残業代
所定労働時間を超えた業務時間を残業と言い、その残業に対して支払われる賃金を残業代と言います。残業代は法定内残業(法定労働時間内の残業)と法定外残業(法定労働時間外の残業)によって残業代の単価の計算方法が変わります。法定労働時間とは労働基準法第32条により定められた労働時間の上限を言います。
2017.07.29

残業代請求の時効起算点は「毎月の給料日」

労働基準法では、残業代などの賃金の請求権について、請求しないまま2年が経過すると、時効によりその請求権が消滅すると規定しています。

この2年を「退職日から2年」と誤解している人がいますが、2年という時効のスタート地点(起算点)は、「給料日の翌日」です。

つまり、未払いの残業代があるにも関わらず請求しないままでいると、毎月給料日に2年前の残業代が時効にかかってしまっていることになるのです。

未払いの残業代を請求したいと考えている人は、一刻も早く労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

1.そもそも時効とは

残業代請求権の時効について説明する前に、まず「時効」という概念について知っておきましょう。

時効とは、ある一定の事実状態が一定期間継続した場合、その事実状態が真実であるかどうかにかかわらず、その事実状態を尊重して権利の取得や喪失という法律効果を認める制度のことをいいます。

つまり残業代を請求できる権利があっても、請求しないまま時効がくれば残業代を請求する権利は消滅し、以降は残業代を請求することができなくなってしまうわけです。

2. 残業代請求の時効は2年

労働基準法第115条では「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。」と定めています。

そして、この消滅時効が成立するためには、基本的に以下の3つの要件が必要です。

① 権利を行使することができる時がきたこと

② その時から一定の時効期間が経過したこと

③ 消滅時効を援用したこと

未払いの残業代もこの115条で規定する「賃金」に該当しますので、未払い残業代請求権について2年の時効が経過し、会社が「消滅時効という制度を使います」として、時効がきたことについて意思表示した場合には、未払い残業代の請求権は時効により消滅して、請求できなくなってしまいます。

(1)時効の起算点は「給料日」

ここで問題となるのが「いつの時点から2年経過したら、請求権がなくなってしまうのか」という起算点の問題点です。

時効の起算点(時効期間のスタート地点)について、よく「退職日から2年以内に請求すれば、在職中の残業代を請求できる」と思っている人がいますが、2年の時効の起算点は毎月の給料日の翌日からなので、注意が必要です。

つまり、毎月毎月の給料日に2年前の残業代請求権が、消滅時効にかかっていることになります。

例えば、1か月で1日5時間の残業代が20日間払われていなかったAさんのケースで考えてみます。

Aさんの残業代を1時間あたりに換算すると、1時間当たり1,000円になるとします。

この場合Aさんの1か月の残業代は、「100時間×1,000(時間給)×1.25(割り増し分)=10,000円」となります。

つまり1か月で10,000円分の未払い残業代が発生していることになり、この10,000円が毎月時効にかかってしまっていることになるのです。

2. 2年の時効の例外

これまで述べてきたように、残業代請求権は原則として2年で時効消滅するとありましたが、例外的に2年の時効にかからないケースもあります。

(1) 実質3年の時効が認められるケース

2年間の消滅時効が完成している場合でも、不法行為による損害内相請求として請求してそれが認められた事例(杉本商事事件・広島高判・平成19年9月4日)や、取締役や監査役の善管注意義務ないし忠実義務違反により、第三者に損害を与えた場合にあたる(会社法429条)として、残業代相当額の損害賠償を認めた事例(昭和観光事件・大阪地判・平成21年1月15日)などがあります。

(2) 時効を援用しなかったとき

時効の援用とは、「時効の制度を利用する」という意思を相手に伝えることです。

これまで残業代の時効は2年間と説明してきましたが、厳密にいうと、会社側が、消滅時効2年間が経過した後に「時効の制度を利用する」と意思表示をして、時効の援用をすることで、時効が成立します。

たとえば労働者が時効にかかった10年分の残業代を請求した際に、会社側が10年間の残業代支払いに応じれば、時効を援用しなかったことになり、時効がかかった残業代についても受け取れることもあります。

3. 残業代請求の時効を止める方法

未払いの残業代を請求する権利は2年で消滅しますが、この時効を止めるには時効を中断する必要があります。

とくに時効完成時期が迫っている場合には、内容証明郵便によって支払い請求の意思表示(催告)をしたうえで半年以内に提訴するなど、時効中断のための措置を早急にとる必要があります。

(1) 内容証明郵便の送付

支払い請求の意思表示(催告)をすると、時効を6か月間成立させない効果があります。

この催告の証拠を残す方法は、内容証明郵便で行うのが一般的です。

 

内容証明郵便とは、いつ、誰が誰宛てに、どのような内容の文書を差し出したのかを日本郵便が証明するものです。

 

内容証明郵便には、「未払い残業代があり、その額が○○円であること」「すでに通知しているが回答がないため、改めて請求していること」を端的に記載するようにしましょう。

なお内容証明郵便は、後々の証拠にもなる文書なので、解釈が曖昧になるような記述は避けて余計なことは書かないように注意する必要があります。

郵送する前に、できれば弁護士などの専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。

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