
一般的にパワハラというと、正規社員から非正規社員に対して行われるというイメージが強いものですが、古くからいるパートが新しく赴任してきた新人の正規社員に対して集団で無視をしたり、指示に従わず業務が滞るなどのパワハラ問題が発生することもあります。
(5) 閉鎖的な職場
外部企業とあまり接触がない職場や、社内で交流が少ない部署などは、人間関係が固定しやすくなり、パワハラが起きやすくなります。
その職場独自の考え方やルールが当たり前のようになってしまい、一般的に見ればパワハラに当たるような行為なのに、冷静かつ客観的な判断ができなくなってしまっていて「こんなことは当たり前」という流れを作りがちになってしまうです。
「これが絶対正しい」「このやり方が当たり前」という考えは改め、改善すべき点は改善しようとする姿勢が重要です。
(6) ハラスメント意識の欠如
パワハラの行為者のなかには「パワハラなんて心外だ」「自分では指導・教育のつもりだった」というケースも多々あります。
パワハラ被害を予防するためには、どのような行為がパワハラに当たるのか、具体的な指示が適切・的確なものであったか、一方的で強圧的な指示をしていないかなどを、具体的に振り返ってみることが大変重要です。
2.企業のハラスメント対策
これまで述べてきたような要素を改善し、パワハラ問題を予防するためには、会社としてパワハラ対策を講じることが大切です。
そのためには、どのような行為がパワハラに該当するのかを従業員にしっかりと示したうえで、個々の従業員の意識を高めていくことが重要となります。
ひとたびパワハラ問題が発生すれば、企業としてイメージダウンにつながりますし、優秀な人材の流出してしまう可能性もあります。
また、パワハラの被害者は加害者のみならず、会社も不法行為に基づく損害賠償を請求される可能性があります。
(1) 研修・教育の実施
パワハラは、コンプライアンス、コミュニケーション能力、マネジメント能力と関連が深い問題です。これらの研修と同時にパワハラの研修を行うことは、パワハラ問題防止に非常に効果があります。
(2)相談窓口の設置
会社にハラスメント問題について相談できる窓口を設置し、ハラスメント対策の取り組み内容を周知することで、「職場のハラスメントについて」の会社の姿勢を明確にできます。
相談窓口を設置する場合には、相談内容や調査内容は守秘義務によって守られていることを記載し、不利益な取り扱いが為されないことも併せて周知することが大切です。
以上、パワハラが起こりやすい職場やパワハラが起こる要素についてご紹介しました。
前述したとおり、パワハラは被害者のみならず会社にとっても非常にリスクの高い問題です。パワハラ問題を予防するためには、早々にハラスメント問題に詳しい弁護士に相談し、必要な措置などについてアドバイスを受けることをおすすめします。