月給とは、「1か月あたりいくら」で仕事をする給与形態です。
月給制の場合には、月によって休日の数や祝日など、労働日数や労働時間が多少異なっても、原則として毎月同じ額の給与が支払われます。
月給から残業代を計算するときには、まず月給から家族手当や通勤手当などの諸手当を除き、それから1時間あたりの賃金を換算して計算する必要があります。
ここでは、月給から残業代を計算する方法についてご紹介します。
1.月給と残業代の基礎知識
月給から残業代を計算する方法についてご紹介する前に、まず月給や残業の基本的な知識を押さえておきましょう。
(1) 残業とは
残業は、大きく分けて法内残業と法外残業の2種類あります。このうち法律上残業代を支払うべきとされているのは、法外残業です。
* 法外残業(法定時間外労働)とは法外残業とは、法律で定める労働時間(1週間に40時間、1日8時間)を超えた時間外労働のことです。 * 法内残業(所定時間外労働)とは法内残業(所定時間外労働)とは、契約や就業規則で定められた労働時間を超えている残業ではあっても、法定労働時間(1週間に40時間、1日8時間)は超えていない残業のことです。 法内残業は、法定労働時間を超えていないので、割増した残業代を支払う義務ないとされています(※ただし社内的には残業なので、就業規則などで割増した残業代を支払う」と規定されている場合などは、残業代を請求することができます)。 |
(2)月給制とは
月給制とは、会社員や公務員などに多い給与形態で、「1か月あたりいくら」で仕事をする給与形態のことをいいます。
月給制の場合、残業代などは月ごとに変動しますが、月によって労働日数や労働時間が多少異なっても、毎月同じ額の給与が支払われます。
2. 残業代の計算方法
残業代は「時間単価×残業した時間×割増率」で計算します。
したがって月給制の場合にも、まず1時間あたりの賃金を算出する必要があります。
(1) 基礎賃金から除外するもの
残業代を計算する際には、支払われた給与をそのまま基準にすればよいというわけではありません。支払われた給与のうち、家族手当、通勤手当、臨時に支払われた賃金(結婚祝いなど)などの諸手当については、給与から除外する必要があります。
同一時間の時間外労働に対する割増賃金額が、労働内容や量とは無関係な労働者の個人的な事情に対して支払われる、家族手当や通勤手当の額が含めてしまうのは、不都合だからです。
(2) 時間あたりの賃金
月給の場合に残業代を計算するためには、まず月給の額を1か月の所定労働時間で割り「1時間あたりの賃金」を算出する必要があります。
ここでいう1か月の所定労働時間は、「1日の所定労働時間×1か月の所定労働日数」で計算します。
* 1日の所定労働時間を算出する所定労働時間とは、労働契約上の始業時(労働時間の開始時)から終業時(労働時間の終了時)までの時間(所定就業時間)から、労働契約上の休憩時間を差し引いた時間です。
* 月における所定労働時間数を算出する月給制の場合には、「月における所定労働時間数」を算出する必要があります。 なおこの時には、「1年間におけるひと月の平均所定労働時間数」を算出する必要があります。休日や祝日などの関係で、月によって所定労働時間は異なるので、平均的な数値を出す必要があるからです。
* 年間の所定労働時日数を算出する月平均労働時間を算出するためには、まず年間所定労働日数を算出します。 すべての日は所定労働日、所定休日に分けられますが、さらに所定休日は、法定休日と法定外休日に分かれます。 法定休日とは、使用者が労働者に対して、毎週少なくとも1度は与えなければならないと義務づけられている休日(労働基準法35条1項)のことで、この法定休日に労働をさせた場合には、休日割増賃金が発生します。 法定外休日とは、労働基準法で規定されている週1度の法定休日のほかに、会社が就業規則や労働契約によって定めた休日のことです。 以上から、年間の所定労働時日数は「1年間の日数-年間所定休日数」で計算することができます。
* 年間所定労働時間数を算出する次に年間所定労働時間数(1年間の所定労働時間の合計)を算出します。 各労働日の所定労働時間が一定であれば、年間所定労働時間数は「年間所定労働日数×1日の所定労働時間」で計算できます。 年間所定労働時間数を算出したら、それを1年間の月数である12で割るので「年間所定労働時間数÷12」と計算します。 |
【月給から時間単価を計算するまとめ】
- 年間所定労働日数を計算する
1年間の日数-年間所定日数
- 年間所定労働時間数を計算する
年間所定労働日数(※上記1)×1日の所定労働時間数
- 年間所定労働時間数を12か月で割る
年間所定労働時間数(※上記2)÷12
- 時間単価を計算する
時間単価=月によって定められた賃金÷月平均所定労働時間数
(3)割増率
前述したとおり、残業は大きく分けて法内残業と法外残業の2つがありますが、このうち法外残業には、会社は法律上、時間外の割増賃金を支払う義務が生じます。
割増率は、下記のとおり時間帯ごとに異なります。
【労働基準法上の割増率】 * 1日8時間超または週40時間超……25%増し * 1か月60時間超の時間外労働…… 50%増し (※中小企業は当分の間、適用猶予) * 休日労働 ……35%増し ※上記の労働が深夜労働に及ぶときには、さらに+25%増し |
(4)計算例
前述した計算方法に従って、以下のAさんの残業代を計算してみましょう。
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会社員Aさん
所定労働時間:7時間30分
基本給は200,000円
通勤交通費10,000円
家族手当5,000円
職務手当3,000円
法定外普通残業時間が10時間
深夜残業が2時間
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1.まず、残業代に含まれる賃金は基本給と職務手当なので、通勤交通費及び家族手当は、基礎賃金からは除外します。
2.1時間あたりの賃金を算出します。
まず1か月あたりの労働日数を20日として、計算します。
「職務手当 30,000円」÷20日÷8時間=188円……1時間あたりの職務手当単価
「基本給200,000円」÷20日÷8時間=1,250円……1時間あたりの賃金単価
よって、1時間あたりの賃金は、188円+1,250円=1,438円となります。
3.通常残業代と深夜残業代を仕訳けします。
残業が深夜労働に及ぶときには、さらに+25%増しの割増賃金を支払う必要があるからです。
「1日8時間、1週間40時間」の法定労働時間を超えた時間は、1.25倍以上の賃金支払いが義務付けられていますので、1,438×1.25倍=1,798円となります。
そして法定超え残業代は、1,798円×10時間=17,980円
次に深夜残業時間の残業代について計算します。
深夜残業時間の残業代は、+25%増しの割増賃金を支払う必要がありますので、1,438円(1時間あたりの単価)×(1.25+0.25)=2,158円となります。
Aさんの深夜残業時間は2時間なので、2,158円×2時間=4,316円……これが深夜残業代となります。
以上から、Aさんの残業代の合計は、
17,980円(普通残業代)+4,316円(深夜残業代)=22,296円
となります。