大学教授によるハラスメント「アカハラ」とその対処法
目次
「アカハラ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。大学や大学院などで、教員から学生に対して行われる、嫌がらせ行為を総称してこう呼びます。一昔前まで、大学や大学院では、学生は教員の弟子のように働くことが当たり前だったという話も聞きますが、近年アカハラという言葉が広まり、大学のコンプライアンスが意識されるようになってきています。
アカハラとはどのようなもので、被害にあってしまったときはどうすればいいか、学生側の視点からまとめました。
1.アカハラとは
アカハラとはアカデミック・ハラスメントの略で、大学・大学院などの学術施設において、教員が学生に対して行う嫌がらせのことを指します。
アカハラの事例として、例えば以下のような例があげられます。
大学において、学生は非常に弱い立場にあります。まだ社会に出ておらず、異常性に気付きにくい学生を相手にするということに加え、学生は、教員に認められないと学業の単位の取得や十分な研究をすることができないので、いわば指導教員に人生の命運を握られている、というような状況にあると感じることもあります。
また大学院の研究室や大学のゼミは少人数の、いわば村社会で、「教員の言うことには従わなければならない」というような風土が形成されてしまう場合もあります。そのような状況で、教員による学生へのハラスメント発生するのです。
2.アカハラ被害にあったらまず相談
アカハラ被害にあっても、泣き寝入りする必要はありません。教員が権力をもとに横暴をふるうことはもちろん社会的にも法律的にも認められていないことですし、それを支援する相談センターが各大学に設置されています。
相談する機関として、以下のものがあげられます。
(1)大学の相談センター
「アカハラの相談」と聞いて、まず一番に挙げられるのは各大学に設置されている相談センターでしょう。大学によってはカウンセリングセンターなども併設し、より幅広い悩みを相談できるところもあります。
大学内にあり、手軽に相談できるというメリットがある一方で、やはり職員は「大学を守る」立場であり、相談員によっては十分な対処が受けられないというケースも存在します。
(2)NPOや公共の相談機関
あまり主流な方法ではありませんが、「NPOアカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」などの相談機関に相談することもできます。また、アカハラの域を超えて教育分野で不正や法律違反が行われている場合は、文部科学省の「公益通報窓口」などに通報することもできます。
3.対処する手段は「闘う」「逃げる」「受け入れる」の3パターン
結局、アカハラにあった時の対処するパターンは「闘う」「逃げる」「受け入れる」の3パターンです。どのような方法をとるか、しっかり自分の学生生活に向き合い、他者に相談しつつ決められるとよいでしょう。
(1)法的手段によって「闘う」
アカハラが悪質な場合、アカハラによって実際に被害を受けた場合は、弁護士に相談して法的手段によって争うこともできます。具体的には、損害賠償の請求、教員の退職・研究停止の要求、刑事責任の追及などを求めることができます。実際に、裁判でハラスメント行為が認められ、慰謝料の支払いが命じられた事例はいくつもあります。
しかし本当に法的手段に訴えることが最適なのかは、その人次第な部分が大きく、現にアカハラでの訴訟事例は職場のトラブルに比べてかなり少ないです。証拠を集めて時間をかけてでも、本当に訴えるだけのメリットがあるのか、弁護士とともに冷静に判断しなければなりません。
(2)退学、休学、転学、研究室の移動など、「逃げる」
アカハラにあった場合、「逃げる」というのも一つの手段です。窓口に相談しても対処がされない場合、疲れてしまって一刻も早く研究室を抜け出したい場合、無理に続けるのではなく、休学や研究室の移動などの手段でその場を去るのも対処法の一つです。
ただ指導教員によっては、他の移動先の研究室に自分の悪評を流されたり、推薦状を書いてもらえなかったりということもあるそうです。このような点についても、相談窓口などを活用しながら状況を客観的に見たり、またアカハラの証拠を集めたりして、研究室を移りたい理由を明確にして話すことが必要になります。
(3)教員を「受け入れる」
現実、多くの方がこの選択をするのではないでしょうか。法的手段をとったり、研究室を移動したりするのは大変なことであり、すべての人ができるわけではありません。学生として活動する以上、ある程度の人間関係は仕方がないとして、割り切ってしまうのも一つの手です。学校や研究室は、大人の転職よりはるかに自分の意志で移動するハードルが高いところではありますし、どうせ数年で終わるのだからとあきらめるのも時には大切かもしれません。
ただ、教員のアカハラをなかなか受け入れられないという場合もあると思います。その場合は他の学生と協力して教員に改善してほしい点を伝えたり、サークルに入ってリフレッシュする時間をとったり、カウンセラーに相談したり、教員とうまく付き合っていくための様々な対処法を模索してもよいのではないでしょうか。
4.安易なSNS等での発信や相手の中傷は避けよう
「この教授のやり方は不当だ」と思って、人を特定する形で教員の悪口を言ったり、研究室のやり方を非難したりすると、あなた自身が教員の名誉を侵害する「加害者」となってしまう可能性があります。
また、アカハラをするようなひどい教員が存在する一方で、思い込みや嘘で教授を批判する厄介な学生が存在することも事実です。教員を批判するあなたを見ている第三者は、あなたと教員、どちらに非があるのか一見わかりません。不用意に教員を誹謗中傷するのではなく、周りの人や相談員に対しても、然るべき主張をするようにしましょう。
また、SNS等で言った悪口が炎上してしまうというケースもあります。「正しいことだ」「告発だ」と思っても、それによって得られることは多くありません。安易な発信は避けるようにしましょう。
まとめ
アカハラは、教員と学生という立場や年齢の違いを悪用して行われるものであり、決して許されるものではありません。しかし大学や国も、被害者が泣き寝入りすることがないよう、相談窓口など様々な救済手段を用意しています。
アカハラにあったら一人で悩まず、まずは友人や相談窓口などに相談してみることをおすすめします。