パワハラ、セクハラ、不当解雇などの労働問題で悩んでいる人は、その悩みを1人で抱え込まずに行政や労働組合、弁護士に相談しましょう。
もちろん、人に相談することは勇気のいることですが、ブラック企業と戦う方法も悩みを解決する方法も、実はいくつもあるのです。
ここでは、ブラック企業と戦う方法をご紹介します。
1.ブラック企業の特徴
ブラック企業とは、過重労働や違法労働によって労働者を使い潰し、労働者の心身を危険にさらす悪質な企業のことです。
長時間労働やパワハラ、セクハラ、残業代の未払いなど問題は以前からありましたが、最近は違法な労働環境で労働者を使い潰すことを前提として若者を大量採用して過酷なノルマや長時間労働を押しつけ、労働者がうつ病などの精神障害を発症するようなケースが増えてきました。
「そんな会社は辞めて、転職すればいい」と簡単に言う人もいますが、真面目な人ほどノルマを必死にこなそうとしますし、長時間労働で心身ともに疲れている状況では、正常な判断力を失ってしまい、「辞める気力」すら残っていない人も数多くいます。
2. ブラック企業と戦う方法
過重労働や違法労働、パワハラ、セクハラ、不当解雇などの労働問題から自分の身を守るためには、ブラック企業に入社しないことが第一です。
ですから、入社する前にその企業の離職率が高くないか、残業時間や有給休暇の取得日数、会社に労働組合があるかなどは入社時にチェックすることは、ぜひおすすめしたいところです。
ただし実際には、入社時にブラック企業であるかどうかを見極めるのは簡単ではありません。入社して実際に働き始めてからでも、ブラック企業であることが分かれば、いつでも退職できるのだということも忘れないで下さい。
残業が続いたり過酷なノルマをこなそうとすることも必要ありませんし、パワハラやセクハラの被害に遭って自分を責める必要も全くありません。
決して自分一人で悩まずにまずはしかるべき相談窓口に相談し、戦う方法、解決方法を見つけましょう。
(1) 会社と交渉する
まずは個人で会社と交渉するという方法もあります。
交渉したうえでもし無反応であれば、内容証明で請求することになります。
内容証明郵便とは、いつ、誰から誰宛てに、どのような内容の文書が差し出されたかを日本郵便が証明するものです。
後々、弁護士が介入して交渉する場合や、行政機関や裁判手続きを利用する際にも証拠となりますので、利用価値があります。
(2)行政機関の利用
解雇、雇止め、配置転換など、労働問題に関する悩みについては、労働局・労働基準監督署や都道府県労働局総合相談コーナーなど、相談できる行政機関が多数あります。
特にセクハラやマタハラ問題については、雇用均等室が専門の相談窓口を設置しています。
■労働局
労働問題については、労働局の助言・指導・あっせんを利用することもできます。
都道府県労働局による「あっせん手続き」とは、労働者と事業主(会社)との間で、賃金、解雇、配置転換など労働条件について話し合いがまとまらない場合に、労働問題の専門家である第三者が介入し、事案に応じた具体的なあっせん案を提示する制度です。
あっせんは、原則として1回の期日で合意形成を図るため、あっせん委員は、両者に歩み寄りを求めながら合意形成を図ります。そのため、紛争の長期化を避けられるというメリットがあります。
ただし、この助言・指導には強制力はありませんし、あっせん案の提示にも強制力はありません。成立したあっせんは和解契約となります。
■労働基準監督署
労働基準監督署とは、都道府県に設置され、事業所に対する監督・指導を行う機関です。労働問題の告発があり、必要性がある場合には、是正のための指導や立ち入り調査を行い、行政指導を行います。また、これに従わなかったときは、会社名を公表することもあります。
(3)労働組合
労働組合とは、労働者が労働条件の維持や改善などを目的に組織した団体のことです。
この労働組合を通じて会社と交渉する「団体交渉」も労働問題を解決する有効な方法です。会社に労働組合がない場合でも、個々で加入できる合同労働組合(ユニオン)などに加入することもできますので、検討てみるとよいでしょう。
会社は、労働組合から団体交渉を申し入れられた場合、正当な理由なく交渉を拒否することはできなくなりますし、労働組合が労働問題について個人に代わって組合が会社と交渉し、労働条件の改善を集団で求めることは、「ひとりで戦っているわけではない」という強みが出て精神的な負担が和らぎます。
(4)弁護士に相談する
労働問題について、弁護士に相談するのはもっともおすすめの方法です。
まず「自分が働いている会社がブラック企業なのか」という点を確認することができますし、どのような解決方法があるかが知ることができます。
セクハラやパワハラの被害に遭った場合には、会社に職場環境を改善するよう求めることができますし、不当解雇されたのであれば、職場への復帰や、解雇後に生じたであろう賃金についても請求できますし、加害者・事業主に損害賠償を請求出来る場合もあります。
なお、弁護士に相談しようと思った時には、効率よく事情を説明するために、ブラック企業である証拠(録音、メモなど)を用意しておくとよいでしょう。
(5) 裁判手続きの利用
裁判手続きを利用して解決する方法としては、民事調停や訴訟、労働審判手続きなどがあります。
■民事訴訟
民事訴訟とはいわゆる「裁判」です。
民事訴訟を提起する際には、裁判所に訴状を提出することが必要です。この訴状には、「誰が誰を相手方として訴えるのか」「請求する原因は何か」「求める判決の内容は何か」「証拠方法(資料)が何か」などを明確に記載する必要があります。
そして、証拠の提出、証人尋問を経て、最終的には裁判所の判決または和解によって解決することになります。
■民事調停
裁判所で調停委員会が当事者から事情を聞き、お互いに合意できるよう調整を図る手続きです。調停が成立すると会社の財産を差し押さえることができます。
■労働審判
労働審判は、通常の裁判より低額で済み、原則として3回以内の期日で審理が終了するため、利用件数が増加している手続きです。
労働審判の判断に不服があり異議を申し立てると、通常の裁判手続きに移行します。
■仮処分
裁判による解決は、1年以上の長期に及ぶことが多くその間生活費に困る事態になることから、判決までの仮の賃金支払いを裁判所が命じてくれる場合があります。これを仮処分といいます。この仮処分手続きのなかで、和解によって解決することもあります。